プロダクトの成長で浮き彫りになった品質保証の課題とは
toridoriは、マイクロインフルエンサーと企業のマッチングプラットフォームサービスを提供している。マイクロインフルエンサーとは、フォロワー数が数千〜数万人程度で、特定の分野やジャンルに特化したインフルエンサーのことだ。フォロワーとの距離が近く、投稿に対して「いいね」やコメントなどのリアクションを多くもらえるため、企業は自社の商材と親和性が高い層にピンポイントで効果的なアプローチをすることが可能になる。
同社の主力サービス「toridori marketing(トリドリ マーケティング)」では、企業が商品やサービスのPR案件を作成してインフルエンサーを募集し、インフルエンサー側は「toridori base(トリドリ ベース)」というアプリ上で案件を確認してエントリーする。マッチング後、インフルエンサーはSNSで商品やサービスを紹介するという構造になっている。
2025年に入り、同社はプロダクトへの投資を大幅に拡大。案件作成機能の大規模リニューアルをはじめ、さまざまな新機能開発が加速している。しかし、この成長に伴って品質保証体制の課題が浮き彫りになった。
「特にテストを専門に行う、品質保証をミッションとして持っているチームがありませんでした。開発するエンジニアがそれぞれの裁量でテストを行っていました」と語るのは、toridoriでQAチームの立ち上げを担った池田尚仁氏だ。
テストに関する課題の1つが、文書化の不備だった。インシデント発生時に必要となるテストのログやドキュメントが残っていないケースや、記録されていても統一フォーマットではなかった。そのため、リリース間での比較や分析ができない状態だった。
「品質を上げていくためのPDCAをどう回したらいいのかが分析できない状況で、品質も統一されていませんでした」と池田氏は当時の課題を振り返る。
ゼロからQAチーム立ち上げて品質保証体制の確立を目指す
この課題解消のため、QAチームの立ち上げを担当することになった池田氏。新卒から7年半を営業職として過ごし、30歳でエンジニアに転職した。toridoriではバックエンドエンジニアとして開発業務に従事していたが、2025年3月にQAチームの立ち上げを任された。現在は開発部でエンジニアリングマネージャーとして、QAチームと基盤システム開発を担う「基盤プラットフォームチーム」を統括している。
QAチーム立ち上げの背景には、単純に不具合の多さという課題もあったが、それ以上に「プロダクトカンパニーとしての品質保証体制確立」という戦略的な意図があった。
「2025年からプロダクトへの投資が大きくなり、今後プロダクトも多様なコンポーネントが増えたり、規模が大きくなってきたりします。品質を保証するための部隊や品質保証に対してPDCAが回せるような仕組みが開発の組織として必要になってきていました」と池田氏は立ち上げの経緯を説明する。
チームの目標は、短期的には外部パートナーに依存しているテスト関連業務の内製化を目指し、長期的には、不具合がないことを前提としながらUX(ユーザー体験)を高めていく提案をQAチームが行えるようになるのを理想としている。
「QAチームは社内で最もプロダクトを触る部隊の1つです。『ここをもっとこうした方がいいのではないか』『このようにしたほうが良くなるのではないか』と、改善の提案ができるようになっていきたいです」と池田氏は語る。

