絶えず変化するエンジニアキャリアのススメ──「外発的な変化に適応するため、絶えず内発的な変化を続ける」
シンプレクス・ホールディングスは、戦略コンサルティングからシステムの開発・運用保守までを担うグループ会社の経営管理を行う持株会社であり、東証プライム上場企業だ。ビジネス創出を手がけるコンサルティングファーム「Xspear Consulting(クロスピア コンサルティング)」と、システム開発を担うテックファーム「シンプレクス」の両輪によって事業を展開している。
金融業界に強みを持ち、下請けに依存せず、設計から開発、運用保守までを社内で完結させる一気通貫の体制が特色だ。また、事業部横断で専門スキルごとの横串組織(コンピテンシー)を設置し、案件ごとに最適な体制を構築できる仕組みだ。松本頌氏はそのうちの一つ、システムディベロップメントコンピテンシーで技術者組織のリードを担う人物だ。
松本氏が、新卒でシンプレクスにエンジニアとして入社してから11年、現在のロールに辿り着くまで、さまざまなキャリアの変遷を辿ってきた。同時に、その過程では技術的にもあらゆる変化が生じてきた。
「エンジニアが知るべき技術は10年単位で激変し続けています。今フルスタックエンジニアとして幅広い技術に精通していても、10年後にはまったく異なる知識が求められるかもしれません。こうした変化に、エンジニアはどうしても振り回されてしまいがちです」(松本氏)
技術的変化や社会的変化に伴って、組織も同様に変化を起こす。そして組織が変わればその中に所属するチームや自分の業務も変わらざるを得ない。こうした外発的な変化は自分ではコントロールできない。しかし、チーム内の役割分担のように自分自身で起こせる変化もある。そこで松本氏が勧めるのは「外発的な大きな変化に飲まれる前に、内発的な小さな変化で、適応力を鍛えておく」ことだ。
ここで松本氏は自身のキャリアを振り返る。文系出身でプログラミング未経験から、シンプレクスの選考過程でプログラミングの面白さを知り、2015年にシンプレクスへ新卒入社した。最初に携わったFXシステムの開発では、エンジニアとビジネスパーソンとしての基礎を築いた。続いてFXシステムの導入支援では、顧客との対話を通して、開発とは異なるビジネス価値の出し方を学んだ。暗号資産業界向けのシステム開発では初のチームリーダーを経験し、苦戦をしながらプロジェクトマネジメントを学んだ。
その後、証券会社向けのITコンサルティングを担当し、異職種への転換にもかかわらず、課題発見から原因分析、構造設計、実行、モニタリングというサイクルがエンジニアの仕事と本質的に同じだと気づき、初めてやる役割でも「何とかできる」という感覚を掴んだという。現在は技術者組織の運営を担い、経営層とのコミュニケーションやピープルマネジメントにまで活動領域を広げている。
松本氏は自身のキャリアについて、「一貫性や特定分野における深い専門性の習得と引き換えに、幅広い事業貢献の経験や変化への適応力といったメタスキルを得られた」と評する。
そして、意図せずして「計画された偶発性理論」を実践してきたのではないかとも感じているという。この理論は、「キャリアは事前に完全に計画できるものではなく、偶然の出来事が大きな役割を果たす」という考え方だ。「一貫性のあるキャリアを綿密にデザインする道だけでなく、予測困難な未来を前に、変化への適応力そのものを磨く道もあること、これが本セッションで伝えたいこと」だと、松本氏は述べる。

