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Developers Summit 2025 KANSAI セッションレポート

小さな課題意識から全社の「協創」へ──ダイキン工業はソフトウェア開発をどう変えてきたのか

【B-5】技術とともに進む、ダイキン工業のソフトウェア開発

拡大、加速

 2つのコミュニティは統合され、ダイキンのあらゆる開発者を対象とした「Daikin Developers' Lounge(D2 Lounge)」となった。D2 Loungeは参加者約400名のコミュニティとなり、週間アクティブユーザーも200名近い。AWSの協力を得て実践型ワークショップ「GameDay」も開催し、60名を超える参加者が集まった。また、D2 Loungeで特に盛り上がっているのが「AIコーディング」チャンネルだ。ランチ会も開かれており、生成AIを使った開発への関心の高さがうかがえる。

 生成AIへの対応として、まずRAGテンプレートを整備した。社内文書などを検索し、その結果を生成AIの回答に反映するRAGシステムへのニーズが、社内で急速に高まっていたためだ。前川氏らは、リファレンスアーキテクチャの延長としてテンプレートを用意し、すでに10以上の組織がPoCに活用しているという。DevOps Ready(Lint整備・CI/CD基盤込み)の構成とし、モデルや実装技術を差し替えやすいよう、RAGの基本フローをインターフェースとして定義した。

 「AIツールの爆発的な変化を鑑み、RAGの基本フローをインターフェースとして定義することで、実装技術が陳腐化しても載せ替えられるように」という設計判断によるものだ。

 組み込みシステム向けのAIコードレビューシステム「D-Arc」も試作した。

 D-Arcでは、GitLabからコード差分を取得し、構文解析ツールで差分中の変数や定義を抽出する。そのうえで、変数の意味推論や参照状況の分析を行い、ゼロ除算、オーバーフロー/アンダーフロー、変数名の妥当性といった観点からAIによるレビューにつなげる。

「D-Arc」では、コード差分や構文解析の結果をもとに、AIによるレビューを行う
「D-Arc」では、コード差分や構文解析の結果をもとに、AIによるレビューを行う

 前川氏はこの仕組みについて、生成AIに丸投げするのではなく、構文解析などの決定論的な手法と組み合わせている点を強調した。結果的に、近年注目されている「AIエージェント」的な考え方を先取りする形になったという。CLIだけでは使われにくいという現実を踏まえ、VSCode拡張機能も内作してフィードバックを得やすい環境を整えた。

 QA領域でも生成AIの活用を進めている。1つは、Spec駆動開発、つまりビヘイビア駆動開発(BDD)に近い考え方で、「どうあるべきか」を外側から押さえる取り組みだ。現在はAutify Genesis 2.0を使い、要求分析から受け入れテストまでをつなぐPoCを進めている。

 もう1つは、既存コードが「どうなっているか」を内側から押さえる取り組みである。ここでは仕様化テスト(Characterization Test)を軸に、コードメトリクス分析、Property Based Testing、Mutation Testingといったテスト技法を活用している。

技術とともに歩み続けるために

 前川氏は、これまでの活動を振り返り、「技術とともに歩む」ことを2つの観点から整理した。

 1つ目は、技術を獲得しながら、それに合わせて戦略を取っていくことだ。一足飛びに拡大するのではなく、個人とチームの成長に合わせて、AWS設計指針やアジャイルチーム支援を少しずつ広げてきた。そこに、コミュニティによる横のつながりも加わっていった。

 2つ目は、最新技術を見極めながら、適切に適用していくことだ。RAGテンプレートでは、技術の流行り廃りを見越して差し替え可能な構成にした。D-Arcでは、生成AIだけに頼らず、構文解析などの手法と組み合わせた。こうした取り組みを、前川氏は「理想と現実のギャップを埋める旅」と表現した。

 前川氏は最後に、技術とともに歩み続けるためのキーワードとして「協創」を挙げた。AIと人間については、「驚き屋さんたちの狂騒」を超え、本当の価値を手を動かして確かめる。社内では、組織間をつなげ、社内の力を最大化する。社外とは、会社間の競争だけでなく、共通の課題を持ち寄り、ともに解決していく。前川氏は、この3つの協創を示して講演を締めくくった。

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この記事の著者

鍋島 英莉(編集部)(ナベシマ エリ)

2019年に翔泳社へ中途入社し、CodeZine編集部に配属。同志社大学文学部文化史学科卒。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岩本 隆之(イワモト タカユキ)

 1986年 兵庫県神崎郡出身 2009年 関西大学卒業 学生時代より写真・映像制作を行う。 写真撮影スタジオ勤務ののち、2020年独立。 現在は大阪市在住。 広告写真を中心としながら、ジャンルを問わず活動中。 HP Instagram

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/24084 2026/04/30 09:00

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