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人間とAIが同一空間で思考を共有──オンラインホワイトボードからイノベーションスペースへ進化する「Miro」

 ビジュアルコラボレーションプラットフォームを展開するミロ・ジャパンは7月8日、自社の基幹グローバルイベントである「Canvas 26 Tokyo」の開催に先立ち、都内にて記者発表会を開催した。同発表会では、従来のオンラインホワイトボードという位置づけを超え、人間やコンテキスト、そしてAIエージェントが同一のデジタル空間に集まる、AI時代の業務・経営基盤である「イノベーションスペース」への進化が提示された。

 ミロ・ジャパンで日本法人代表執行役社長を務める向山泰貴氏は、AIの登場によって個人のアウトプット能力が10倍、100倍へと急速に拡大している一方で、組織全体の成果や意思決定のスピード、部門をまたいだ実行力は従来のままであるという現状を、経営における最大の課題として指摘した。

ミロ・ジャパン合同会社 日本法人代表執行役社長 向山泰貴氏
ミロ・ジャパン合同会社 日本法人代表執行役社長 向山泰貴氏

 向山氏は、AIチャットツールを個別に導入するだけでは人間と人間・人間とAIエージェント・AIエージェント同士それぞれの間でサイロ化し、組織内での思考の分断や方向性のズレが増幅されてしまうと言及。これらを解決するために「Miro」が果たすべき新たな役割を説明した。

人と人・人とAIエージェント・AIエージェント同士の3つの分断
人と人・人とAIエージェント・AIエージェント同士の3つの分断

 その上で向山氏は、日本市場がグローバルにおいて最高レベルの成長を続けている非常に重要な市場であることを強調し、企業が安心してコラボレーションを進められる環境づくりのため、2つの新たな施策を発表した。

 1点目は、金融機関や官公庁、エンタープライズの大企業におけるAI活用の前提条件となるセキュリティおよびガバナンスに対応するため、「日本国内でのデータレジデンシー(データの国内保管)」に対応することである。2点目は、ツールを単純に導入するだけでなく、顧客の現場に伴走してチェンジマネジメントを支援する「ソリューションパートナー制度」の国内立ち上げであり、これに伴いソリューションパートナーとしてSCSKやフォーティエンスコンサルティング、ISTソフトウェアなどとの連携が開始された。

 また現在、日本のトップSI企業の90%以上がMiroを採用しており、さらには製造業や小売、サービス、金融へと活用の裾野が広がっていることから、単純な業務効率化ツールとしてではなく、業務プロセスの再設計やビジネスモデル変革のための基盤として投資を強化していく方針が示された。

 続いて、同社 スタッフソリューションズエンジニアの髙木智範氏により、人間のアイデアや専門性を増幅し、自律的に作業をこなすための機能に関するデモンストレーションが披露された。

ミロ・ジャパン合同会社 スタッフソリューションズエンジニア 髙木智範氏
ミロ・ジャパン合同会社 スタッフソリューションズエンジニア 髙木智範氏

 実演された「ボイス機能」では、Miroのボード内に組み込まれたAIエージェントである「サイドキック」が人間の音声を直接認識し、自然な会話を通じてボード内容のサマリーを作成して日本語のメモとして配置する様子が示された。

 さらに、架空の企業におけるプロジェクトの優先度決定を模したデモでは、「Slack」内の特定のチャンネルから会話データをサイドキックが自律的に読み取る様子を再現。このプロセスにおいてAIは、必要な情報を収集するために「ワークショップの目的、参加メンバー、所要時間」などをユーザーへ追加で質問し、提示した作業プランに対して人間の承認を得てから実際のボード構築に取り掛かるという高度な自律性を示した。構築された比較分析ボードには、各プロジェクトのスコープやメリット、課題、さらにサイドキックの客観的な視点からの分析結果が並べられ、チームが投票機能やコメント機能を用いて意思決定を行った後、その合意形成の結論を再びAIが数分で集約してSlackや「Microsoft Teams」などのチャットツールへ投稿する一連の流れが実演された。

サイドキックが生成したボード
サイドキックが生成したボード

 また、プロトタイプのレビュー作業を効率化する新機能として、「Claude Code」などで作成したHTMLファイルを直接キャンバス上に取り込むだけで、動作が忠実に再現されるコードベースプロトタイプ機能が披露された。単なる画像ではなく、キャンバス上で直接マージンの調整やレイアウトの変更といった編集をチームメンバーとディスカッションしながらその場で実行できる仕組みであり、さらにサイドキックに対して「何を最適化したいか、どの要素を変化させたいか」を指定することで、異なる方向性を持つ複数パターンのバリエーションデザインを瞬時に量産できることも紹介された。

複数パターンのプロトタイプデザインを生成
複数パターンのプロトタイプデザインを生成

 発表会の後半には、Miroを活用して実際に社会課題の解決や産業構造の変革に臨んでいるユーザー企業2社が登壇し、具体的な課題解決への取り組みと成果が語られた。

 ファストドクターで代表取締役を務める水野敬志氏は、医療現場に眠っている複雑な暗黙知を可視化するための作戦室としてMiroを位置づけていると説明。往診医、コンサル医、看護師、医療相談員、ドライバー、さらには患者とその家族といった、異なる場所にいる複数の関係者が同じ医療現場の地図を共有するために、すべての業務フローやシステムの画面構成などを1枚の共通キャンバスに書き起こしていると述べた。

ファストドクター株式会社 代表取締役 水野敬志氏
ファストドクター株式会社 代表取締役 水野敬志氏

 これにより、どこにAIを導入すべきかを検証する解剖台としてボード機能が機能し、実際の診療報酬算定業務においてAIエージェント化を推進した結果、プラットフォームの利用患者数が3倍に成長する中で必要人員数を8分の1に減少させる大幅な効率化を達成した。水野氏は、医療現場の安全性を担保するためにAIを暴走させることなく、例外発生時には自律的に処理を停止させて人間が確認し、再び処理を再開させる「ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-Loop)」のワークフロー設計が重要であると言及した。

ヒューマン・イン・ザ・ループのワークフローを構築
ヒューマン・イン・ザ・ループのワークフローを構築

 さらに同社は、約7割の病院が赤字経営に苦しみ、年々複雑化する医療制度への対応に疲弊しているという外部の中規模病院に対してもこの仕組みを展開しており、各病院の個別のレセプトコンピューターや電子カルテ、業務の画面をMiro上に展開して暗黙知を読み解くことで、外来患者の会計処理のうち76.6%を自動化する日本初の病院内算定エージェントを実装したと報告した。今後は、現行の業務フローデータを書き起こすだけで、サイドキックが自動的に標準化可能領域や個別開発が必要な領域を特定して提案を行う「Miro AI Workflows」の活用により、医療機関ごとの個別性というボトルネックをさらに解消していく展望が述べられた。

 次に登壇した、NTTドコモビジネスの執行役員でソーシャルイノベーション部長を務める福田亜希子氏は、モビリティ・医療・教育という3つの領域において、単なる業務効率化ではなく産業構造そのものを変えるDXの取り組みを紹介した。

NTTドコモビジネス株式会社 執行役員 福田亜希子氏
NTTドコモビジネス株式会社 執行役員 福田亜希子氏

 2030年に必要ドライバー数の約30%が不足するとされるモビリティ領域では、ローカル5G通信網と道路インフラ、そして次世代光ネットワーク技術であるIOWN(アイオン)を掛け合わせてドライバーレスの「レベル4」自動運転バスの安全な遠隔監視実証を仙台市などで進めており、医療領域では治験データの同意取得やデータ収集をスマートフォンで完結させる創薬DX、教育領域では教員の長時間労働を削減するためのクラウド型校務支援を行っていると説明した。

 福田氏は、これらの社会実装を支える社内のデザインスタジオ「KOEL(コエル)」が、技術的実現可能性(Feasibility)・事業性(Viability)・人々の必要性(Desirability)という3つの視点を重視してビジネスプロセスを構築しており、その共通プラットフォームとしてMiroを活用していると述べた。大規模な組織においてトップファシリテーターを何人も採用・育成することは困難を極めるが、最新のMiro AI機能がある程度のレベルまでファシリテーションを担うことで、異なるコミュニケーションツールを使用する複数部門や外部のステークホルダーが参加する巨大プロジェクトにおいて、市場投入までの時間を大幅に短縮し、確信を持てる価値を迅速に創出できるようになるとその効果を語った。

技術的実現可能性・事業性・人々の必要性が重なる領域で社会変革が生まれる
技術的実現可能性・事業性・人々の必要性が重なる領域で社会変革が生まれる

 発表会の最後のあいさつに立った向山氏は、従来のホワイトボードの延長線上の使い方から大きく変わり、登壇した2社のように社会課題の解決や社内の大きな変革のためにMiroがプラットフォームとして活用され始めている現状への手応えを語った。向山氏は「昨今、さまざまなLLMの進化が続いているが、その進化とともに実際に業務のイメージへと転換していくためにはMiroのような場が必要になってくる」と強調し、日本の市場において新しい働き方を今後も開拓していくという決意を示した。

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この記事の著者

森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

CodeZine編集部所属。

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https://codezine.jp/news/detail/28898 2026/07/09 16:15

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