SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine(コードジン) ProductZine

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2026 KANSAI セッションレポート(AD)

短納期ではなく、機能量と品質保証量を高めるセゾンテクノロジー流「AI駆動開発」

【B-7】AI駆動開発の二面性を設計する — 速度と品質を、時間・コンテキスト・組織で分けてつなぐ

PRレビューに、判断できない観点まで背負わせていた

 1つ目の軸は「時間」だ。品質に限らず、さまざまなものをシフトレフトしていこうという考え方がある。高坂氏はそれ自体は正しいと認めながら、「全て何が何でも早ければ早いほどいいという話ではなくて、判断できる最も早い時点がそれぞれあります」と切り出した。

 同社では、AIエージェントが書いたコードでも人間が書いたコードでも必ずPRレビューを通すというルールで運用してきた。反省点は、そこに多くを背負わせすぎていたことだ。実装ルールへの適合や変更内容の妥当性は誰もが見るが、全体設計と合っているかという観点はレビュアー任せになっていた。そもそも、それはPR単体では判断しきれない。「一番上のチケットの時点で見ても、実は後続のチケットで全く前提が変わってしまうことも当然発生し得ます」。見たからといって必ず大丈夫とは限らないものに、多くの時間をかけていた。

 そこで同社は、ある程度の変更がたまった状態を「変更集合」と呼び、変更集合が揃わなければ見られない観点を明文化した。責務の境界が正しいか、コード的な重複ではなく意味的な重複が起きていないか。こうした観点をPRレビューから少しずつ外していった。

 外した観点の受け皿になるのが「変更静止点」だ。スプリントのサイクルとは無関係に、変更がたまったところで静止点を取り、その変更集合の構造が正しいか、美しいかをレビューする。コードからCRUD図、シーケンス図、各種カバレッジといった派生成果物を自動生成して人間が見る。加えて、意味的な重複や責務境界の破壊がないかを人間がコードで確認する。外した観点は静止点でまとめて見る。その結果、「PRレビューは少しずつ楽になりました」と振り返る。

変更集合が揃う「変更静止点」に構造レビューを置き、PRをまたぐ責務境界・意味的重複・依存を確認する
変更集合が揃う「変更静止点」に構造レビューを置き、PRをまたぐ責務境界・意味的重複・依存を確認する

品質を高めるために「コンテキストを渡さない」

 2つ目の軸は「コンテキスト」だ。盛んに議論される「コンテキストウィンドウのサイズ」に関する問題ではなく、高坂氏が踏み込んだのは「エージェントが知っていた方がいいことと知らない方がいいこと」の切り分けだった。

 わかりやすい例がテストコードだ。同じエージェントにプロダクトコードとテストコードの両方を書かせると、プロダクトコードの都合に引きずられてテストコードのほうを直してしまう。「テストコードを作るエージェントはプロダクトコードのことを知らない方がいい」。実装の誤りを、テストが追認してしまうのを防ぐためだ。

 レビューも2種類に分けた。設計に適合しているかを見るレビューは、設計意図と実際のコードを比べたほうがいい。一方、同社では「敵対的実装レビュー」も実施している。これは、通常のレビューとは逆に、コードが何かを壊していないか、非機能的に危ない実装をしていないかを確認するものだ。この際に設計に関するコンテキストを渡してしまうと、設計どおりだから正しいという方向に引っ張られ、実装への敵対性が弱まってしまう。

 試行錯誤を経て、セゾンテクノロジーが運用する実際の構成が以下だ。人間が書いたものを設計Docに落とすスキルがあり、最初に動くテストコード実装エージェントが、プロダクトコードを知らないまま設計からテストコードを起こす。次にプロダクトコード実装エージェントが実装し、設計適合レビューを自ら通す。できあがったコードは、それを知らないテストコードでオールグリーンになるかを確認される。最後に、この変更の目的を知らない敵対的レビューエージェントが、非機能や異常系の観点から最終チェックをかける。

同じ設計を起点にしながら、実装・テスト・レビューを独立した経路で動かすエージェント構成
同じ設計を起点にしながら、実装・テスト・レビューを独立した経路で動かすエージェント構成

 「プロダクトコードの実装エージェントと敵対的レビューエージェントの往復は、だいたい2回くらいすると完成度のかなり高いものができる印象」だと高坂氏は言う。「多くはテストコード側の誤りですが、たまにプロダクトコードの実装エージェントが間違えることがあり、それを防ぐことができています」。

次のページ
AIで得た実装速度を短納期ではなく、機能量と品質保証量に振り向ける

この記事は参考になりましたか?

Developers Summit 2026 KANSAI セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

DeveloperZine編集部(デベロッパージン編集部)

DeveloperZineは、株式会社翔泳社が運営する、技術と組織の意思決定を支える情報メディアです。技術選定やチームづくりに向き合い、自分の判断を確かなものとしたいエンジニアやエンジニアリングリーダーに向けて、翔泳社主催エンジニアイベント「Developers Summit」とも連動しながら実践知...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

タナカタイゾー(タナカ タイゾー)

 フリーカメラマン。日本写真映像専門学校卒業後、写真スタジオを経て独立。関西を拠点に広告、カタログ、雑誌の分野で活動。最近は子どもも成長し、休日は愛犬と一緒に1人と一匹でキャンプを楽しむ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社セゾンテクノロジー

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/29433 2026/09/18 11:00

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー