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COMPANY Forum 2016「世界で通用するエンジニアに必要な経験とは」セッションレポート(AD)

「魂の浮力」に釣り合う場所を知り、自分らしくあれ――まつもとゆきひろ氏が考えるエンジニアの幸福【COMPANY Forum 2016】

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「みんなと同じであれ」は自分らしい幸せの障壁になる

 繰り返せば成功率が上がるとはいえ、もともとの成功の確率も上げておきたいもの。そこでまつもと氏が、成功するための3つ目のポイントとして挙げるのが「ルールを理解する」ことだ。人生はゲームとして例えられることが多いが、自分らしく幸せになるためにはさまざまな障壁がある。

 その一つが「同調圧力」だ。特に学生時代において、みんなと同じであれと教えられ、テストではすべての教科で100点を取ることを求められ、結果として「苦手を克服すること」を求められる。みんなが同じゲームをプレイしている気になるのは当然だ。しかし、社会人になれば“満点がない”。さらに言えば“評価もまちまち”となれば、満点である意味がなくなる。むしろ、得意なところを伸ばして、苦手なところを誰かに任せる方が生産的といえるだろう。

 「同じチームであっても、プロダクトマネージャーとエンジニアではプレイしているゲームが違います。いや、一人ひとり全く違っています。しかし、学校と社会とのゲームのルールの違いについて教えてくれる人は誰もいません。オープンワールドのゲームであり、攻略本もなければ、そもそも全く役に立たないことが多い。それを早いうちに自覚することが大切です」とまつもと氏は強調する。

 そして、このルールの落とし穴について、かつて大学の授業「パンチカード・タワー」による演習での経験を紹介した。「パンチカードとホチキスだけで、できるだけ高い構造物を作る」という課題を与えられ、制約を課せられながら、パンチカードを筒にして、それを重ねて3mのタワーを作ったという。しかし、過去には階段に沿ってぐるぐると紙をつなぎ、15mの高さを作った人がいると聞き驚く。つまり、構造物なら丈夫に作らなければという先入観のために、「何かに寄りかからせることも可能」と気づかなかったのだ。

 「よい手があったのに、視野が狭かったがために気づかなかった。そうしたことは人生ではよくあることではないでしょうか。人生の本当のルールを誰も教えてくれない。もしかするともっといい手があるかもしれない。それは、深く考えること、自分でやってみてから初めて気づくのです」

 しかし、人は変わること、挑戦することに対して恐れをいだくものだ。いや、必要以上に失敗を恐れているともいえるだろう。みんなと同じことをすることの安心感。しかし、まつもと氏は「むしろ変化しないこと、みんなと同じことをすることのリスクの方が大きい」と解説する。

 つまり、求人数がどんなに多くても、自分ができる仕事は一つ。それなのに、みんながやっていることは求人数も多ければ、応募数も多く競争も激しくなる。さらには希少性がなくなり、価値も下がる。つまり、他の人と違うことをすることが、人生においての必殺技、裏ワザになるのではないかというわけだ。そして、それを身につけるためのモチベーションの源泉を見つける必要がある。

“意識の壁”を取り払い「自分の幸せ」の種を貪欲に追求しよう

 エンジニアが技術を持つのは当然といえば当然だが、まつもと氏は、他の職能であっても「エンジニアの補助スキル」を上手に使えば、リスクを下げて、リターンを拡大できるという。

 「例えば、アントレプレナーにとって、プログラミングができることは補助スキルになります。例えば、どんなにいいアイデアを持っている人でも、自分で作れる人は少ないもの。そこで出資者を募り、形にしていくことが求められますが、その際に作り手との齟齬が生じる可能性も少なくありません。しかし、発注側がプロトタイプを作ることができれば、その落差も小さくなるはずでしょう」

 実際、楽天の最初のコードは三木谷社長が自分でプログラムを学び、実際に作りたいサービスのイメージを形にしたことで、エンジニアの理解が進み、スピーディに事業化が可能になったという。

 さらに、まつもと氏は日本の英語環境についての特殊性を語る。オープンソース関係のイベントでマレーシアを視察した際に、すべてが英語であることに驚かされたという。英語の講演に、資料もコミュニケーションも英語。ITを職業に選んだ時点で、80〜90%を英語でやるのは必然。そういう環境は、北欧を含めた多くの国では当たり前になっている。

 「日本では、技術書でも日本語のものが多数出版され、日本語だけで仕事ができる状況です。生活に、仕事に、勉強に英語がいらない環境は、逆に『ガラパゴス化』と揶揄されることも多いです。しかし、物理的には自由に行動でき、たどたどしい英語でも十分に通じるのです。つまり、われわれを閉じ込めているのは、“意識の壁”というわけです」

 確かに壁があることで情報格差が生まれ、その格差は位置エネルギーにより発電が起きるように、新しい外から中に持ってくることで商売になる。いわば「タイムマシン経営」といわれる経営だ。しかし、IT市場は地続き。壁と思っているその先に、最低でも10倍以上のマーケットが広がると考えるべきだろう。意識の壁を取り壊さずに、10倍のマーケットを諦めてしまうのは実にもったいない。事実、海外では多くのインド人、中国人がめちゃめちゃな英語でしゃべっており、その勢いは「お前、なんでオレの英語がわからないんだ!」と言われるほどだという。

 「意識の壁も、同調圧力も、知らないルールへの挑戦も、意識改革いや意識だけの改革でも大きく変わってくると思います。その意識の壁を破るために、海外カンファレンスに行ってみて『たいしたことない』と実感するもよし、転職を含め、自分の環境改善をするなど、“自分を変える”ことが大切でしょう。『世界は変えられないが、自分は自分で変えられる』というように、人任せにせず、自分でやりとげることが大事」とまつもと氏は熱く語る。

 そして、最後にインテルの創業者の一人であるアンディ・グローブの言葉として、「パラノイアこそが生き残る」を紹介。「エンジニアは、自分が何をしたら幸せか、何をしたら生き残れるのかを考え、そこにしっかりと注力し、偏執的に努力してみることが重要。人生の課題を解決する、ハックするという、『ハッカーマインド』を携え、ぜひとも素晴らしいエンジニア人生を歩んでほしい」と語り、セッションのまとめとした。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/9731 2016/11/28 14:00

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