国立情報学研究所が実施する社会人エンジニア向け教育プログラムの「トップエスイー」は、2017年3月24日にシンポジウムを開催した。ブロックチェーンの基本から実システム展開での問題点までを網羅した講演が行われた。また、ビッグデータやモデル検査をテーマとしたコンテストの表彰式も実施された。2016年度のトップエスイーの修了式も実施され、修了制作のポスターセッションも開催された。
毎年開催されるトップエスイーシンポジウムでは先端的なソフトウェア開発技術に関する講演が行われている。本年は、株式会社NTTデータ金融事業本部の赤羽喜治氏による「ブロックチェーン技術の現状と将来 第三の革命は本当か?」と題した講演が行われた。ブロックチェーンを組み入れたシステム開発を実践する赤羽氏の講演は、ブロックチェーン技術の本質や現状の限界に迫るものだった。
講演では、ブロックチェーンを単なる仮想通貨の実装技術として捉えるべきではないことが繰り返し強調された。
同社が関わる開発においてもブロックチェーン技術が要求として挙がるようになったものの、実際導入すべきかは、ブロックチェーンの本質を正しく理解した上で冷静な議論が必要であることが指摘された。
また、ブロックチェーンを実装し運用する上で、今現在の状況で一般的な解決策がないようなことや検討が必要とされる事柄を5つの論点として紹介し、エンジニアを始めとしてシステム開発に携わる人が考慮すべき問題点を明確化した。
指摘された論点として、まず、「The DAO Attach問題」と言われる不正なデータが書き込まれた事件を例に出して、(1)不正なデータが混入してしまった場合にどのような対処をすればいいのかということが、現状での大きな問題であることが指摘された。
加えて、(2)一部のノードがダウンしてもシステムは稼働するものの信頼性を保証するには一定以上の台数が稼働する必要があること、(3)ブロックチェーンでシステム全体を作ることはできず一部のみになること、(4)多数のノードを使うからといって負荷分散されるわけでないこと、(5)ネットワーク遅延の問題といった技術的な理解の問題についても挙げられた。
ブロックチェーンの利点ばかりを議論するのではなく、上記のような論点を考慮し、最適なシステム設計をすることで、ブロックチェーンという新しい技術の導入を的確に進める必要性を訴えた。
トップエスイーシンポジウムでは他にも2017年3月に実施されたソフトウェア開発の先端的な技術を競うオンラインコンテスト「トップエスイーコンテスト」の表彰式が行われた。同コンテストは、ビッグデータの処理能力を競うコンテスト「BiPCon」と、システムの設計情報からモデル検査という手法を用いて不具合を発見するといった内容のコンテスト「MoCCon」が実施された。それぞれのコンテストについて、結果発表や応募内容の講評が行われ、入賞者に対しての授賞式も行われた。表彰式では、コンテストを後援した文部科学省の研究振興局参事官(情報担当)の榎本剛氏より、賞状と副賞のApple Watch Series 2の目録が手渡された。
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