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オープンソースだけで生きていくエンジニアが活躍する世界に――BoostIO 横溝氏ら若き創業者が語る、それぞれが目指す世界【Developers Boost】

【B-1】オープンソースとグローバルで戦うスタートアップという生き方

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2019/02/15 11:00

 2018年12月15日、翔泳社主催の若手エンジニア向けカンファレンス「Developers Boost(デブスト)~U30エンジニアの登竜門~」が開催された。登壇したのは、企業の中核を担う30歳以下(U30)の若手エンジニアだ。基調講演には、開発者向けのノートアプリ「Boostnote」やオープンソースプロジェクト向けの報奨金サービス「IssueHunt」を手掛けるBoostIO 横溝一将氏が登壇。「2019年を日本のオープンソース元年にしたい」と目標を掲げる横溝氏が、その取り組みと決意を語った。また、後半のパネルディスカッションでは、プログラミング学習サービス「Progate」を提供する加藤將倫氏、コードを書かずにWebサイトのデザイン・公開・運用まで完結できる「STUDIO」を手掛ける甲斐啓真氏と、オープンソースへの貢献が正当に評価される世界について語り合った。

目次

オープンソース活動の貢献が正当評価される世界を作る

BoostIO株式会社 代表取締役CEO 横溝一将氏
BoostIO株式会社 代表取締役CEO 横溝一将氏

 BoostIOのコーポレートミッションは「Meritocracyを社会実装する」。Meritocracyとは、実力が平等に評価される社会を意味する。BoostIOは、そのMeritocracyを社会実装し、オープンソースを基盤とした新しいワークプレイスを作ることをビジョンとして掲げている。

 横溝氏がオープンソース活動の貢献が正当評価される世界を目指すことになったのは、「Boostnote」の開発プロジェクトが頓挫し、メンバー全員が離散したことがきっかけだった。Boostnoteは100%オープンソースで提供していたが、横溝氏は当時まだオープンソースに携わった経験や英語力、プログラミングスキルもほとんどない状況だった。

 当時のBoostnoteはユーザー数600人、GitHubスター600くらいだったが、貢献してくれるユーザーもいた。横溝氏が「このサービスをどうにか良くしたいから、手伝ってくれないか」と相談したところ、世界のユーザー・コミュニティ・コントリビューターたちがBoostnoteに対して貢献してくれたのだという。

 その後、海外の有名メディアが同時にBoostnoteを取り上げたことで、さらにユーザーやGitHubスターも順調に増えた。そこで横溝氏は新たなプロダクトを作り、チームを展開したタイミングで一番貢献してくれたコントリビューターにBoostnoteのコミュニティのマネジメント権限を渡す。

 「今は完全にコミュニティがIssueも立て、バグ報告や機能リクエスト、レビュー、マージもする。コミュニティ主体で回っているということですね。すべて自立分散的に回るコミュニティを作れているのは、僕の経験としては学びが多く、良い経験になったと思っています」

 とはいえ、横溝氏の中ではくやしさのような思いもあったという。

 「全力で貢献してくれるユーザーやコントリビューターに対して何もお返しできなかったことにくやしさを感じていました。彼らのコントリビューションをブログやTwitterに書いて発信していたのですが、何かもっとお返しできないかと。

 同時にオープンソースに対して、新しい働き方のようなものを感じていました。誰かが機能リクエストしてバグ報告して、それに対して誰かが貢献をしている。そこには誰が偉い、偉くないとか政治もなく、契約もなく、義務もなく、すべてが善意で回っているこのコミュニティは、新しい働き方を作るきっかけになるんじゃないかとずっと考えていました」

 そして生まれたのが、「IssueHunt」というプロダクト。IssueHuntはGitHub上のIssueに対して、好きな額を誰でも投げ銭することができ、それが開発者、貢献者、プロダクトオーナーに分配されるサービスで、2018年の7月にリリースされた。世界の有名プロダクトがIssueHuntのビジョン・思想に共感し、参加している。1億円の投資も受け、当時抜けたメンバーも戻り、来年はオープンソースカンファレンスの開催も予定している。

 一方で、オープンソースが無料で使えることの利便性を感じつつも、オープンソースを使っているだけでいいのかという疑問も感じていた。

 「ニューヨークやサンフランシスコの開発者たちは、昼間は本業の開発をしながら、夜と週末の時間をオープンソース開発に費やしている。そこではお金は全然稼げないけど、何か世の中の役に立てればいいと考えながらやっているという話を聞きました。

 美しい世界ではあるけれど、もし彼らがオープンソースの活動だけで生活を成り立たせることができたら、もっと世界は進むんじゃないか。もしオープンソースだけで食べていける人を1万人作れたら、世界は進化するんじゃないかと考えたんです。

 今のオープンソースのエコシステムは、それほど評価されているとは言えません。世の中のために貢献している開発者のために、もっと公平で平等に評価する仕組みが整っていれば、さらにオープンソースに取り組む人が増えると思います」

 オープンソースが生まれて数十年たったが、これだけこの議論が盛り上がっているのはこれまでの歴史にはなかった。「今だからこそ業界一丸となって取り組んでいく必要がある」と、横溝氏は強く訴える。

 「まず3年で、オープンソース開発においてIssueHuntが当たり前に使われてる世界を作りたい。長いスパンではオープンソースだけで食べていける人を1万人作り出し、オープンソースを基盤とした新しいワークプレイスを作り、世界を進化させたい。僕らのコーポレートビジョンである『Meritocracyを社会実装する』、それを会社一丸・業界一丸となって、日本から世界に対して影響力を大きく持てるように、これから取り組んでいきたいと思っています」


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著者プロフィール

  • 馬場 美由紀(ババ ミユキ)

     エンジニアとテクノロジーが好きな編集・ライター。エンジニア向けキャリアサイト「Tech総研」「CodeIQ MAGAZINE」、Web技術者向けの情報メディア「HTML5 Experts.jp」などでライティング、コンテンツディレクション、イベント企画などを行う。HTML5 開発者コミュニティ「h...

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