- 講演資料:U30のための最速キャリア戦略
キャリア戦略は、働くうえでの道しるべになる
セッション序盤では、CTOの職務そのものについての解説がなされた。
CTOの業務領域は非常に幅広い。開発方針の決定や人事的な意思決定、広報活動、マーケティングサポート、経営企画、業務効率化やセキュリティ対策、マネジメント、新技術のR&Dなど多岐にわたる。職責が上がるにつれ、管轄すべき業務領域が広くなり、管理すべき人員の数も増えるためだ。
技術責任者には大きく分けて3つのロールがある。技術面に責務を持ち、技術調査や社内全体の技術構成などを担当するCTO。人的なマネジメントに責務を持ち、評価制度や採用業務などを担当するVPoE。事業数値や執行に責務を持ち、リソース割り振りや開発計画を担当するVPoPだ。特定の個人が各ロールを兼務するケースも、複数のメンバーで分担するケースもある。
「私はいまのところ、ほぼすべてのロールを自分ひとりで担っています。今後はこれらの権限を他のメンバーにも少しずつ譲渡し、各領域に強みを持つ人を増やしていきたいと考えています」
松本氏は「CTOを担ううえで意識していることが2つある」と語る。1つ目は、経営において技術面で意思決定をする人であること。企業経営を行う過程において、各事業には必ず何らかの課題が発生する。それらを技術面でサポートすることが、CTOの重要な役割だ。また、市場を大きく変えてしまうような破壊的イノベーションに備えるのも、CTOの担うべき職責である。
2つ目は、技術のケイパビリティの拡大を行うこと。技術のケイパビリティとは、自社が得意とする技術領域のことを指す。技術チームが担えるスキルの幅が広がらなければ、事業開発はなかなか加速しない。また、ケイパビリティ拡大のために採用などを通じて必要なエンジニアリソースを確保するのも、CTOの重要な役割である。
「CTOは、技術のスーパーマンがなるポジションではありません。技術的な側面から、経営上の意思決定をできる人なのです」
CTOを担ううえで大切なのは、コードを書き続けることだと松本氏は解説する。技術的な方針決定を行うには、さまざまな技術に対する深い洞察が必要だ。コードを書くことは、技術を理解するうえで一番の近道なのだという。
松本氏は次に、エンジニアのキャリア戦略について解説した。エンジニアが目指すべきキャリアの到達点はCTOだけではない。VPoEやVPoPを目指す道もあれば、フルタイムのOSSコミッターやテックリードになる道もある。
何を目指すかは人それぞれだが、キャリアを実現するには「戦略」を立てるべきだという。自分が目標とする地点を設定し、そのうえで現状を認識する必要があるのだ。なぜなら、現状と理想の間にどのような道筋があるべきかを意識しなければ、努力の方向性を誤ってしまう可能性が高いからだ。
中間地点に現実的なマイルストーンを置きながら、最終的に目指すキャリアの道筋を描くことが重要となる。
「『キャリア戦略なんて無くていい、今後どうなるかわからないから』といった声を聞くこともあるのですが、これは望ましくない状態だと私は思います。
なぜなら、生きていくなかで、数え切れないほどのイベントが自分に降りかかってくるからです。明確な目標を持っておかないと、どうでもいいことにマインドシェアを奪われてしまう可能性が高くなります。目標設定が、キャリア選択における道しるべになってくれます」