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イベントレポート

GitHub SponsorsはOSSへの新しいコントリビュートの形――GitHub Satelliteでの発表を日本向けに解説

GitHub Satellite Berlinでの発表についての記者発表会レポート

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GitHub Sponsorsは開発者コミュニティにどう影響するか? 期待と今後の改善

 発表会後、GitHub Sponsorsについてツェーゲル氏にインタビューを行った。

 ――まず、ツェーゲルさんご自身の立場について、簡単にご紹介いただけますか。

 ツェーゲル氏:前職はソフトウェアエンジニアで、オープンソースのコントリビューターをしていたこともあります。現在はプロダクトマネージャーとして、デザイナーや開発者、弁護士など、さまざまな立場の人たちをつなぐ役割をしてます。

 ――「GitHub Sponsors」のプロジェクトは、何をきっかけに、いつ頃から始まったのでしょうか。

 ツェーゲル氏:昨年、オープンソースに関する課題を調べていたところ、そのうちの1つが「資金調達」であることがわかりました。世界中のメンテナー(もちろん日本も含めて)と会話する中で、頻繁に出てきた意見としては「自分たちのソフトウェアは広く企業や学生に使われているにもかかわらず、資金面での援助がない」といったことがありました。この課題を解決するサービスを提供したいと思い、GitHubにジョインしたんです。

 さらなる調査として、GitHub上の開発者に対して「今一番の課題は何か」「GitHubにできることは何か」といった質問をしたところ、やはり資金的な課題が最も大きいことがわかり、さらにGitHubに対して何らかの対応をとってほしいといった意見もあったため、これに応える形でGitHub Sponsorsの取り組みを行う運びとなりました。

 ――Open CollectiveやTideliftといった既存の寄付の仕組みもあったと思いますが、その上でなぜGitHubは新たな仕組みを構築したのでしょう。

 ツェーゲル氏:Open Collectiveは開発者のチームを対象としているのに対し、われわれのサービスは個人の開発者を対象に支援を行う仕組みです。

 また、「FUNDING.yml」というファイルの中に、Open Collectiveも含めた資金援助のモデルがいくつか入っているので、資金援助を受ける方法は目的に合わせて柔軟に選択することができます。

 ――開発者はどうやってこれを使いこなしたらよいのでしょうか。まず、スポンサーしたい側はどのように資金援助モデルを選択すればよいですか。

 ツェーゲル氏:そもそも支援を受ける側が、「FUNDING.yml」ファイルでどのように資金援助を受けたいか設定できます。そのため、方法が1つしか設定されていない場合は必ずそれを使うことになります。

 複数用意されている場合は、先ほど触れた通り、目的によって使い分けるとよいでしょう。チームをサポートしたいのであれば、Open CollectiveやCommunity Bridgeを選択するといった形です。

 ――では、スポンサーを受ける側はどうでしょうか。ポジティブな支援ではないとわかった場合(よこしまな思惑があって金銭を渡すなど)、援助を断ることもできるのでしょうか。

 ツェーゲル氏:現状は、Twitterのように、アカウント自体をブロックする形で特定の人からの援助を受けないようにすることはできます。ブロックは解除することもでき、相手には知られません。

 ――どの開発者がどれくらい援助を受けているかは、他の開発者からも見えるのでしょうか。

 ツェーゲル氏:現時点ではスポンサーと開発者の間だけでのプライベートなやり取りになるので、支援の金額を他の人が確認することはできません。ただし、何人に支援されているのかは確認することができます。

 スポンサーになる側が、サポートする際、公開と非公開を選択できます。多くのスポンサーは公開を選択するため、開発者のページに行ってサポートしている人のリストを見れば、何人が支援しているのかわかるのです。

 ――この仕組みは、開発者コミュニティに対してどういった効果や影響を及ぼすと考えていますか?

 ツェーゲル氏:スポンサーの数が見られることによって、オープンソースへのコントリビューションが増えればと思っています。美術館へ寄付した人の名前が壁に彫られることがありますが、それと同様で、スポンサー側のモチベーションになると考えています。

 さらに、支援の仕組みは通常のオープンソースのフローに組み込まれていて、特別なアカウント設定などは必要ないので、こういったスキームができることで、スポンサーを受ける機会は増えていくと思います。

 また、開発者の方は資金提供を受けるためのアカウントの存在すら知らないことがあります。GitHub Sponsorsのリリースで、そういった人たちからも注目され、認知につながります。

 そのプロジェクトのユーザーが多ければスポンサーの数も増えると思いますし、これまで資金援助を受ける機会のなかった、個人の開発者による小規模なプロジェクトに対しても、GitHub Sponsorsなら支援の手が届くと考えています。

 ――これまで、よいフィードバックがたくさんあったと聞きました。反対に、ここを直してほしいといったフィードバックはありましたか。

 ツェーゲル氏:企業からのスポンサーシップを受けられる機能がほしいといった声が多くあります。あるオープンソースを使って大きなメリットを享受している企業があっても、その企業にスポンサーになってもらう手だてが今のところはありません。こういったことが実現できるように、現在対応をとっているところです。

 このフィードバックを得られたのは、とても心強いことです。実はこういった機能が必要なのではないかといった議論は前からあったのですが、生の声を聞けた今、優先的に対応しています。

 ――最後に、今後の取り組みについて教えてください。

 ツェーゲル氏:資金提供のサポートといってもかなり広範囲なサポートが考えられます。先ほど触れた企業からのスポンサーシップだけではなく、新たな支払い方法も追加するなど、今後もっと規模を拡大していきたいです。常にユーザーの声に耳を傾けて、ニーズをしっかり反映させていきたいと考えています。

 最低でも1日1人以上のメンテナーの方とコミュニケーションをとるようにしています。これまでも何百もの方々と直接お会いしてヒアリングしてきました。有意義なフィードバックも得られていて、例えば、実際の声を反映してGitHub Sponsorsの絵文字対応を行いました。これからもこういったコミュニケーションを続けていきます。

 ――ありがとうございました。

 

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この記事の著者

岡田 果子(編集部)(オカダ カコ)

2017年7月よりCodeZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。JavaScript勉強中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/11594 2019/07/01 11:00

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