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縦割り組織で無駄な開発工数が増えていませんか? ティール型組織の効果と課題をスリーシェイクの成功事例に学ぶ【デブサミ2019夏】

【A-6】ティール型組織でサービス立ち上げが成功した話

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2019/08/20 12:00

 2015年1月創業、今期で4期目のITベンチャー、スリーシェイク。同社ではSREに特化したコンサルティングやプラットフォーム開発支援を行うSreake事業で蓄えた技術力をベースに、「Reckoner」というフルマネージドデータ統合プラットフォームを開発している。その開発において、採用したのがティール型組織である。なぜ、ティール型組織を採用することになったのか? また、ティール型組織の採用により得られた効果や、今後の課題についてスリーシェイク 手塚卓也氏が解説した。

株式会社スリーシェイク データ分析事業部 手塚卓也氏
株式会社スリーシェイク データ分析事業部 手塚卓也氏

旧サービスを停止し、製品開発を方向転換したわけ

 スリーシェイクはDeNA出身のエンジニアである吉田拓真氏が、2015年1月に立ち上げたITベンチャーである。「今年で4期目となるが、年平均350%の成長を続けている」と手塚氏が語るように、急成長中だ。

 同社では2つの事業を展開。一つが創業以来行ってきたSreake事業で、SREに特化したコンサルティングやプラットフォーム開発支援を提供する。もう一つが、Reckoner事業で、これは今年9月にリリース予定のプロダクトである。

 Reckonerは、フルマネージドデータ総合サービスで、データサイエンティストがインフラ環境やコードを意識することなく、サイロ化されたデータを統合、ETLデータパイプラインを構築し、広告配信など外部サービスへ連携することが、グラフィカルなUIを通じてできる。

 「他社ツールとの違いは圧倒的な機能の幅広さだ」と手塚氏は力強く語る。他社ツールではデータ収集なら収集のみ、加工なら加工のみ、というようにデータフローの一部分しか実行できないものが多いが、Reckonerは収集、加工・ブレンディング、集計、可視化、外部サービス連携・データ活用までのすべてのフローを統括して実行できる。つまり「収集した多種多様なデータをReckonerに集約するだけで統一したプラットフォームで価値のあるデータが活用できる」(手塚氏)というわけだ。

 より効率的な収集や分析のために、スキーマレスのデータベースエンジンを独自に開発。「例えばAmazon Athenaであれば、事前のデータに合わせたScheme設計が必要になるが、Reckonerであれば必要ありません。データ構造も変更可能。しかもDWHに匹敵するようなパフォーマンスを実現している」と手塚氏。これを使うことで、ビジネスの戦略的な部分に注力できるようになるという。将来的にはCDP(カスタマーデータプラットフォーム)とETLを組み合わせたものを目指しており、今はその実現に向け、鋭意、開発を進めているという。

 だが、Reckonerはスムーズに開発が進んできたわけではない。「およそ3年弱かかっている」と手塚氏は振り返る。2018年4月に方向転換が確定し、旧サービスはクローズするという挫折を経験している。

 方向転換前、同社では縦割りの組織構造を採っていたという。そのため、各担当のロールは相互関係を持っていなかった。「例えば私はSREのエンジニアなのでSREしかやらないということ。フロントエンジニアならフロントしかやらないといった体制で開発が進んでいた」(手塚氏)

 そのため情報伝達が不透明となり、「ビジネスサイドが企画を決めるのだが、それがなかなか決まらないのでエンジニアが動くことができない。無駄な開発工数も増えていった」と手塚氏は明かす。

 開発工数だけではない。組織が大きくなることで、マネジメント工数が肥大化していた。しかもスタートアップである同社の場合は、エンジニアといえど開発だけにフルコミットできない。その結果、どんどん遅れていく。手塚氏は「われわれはこの時代のことを『全員ロナウド時代』と名付けた」と言う。勝つためにはメンバーがパスしたり、守備したりと、自分のロールを超えて連携して仕事をしていくことが重要にもかかわらず、メンバー全員が最前線でゴールポストに向かってボールを蹴り続けている状況だったからだ。

 整理すると、全員ロナウド時代には3つの失敗があったと手塚氏は語る。第一が企画の失敗。「明確なビジョンがないため、開発を進めてもしょぼいGoogleアナリティクスのようなものができるだけだった」と手塚氏は言い切る。これはビジネスサイドだけでの問題ではなかった。開発者側も途中でおおよそできるものが予想できたにもかかわらず、その違和感を伝達しなかった。「これは自分のタスクにしか興味を持たなかったことが原因」と手塚氏は話す。

 第二が技術の失敗である。マイクロサービスアーキテクチャーを採用していたが、メンバーがそれぞれ属人化したコードを書いていたからだ。「マイクロサービスアーキテクチャーの悪い部分が出てしまった」と手塚氏。第三が組織の失敗である。同社ではトップダウンの形式を採っていたため、マネジメントの業務が忙しい上司の、意思決定待ちが増えてしまったからだ。

ティール型組織を導入。その効果と今後の課題

 ここで方向転換を決意。全員ロナウド時代の反省を生かし、ミッションを再定義して、ティール組織を採用することにしたという。

 「振り返ると、全員ロナウド時代は、オレンジ型組織の形態を採用していた」と手塚氏は説明する。メンバーは上司から割り当てられたタスクを機械的に実行。そして各メンバーがその達成度によって評価されていたからだ。「単純なワークであればオレンジ型組織でも良いが、規模の大きな製品を開発してくのには向いていない」と考えたからだ。そこで導入したのがティール型組織である。

 ティール型組織は、各メンバーが自分たちで組織をセルフマネジメントして、自走しながらもお互いに関係性を持ちつつ進化していくというもの。

 そのため、「チーム構成も大きく変えた」と手塚氏。特定の管理者を置かないようにした。「私であればSREのタスクを効率的にこなしていくことに価値があるのではなく、Reckonerという製品をより使いやすくしたり、定義したミッション通りのものを作っていくことに価値があると意識づけるための構造にしている」(手塚氏)。

 ティール型組織を導入したことによる効果も出ているという。第一は企画自体が良くなったこと。「これまではセールスの担当者に任されていたが、チーム全体で企画を考える体制にした。つまりReckonerが製品として成功するか、失敗するかも全員が負担するようになった。チーム全体でしっかり考えるので、企画自体も良くなったと感じている」と手塚氏は満足そうに語る。

 第二に技術的にも「良くなった」と手塚氏。これまではビジネス側からその場その場で仕様変更があったという。そのためその場しのぎの開発になっていた部分もあるが、今ではそういう開発を行うことはない。「日次や週次で開催しているミーティングにはビジネスサイドのメンバーも参加し、お互いに意見を出し合うことで、将来を見据えたアーキテクト設計ができるようになってきた」と手塚氏は満足そうに語る。さらにメンバーの技術力の向上にも手応えを感じている。「例えば私はSREエンジニアだが、サーバーサイドのプログラムを書いたりすることもある。フルスタック気味な開発をしていく内に、メンバー全員の守備範囲が広がっている」(手塚氏)

 第三はチーム自体のモチベーション、雰囲気が良くなったこと。「目指すべきビジョンが見えており、自分が担当しているタスクの意味がわかるようになった。だからメンバー全員、モチベーション高く仕事に取り組めるようになっている」(手塚氏)

 また意思決定のスピードアップも図られたことも、チームに良い効果をもたらしている。「情報はすべてオープンで、無駄な会議もない。意思決定の待ちの状態もなく、自分たちで進めていくスタイルになったので、開発は非常にスムーズになった」と手塚氏は話す。

 ティール型組織を単に導入しただけではない。「工夫したことがある」と手塚氏は話す。一つはサポート制度を用意したことである。各メンバーの得意領域に対してサポーター認定をし、各分野で困ったことがあれば、サポーターに相談することができる制度だ。そのため、「さまざまなチャレンジができるようになった」と手塚氏は言う。もう一つは採用活動をチームで行うようにしたことだ。「われわれがほしい人材はわれわれが一番わかっている。負荷は増えるが、人事部などに任すことはしていない」と手塚氏は言う。より意味のある採用活動につながっているのだという。

 課題もある。ティール型組織は個人のモチベーションと性善説を前提に動いているため、がんばり過ぎる特定のメンバーにしわ寄せがいってしまうことだ。「組織運営の中でどう自分たちでコントロールできるかはこれから考えていきたい」(手塚氏)

 もう一つの問題は個人の評価について。ティール型組織は個人の収入を上げることがゴールではないため、評価が不透明になりがちである。「個人のがんばりは当然ある。それをきちんと担保できる評価制度を考えていかないといけない」(手塚氏)

 さらなる進化を目指して突き進んでいるスリーシェイク。最後に手塚氏は「積極的に採用を行っているので、興味のある人は一度オフィスに遊びに来てほしい」と呼びかけ、セッションを締めた。

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