名刺管理ツールから、ビジネスプラットフォームへ
法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」や個人向け名刺アプリ「Eight」などを提供するSansan。同社のミッションは「出会いからイノベーションを生み出す」ことである。
名刺が持っている「所属企業」「所属部署」「ポジション」などの情報を管理できれば、ある人物がどのようなキャリア変遷をたどったのかを把握できる。また、「誰が誰といつ名刺を交換したのか」という情報を管理できれば、世界中のビジネスパーソンの出会いのデータベースを構築できる。
これらのデータは極めて付加価値が高い。これまで、「ビジネスにおいて人と人がどう出会ったのか」を統合的に管理できた企業は存在しなかったためだ。だからこそ、これらのデータを活用することで、過去に実現できなかったようなイノベーションを生み出せるのだ。今後、同社は「Sansan」や「Eight」をどう進化させていくのか。その道筋を、藤倉氏は示していく。
「今後、『Sansan』はビジネスプラットフォームへと進化します。掲げているテーマは大きく3つ。1つ目は、同僚と連絡しあえるメッセージ機能やプロフィール閲覧機能などにより、部門を越えたユーザー同士のコミュニケーションを実現していきます。2つ目は、社内に散らばる多種多様な顧客データの統合・リッチ化を可能にします。3つ目は、『Sansan』をありとあらゆるビジネスツールと連携できるようにしていきます。
一方、『Eight』はビジネスネットワーキングサービスとして進化をしていきます。例えば、レコメンデーション機能の強化です。『Eight』のネットワーキングサービスを活用して、ビジネスでどのようなキーパーソンが必要になるかを予測します。
それ以外にも、『Eight』のビジネスネットワークとマッチング技術を用いた人材採用サービス『Eight Career Design』や、『Eight』の技術を活用してサービスを買いたい人と売りたい人とをつなぐオフラインビジネスイベント『Meets』など、さまざまな新機能を展開しています」(藤倉氏)
同社は現在、新規事業の開発にも取り組んでいる。そのひとつが、BtoB企業のためのブランド力調査プラットフォーム「BBES」だ。これは、「Eight」のネットワークを活用することで「特定の企業を認知している人物」を効果的にターゲティングし、ブランド力を測定可能にしてくれるプラットフォームである。これ以外にも、今後は積極的に新規事業開発に取り組んでいくという。
新規事業開発への注力は、組織体制の変化も引き起こしている。「新規事業開発を専門で担うエンジニア組織を構築しました」と宍倉氏は解説する。
「これまでは、新規事業のアイデアが社内から出てくるたびに、エンジニアをアサインしてプロダクト開発をスタートしていました。ですが、Sansanがミッション実現に向けて挑戦を続けていくためには、より新規事業開発を加速させていきたい。だからこそ、新規事業開発室をつくりました。採用も積極的に行っており、より強固な組織へと成長させたいと考えています」(宍倉氏)