Helidon MP:MicroProfile仕様を駆使して効率的に
Helidon MPはSEをベースにMicroProfile準拠であることが大きな特徴だ。Eclipse MicroProfileが最初にリリースされたころはJava EE 8を由来とした、CDI、JAX-RS、JSON-Pなどの仕様に限定されていた。しかし2019年11月にリリースされたEclipse MicroProfile 3.2では、マイクロサービス標準に準拠した仕様が増えてきている。Helidon MPではMicroProfile準拠の仕様に加え、JPA/JTAなどJava EE機能やgRPCも採り入れている。
REST APIを実装する時は、普通のJavaのクラスにアノテーションをつけてRESTサービスにできる。JSONフォーマットのデータをやりとりするには、JSON-BでJavaオブジェクトにバインディングできるのでJSONデータを直接扱う必要はない。
古手川氏は注目すべきMicroProfile仕様を3つ挙げた。サーバーが生きているか、準備OKかを答える「MicroProfile Health 2.1」、システムの健全性を測定する「MicroProfile Metrics 2.2」、分散トレーシングのためのAPIを提供する「MicroProfile OpenTracing 1.3」。古手川氏はデモとしてJaegerでサービスを呼び出すリクエストをトラッキングする様子を示した。HelidonがHTTP、セキュリティ、メソッドのレベルでトレーシング情報を自動で出しているのがポイントだ。つまりトレーシングに関してはコーディングしていない。
Helidon 拡張機能:セキュリティ、データ永続化、通信プロトコル
Helidonにはエンタープライズアプリケーション向けの拡張機能もある。例えば認証や認可に関する機能を「Security Providers」として提供している。MicroProfileでも規定されているJWTを用いた認可機能、HTTP Basic AuthenticationなどHTTP系の各種認証機能、Google Login Authentication Provider、OIDC(Open ID Connect)Authentication Provider、さらにOracle Identity Cloud ServiceのグループとRoleをマッピングする機能を提供している。
MicroProfileの仕様には含まれていないデータの永続化やキャッシュに便利な機能も備える。データベースへのデータ操作、コミットの制御、コネクションのプーリングによるパフォーマンス向上に関するものなどだ。具体的にはJavaオブジェクトをデータベースに永続化するための「JPA」、トランザクションを管理する「JTA」、コネクションプールとしてはHikariCPやOracle UCPなどが使える。
マイクロサービス間で効率的な通信を実現するためのgRPCもある。現在はまだ「Experimental」の位置づけであるものの、将来が期待される技術だ。HTTP/2をベースとしており、バイナリフレームを用いて双方向ストリーミングに対応できることと、送信データをシリアライズしてバイナリ変換するため転送データ量を削減できるのが特徴だ。
Helidon 2.0に向けて:Verrazzanoと合わせてこれからのマイクロサービス・フレームワークに
2020年2月5日、次のマイルストーンビルドHelidon 2.0.0-M1がリリースされた。Helidon 2.0ではJava 11をターゲットとしている。主要な新機能となるのがHelidon MPでもGraalVMネイティブイメージが作成可能となること、データベースアクセスのためのFlow API実装(JDBCとMongoDB)、リアクティブ処理に関するMicroProfile仕様のサポートが広がること、Kafkaコネクタの提供などが挙げられる。
さらに古手川氏は「Verrazzano」を挙げた。これはオラクルがHelidonと並行してオープンソースで進めているソリューションのプロジェクトだ。RancherによるKubernetesのマルチクラスタ管理、オンプレからマルチクラウドまで包括的なアプリケーションのライフサイクル管理などを含む。
HelidonはVerrazzanoやGraalVMなどと合わせて、オラクルが考えるクラウド・ネイティブ時代に適したマイクロサービスフレームワークとなる。古手川氏は「ぜひHelidonを試してみてください。そしておちゃかふぇ(Oracle Cloud Hangout Cafe)にも来てください」と呼びかけ、セッションを終えた。
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