プロダクト品質チャンピオン
- パターン:プロダクト品質チャンピオン(*)(原題 QA Product Champion 原著 Joseph Yoder, Rebecca Wirfs-Brock, Hironori Washizaki)[5]
「品質は決して偶然ではない。知的な努力の結果である。」――John Ruskin(評論家、美術家)

(*注釈)チャンピオン
ここでの "チャンピオン" とは、スポーツにおける優勝者といった意味ではなく、特定の人や信条を支持し推進する人を意味します。
組織がアジャイルに移行するとき、組織は開発者や他のチームメンバーがアジャイル開発プラクティスと、プロジェクトの納期のために重要な項目に優先順位を付けることに集中できるようにうまく取り組みます。ただし、機能提供に重点を置いているため、品質は脇に置かれているように見えます。実際、品質は以前よりも悪化しているように見えるかもしれません。
多くのアジャイルチームとプロダクトオーナーは、システムの重要な機能の提供に集中しています。ただし、システム開発が完成したと見なすには、機能を実装するだけでは不十分です。機能を提供することはプロジェクトの成功にとって重要ですが、システムは、重要なシステム品質特性にも対処するまで「リリース準備完了」にはなりません。
システムの機能要件が提供されたら、チームはシステム品質にも注意を払うことができるでしょうか?
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プロダクトオーナーはバックログを優先順位付けします。プロダクトオーナーはさまざまな意見やアドバイスを調整しながら、品質関連のアイテムをどのようにバックログに含め、ロードマップの一部にすることができるでしょうか?
プロダクトオーナーは、その有用性に関するフィードバックを得るために、まず優先順位の最も高い機能に重点を置きます。ただし、重要なシステム品質特性についても対処されるまでは、システムは商品化する準備ができていません。
プロダクトオーナーは、利害関係者からさまざまな影響を受けます。一部の利害関係者は、機能がどのようにして品質の影響を受けるかを理解していません。プロダクトオーナーは「自分は技術力スキルが高い」と思っているかもしれませんが、実は分かってない人もいるので、特定の品質目標を達成するために必要な努力を、必ずしも評価する訳ではありません。
プロダクトオーナーは、プロジェクトの重要な目標を見失うことを心配することがあります。特に、チームで議論になるような品質上の懸念事項が生じた場合です。プロダクトオーナーは、これらのシステム品質特性に焦点を合わせることがソリューションを過剰に設計していると考えるかもしれません。その考えは正しい場合もありますが、品質に影響を与え、対処する必要がある重要なアーキテクチャ上の懸念がある場合もあります。
多くの場合、アーキテクチャに大きな影響を与えるさまざまな品質特性の間で妥協点を見出していく必要があります。それをやるべき時に、調査もせず、優先してやらないと、手戻りや「大きな泥だんご[FY]」につながる、技術的負債を多く抱えてしまう可能性があります。
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こうした事態にならないよう、アジャイルチームの一部として、プロダクト品質のチャンピオンを含めてください。チームが重要なシステム品質特性に集中できるよう支援する人です。
つまり、システムを提供するには、システムの全体的な品質を支援する人が必要となるのです。これは、Oneチームの一部として、品質アドボケイト(品質を擁護する役割)として働くプロダクト品質チャンピオンを含めることで実現できます。この担当者は、プロジェクトの開始から顧客の要件を理解し、品質重視のチームを支援するためにずっと働き続けます。プロダクト品質チャンピオンはQAから来てもよいでしょう。ビジネスアナリスト、アーキテクト、またはプロダクトマネージャーも、プロダクト品質チャンピオンになれます。時には、製品の品質に対して興奮と熱意を示す人もいます。マネージャーまたはアジャイルコーチとして、この役割でこれらの人たちをサポートして奨励しましょう。また、意欲的なチームメンバーを見つけて、この役割を果たすまで成長できるようにする必要があるかもしれません。
品質チャンピオンまたは品質アドボケイトは、プロダクトオーナーおよび他のチームメンバーと密接に協力して、プロダクトバックログに含めることができる重要な品質特性を指摘します。また、品質ワークショップを主導して、品質ラジエーターまたは品質ダッシュボードをセットアップし、製品の品質向上に対するモチベーションを促すために、これらの品質特性をすべてのチームメンバーに可視化して共有させます。
品質チャンピオンとプロダクトオーナーが良好な協力関係を持つことは特に重要です。プロダクト品質チャンピオンが品質に関する懸念を提起した場合、プロダクトオーナーには注意を払って貰う必要があります。一方、あまりにも多くの懸念事項を提起すると、その重要性が低下する可能性があります。最終的に、プロダクトオーナーは、利害関係者およびチームからの情報とともにプロダクト品質チャンピオンによる慎重な検討に基づいて、バックログの優先順位付けに関する最終決定を行います。
通常、プロダクト品質チャンピオンに「品質チャンピオン」と言う役職が与えられる訳ではありません。品質チャンピオンは、他の仕事に加えて引き受ける、役割またはタスクのことです。品質チャンピオンの担当者はアジャイルチームの一員であるか、チーム外から来ることもあります。品質が最優先事項である場合、この役割の責任者を明確にすることが重要です。
プロダクト品質チャンピオンは、品質の問題を看過せず、システムの品質要件とその実現方法に関するコンセンサスを構築するために働きます。あるプロダクト品質チャンピオンの1人は、チームがアジャイル品質シナリオの測定可能なシステム品質特性について合意に達するようにする達人でした。別の品質チャンピオンは、パフォーマンスが低下したときはいつでも、そのニュースが歓迎されないときでも、プロダクトオーナーの注意を引くことに固執しました。プロダクト品質チャンピオンが悪いニュースの担い手に過ぎないように見えることもあるでしょう。一方で、プロダクト品質チャンピオンになった場合、システム品質を向上させるチームの成功を可視化するとともに、チームの小さな成功も可視化することも、悪いニュースを伝えるのと同様に重要なことです。
プロダクト品質チャンピオンは、すべての利害関係者との定期的なやり取りを通じて障壁の解体を行うことができます。構想中は、品質ロードマップの検討に役立ち、スプリント中は、プロダクトオーナーと協力して品質バックログ化したり、ワークショップをリードして重要な品質特性の発見をしたりすることがでます。品質チェックリストが更新されるたびに、品質に関する懸念事項を聞かれ、関与を確認するためにレトロスペクティブや計画会議で発言するかもしれません。
物事がそれほどうまくいかず、人々が品質の懸念事項に耳を傾けない場合でも、プロダクト品質チャンピオンは、苦情を申し立てる人ではなく、品質を促進する人となることが重要です。プロダクト品質チャンピオンは『Fearless Chang~アジャイルに効くアイデアを組織に広めるための48のパターン[MR]』と、その続編である『More Fearless Change [MR2015]』で示されたパターン、例えば、「ひたすら肯定すること(Accentuate the Positive)」「小さな成功(Small Successes)」「将軍の耳元でささやく(Whisper in the General’s Ear)」「達人を味方に(Guru on Your Side)」または「エレベーターピッチ(Elevator Pitch)」などを採用するなどして、重要な品質特性をチームに伝え、品質の重要性について賛同を得たり、適切に注意を払って貰えたりするようにしてください。
おわりに
本稿では、アジャイル開発において効率的かつ効果的に品質保証を進めるために有用な実証済みのパターン集QA2AQから、アジャイルプロセスにおける品質保証のあり方や役割のパターンをまとめた、分類「品質のアジャイルなあり方」から3つのパターンQAを含むOneチーム(Whole Team)、品質スプリント(Quality Focused Sprints)およびプロダクト品質チャンピオン(QA Product Champion)の和訳を提供しました。本連載の以降では引き続き、他のパターンの和訳を提供する予定です。
参考文献
- [1] Joseph Yoder, Rebecca Wirfs-Brock, Ademar Aguilar, “QA to AQ: Patterns about transitioning from Quality Assurance to Agile Quality,” 3rd Asian onference on Patterns of Programming Languages (AsianPLoP 2014), Tokyo, Japan, 2014.
- [2] Joseph W. Yoder and Rebecca Wirfs-Brock, “QA to AQ Part Two: Shifting from Quality Assurance to Agile Quality,” 21st Conference on Pattern Languages of Programs (PLoP 2014), Monticello, Illinois, USA, 2014.
- [3] Joseph W. Yoder, Rebecca Wirfs-Brock, Hironori Washizaki, “QA to AQ Part Three – Shifting from Quality Assurance to Agile Quality – Tearing Down the Walls,” 10th Latin American Conference on Pattern Languages of Programs (SugarLoafPLoP 2014), Pousada Armação dos Ventos, Brazil, 2014.
- [4] Joseph W. Yoder, Rebecca Wirfs-Brock, Hironori Washizaki, “QA to AQ Part Four - Shifting from Quality Assurance to Agile Quality - Prioritizing Qualities and Making them Visible,”22nd Conference on Pattern Languages of Programs (PLoP 2015), Pittsbirgh, USA,
- [5] Joseph W. Yoder, Rebecca Wirfs-Brock, Hironori Washizaki, “QA to AQ Part Five,” 5th Asian Conference on Pattern Languages of Programs (AsianPLoP 2016), February 24-26, 2016, Taipei, Taiwan.
- [6] Joseph W. Yoder, Rebecca WirfsBrock, Hironori Washizaki, “QA to AQ – Part Six – Being Agile at Quality,” 23rd Conference on Pattern Languages of Programs (PLoP 2016), Monticello, Illinois, USA, OCTOBER 24-26, 2016.
- [MR] Manns, Mary Lynn and Rising, Linda, Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas, Addison-Wesley, 2005.
- [MR] Manns, Mary Lynn and Rising, Linda, Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas, Addison-Wesley, 2005.(和訳:川口恭伸 監訳、木村卓央、高江洲睦、高橋一貴、中込大祐、安井力、山口鉄平、角征典 訳、『Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン』丸善出版、2014.)
- [MR2015] Manns, M. L., and Rising, L. More Fearless Change: Strategies for Making your Ideas Happen. Addison-Wesley Professional, 2015.
- [RN] Raines, Brandon and Neher, Judy, “No Way! Agility in the Federal Government”, Agile 2014 Conference, Orlando, Florida, USA.
