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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

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成長企業の事例から学ぶプロダクトマネジメント

小規模チームがプロダクトグロースさせるための施策とは? フォーム作成管理ツール「formrun」のPOに学ぶ

 プロダクトを作り提供する過程にユーザーの声は欠かせません。カスタマーサクセスチームを置き、UXの見直しや改善に注力する企業も多くなってきました。顧客管理ツール「formrun」を提供するベーシックもその一つで、ユーザーからのフィードバックを適切にプロダクト改善に役立てることで、3年間でMRR(月間経常収益)を20倍に伸ばす急成長を遂げました。しかし、その改善は一筋縄ではいかなかったようです。小規模なチームの限られたリソースのなかでユーザーの声を拾い上げ、適切に改善を繰り返していく体制は、どのように実現できたのか。実践した地道な施策のポイントを、「プロダクト面」「マーケティング面」「カスタマーサポート面」に分けて、プロダクトオーナーの甲斐氏に解説していただきました。(編集部)

はじめに

 みなさんこんにちは。株式会社ベーシックの甲斐(@Kai_MSYK)と申します。私は現在フォーム作成管理ツール「formrun」のプロダクトオーナーとして事業やプロダクトの意思決定、リソース管理をはじめとする業務に携わっています。

 「formrun」は、フォーム作成からフォームに入力された顧客情報の管理までをワンストップで利用可能なツールです。その機能は、簡単にフォーム作成できるだけにとどまらず、フォーム送信後の顧客情報管理も可能です。チーム全員で管理可能なボード画面では直感的にユーザーへの対応状況を確認することができます。複数人でのメール対応をはじめとするカスタマーサポートや資料ダウンロードフォームを通じたマーケティング活動などの幅広いシーンでご活用いただき、お客さまの業務効率向上に貢献しています。

 formrunは元々2017年に事業譲渡で譲り受けたサービスです。譲り受けた当初、事業自体の成長可能性は感じていたものの、一方で、事業を伸ばしていくためにどの機能開発・機能改善から手をつければいいかがわからないという課題がありました。しかし、そこから数々の試行錯誤を繰り返し、2020年12月現在、累計ユーザー数は8万4000となっており、それに伴いSaaS事業における重要指標であるMRR(月間経常収益)は、事業譲渡以降のこの3年間で約20倍という急成長を遂げています。

 今回は、この急成長の裏側にあるformrunの各種施策について、プロダクト面、マーケティング面、カスタマーサポート面に分けてお伝えします。私たちの経験が、プロダクトマネージャーをはじめとするプロダクトに関わるみなさまの参考になれば幸いです。

プロダクト面

ユーザーの声を適切にプロダクトに反映するための仕組み作り

 プロダクト開発において、「ユーザーの声を大事にすべき」という言葉は頻繁に耳にしますが、実際には遂行できていない企業も多いのではないかと感じています。ユーザーの声を大事にするということを心がけたとしても、リソースが限られていることから、全てに対応できるわけではなく、そのなかでどの声から対応していいのかと悩む場合も多いのではないでしょうか。

 formrunチームも、譲り受ける前はリソースが極端に少なかった(当時BizDevが私1人しかいない状態であった)ため、同様の課題を抱えていました。

 この課題に対して、まずはユーザーの声を収集し、「優先順位」をつける仕組み作りを行いました。具体的には、改善要望やご利用方法に関するお問い合わせについて、いつ、どんなお問い合わせがきたかを確認するスプレッドシートを作成し、各改善要望・質問に対して

  • 累計何回集まっているのか
  • 各月に何回集まっているのか
  • CSがどんなアプローチをしたのか

 という基準をもとにお問い合わせを定量化(スコアリング)し、点数が高いものを優先度が高いものと定義し、対応すべき改善内容を選定していきました。

★追記:ユーザーのフィードバックを優先順位づけするためのシート★
ユーザーのフィードバックを優先順位づけするためのシート

 そのうえで、チームでのすり合わせを目的として、ユーザーからの要望や問い合わせ対応を定点的にレビューする会議を設け、隔週でお問い合わせ内容を共有することで、「チーム全体でユーザーが本当に解決したい課題や問題意識のすり合わせ」を行いました。

 これによって、ユーザーの声を直接受け取る機会が少ないエンジニアに対して、ビジネスサイドから「お客さまから◯◯件の声が集まっているので、開発優先度を高めてください」というように、定量的にプロダクト改善の必要性を伝えることができるようになりました。その取り組みの結果、エンジニアは「自ら開発する機能が活用され、ユーザーの業務効率化に貢献できる」といった実感を得られ、より高いモチベーションで開発・改善に取り組んでもらえています。

社内でプロダクトを普段から活用することによる積極的な意見の収集

 先述のようにユーザーからの声を定量化して改善に活かすことに加えて、サービスの課題をより迅速に特定するために、社内の他部署で積極的にformrunを利用してもらい、社内ユーザーからもサービスに対する生の意見をもらうようにしています。

 具体的には、社内でformrunを活用してもらえる部署のアカウントを作成し、チャットツールにおいて意見をもらう形をとっています。意見の回収には専用のチャンネルを作成し、普段formrunを活用するなかで気になった点をプロダクトチームに共有してもらうことや、プロダクトチームからも機能の使用感を確かめてほしいものについて意見をもらうことを依頼しています。社内だからこそ、どのような場面でどのようなことを感じたかについて迅速にヒアリングを行うことが可能となっています。

 それにより、プロダクトにおける課題を迅速に特定できるようになり、結果としてプロダクト改善のスピードが上がったと感じています。

専用チャンネルにおけるプロダクトへのフィードバックのやりとり
専用チャンネルにおけるプロダクトへのフィードバックのやりとり

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マーケティング面

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この記事の著者

甲斐 雅之(カイ マサユキ)

 千葉県出身。内定者時インターンとしてマーケティング担当者向けのメディア「ferret」のメディア運用に携わったのち、株式会社ベーシックに新卒で入社。現在はフォーム作成管理ツール「formrun(フォームラン)」のプロダクトオーナーを務める。オウンドメディア運用やマーケティングの支援にも携わるかたわ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/143 2020/12/22 11:00

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