イーシステムテクノロジー株式会社 執行役員 CRM第三部 部長 石川 亨
現在、開発の現場でプログラミングなどに携っているエンジニアの多くは、将来はコンサルタントになるキャリアパスを描いていると思います。一口にコンサルタントといっても、販売管理、生産管理といった分野や業種を含めるとさまざまな種類があり、コンサルタントへのキャリアパスは複雑なものとなってしまうでしょう。本稿ではコンサルタントになるための、最短キャリアパスを紹介します。
イーシステムテクノロジーが提唱しているのがBI(Business Intelligence)コンサルタントです。BIとは、業務システムなどから蓄積される企業内の膨大なデータを、蓄積・分析・加工して、企業の意思決定に活用しようとする手法です。ERPパッケージやCRMソフトなどからもたらされるデータの分析を専門家に依存せず、経営者や社員が必要な情報を自在に分析し、経営計画や企業戦略などに活用することを目指しています。
このBIを導入させるためのコンサルタントは、現在、国内ではまだ少数です。しかし、BIの重要性は経営層に認知されてきており、マーケットが広がってきています。だからこそ、BIに注目し、この分野でコンサルタントを目指すというのは、先見性のあるキャリアパスだと言えるのです。開発のエンジニアから、企業の経営層からアドバイスを求められ、企業行動を決定させるようなコンサルタントになるためのキーワードは、BIにあるのです。
BIコンサルタントになるための道筋をご紹介する前に、まずはプログラム開発を行っているエンジニアが、コンサルタントになるために必要な5つの条件を紹介します。
- 幅広いIT知識、業務知識と実際の経験
- ヒアリングをして問題点を引き出したり、改善点を説得したりするための、お客様とのコミュニュケーション能力
- 導き出された答えを論理的にまとめ、発表するプレゼンテ-ション能力
- 実際の改善点をシステムで実装するための技術知識と、インプリメンテーションの能力。
- プログラミング技術、ITインフラの技術。
これらの基本要件が自分に備わっているかチェックしてください。それを踏まえて上で、BIコンサルタントを目指すために必要な知識を紹介していきます。
BIは、後ほど詳しく解説しますが、企業戦略を策定するためのツールです。ERPやCRMが企業行動の効率化を図り、コストをカットして利益率と高める役割であるのに対して、BIは、新たなビジネス、新たな利益を生み出すためのツールです。ですから、BIコンサルタントを目指すなら「企業とは何か?」を理解し、業務の流れを理解する必要があります。
企業は、「関連するすべてのステークホルダー(「お客様」「株主」「従業員」「地球環境」「地域社会」)に貢献するために、商品およびサービスを生み出し、その対価として利益を得る組織体」です。
1つの企業のなかにも社員(人事)、お金(経理)、情報を扱う部門(情報システム)、物を購入する部門(購買)、販売する部門(営業)などが存在します。
企業は、主に提供するサービス・商品によって業界・業種分けされます。 例えば、商社、流通業、製造業などが挙げられます。
クライアント(client)とは、一般的に依頼を行いサービスの提供を受ける側のことをいいます。
- ビジネス分野における顧客・得意先のこと(一般的な意味)
- コンピュータ・ネットワークのクライアント(コンピュータ用語)
基幹システムとは、企業の基幹業務(企業活動の中心となる会計、人事、給与、販売管理、生産管理などの業務)の一連の流れをサポートするコンピュータシステムのことです。
販売、購買、生産、会計、人事など、企業のあらゆる業務に対応した統合基幹業務パッケージ。企業における各業務に関して、伝票や情報の入出力を行うシステムです。主に下記のようなモジュールから構成されています。
前述のように企業というものが、何によって構成され、どのような活動をしているかを理解することがBIコンサルタントになるために非常に重要となってきます。それを踏まえた上で、コンサルタントの業務についても触れておきます。
- 始めと終わり(期間)が有る
- 割り当てられたリソース(資源)を使う
- 最終のゴール(目標)がある
- 計画的かつ組織的なアプローチをして目標を達成する
- チームで作業を行う
システムを構築する上で、大きく3つのフェーズ(工程・局面)があります。
- なぜ開発を行うかを決定するフェーズ(立案フェーズ)。
- 次に立案された計画を、システム上でどのように実装するかを決定する(設計フェーズ)。
- そして、実際にシステムを作る(開発フェーズ)。
何のために、なぜ開発を行うかを決定するために、業務でのキーパーソン(その業務を熟知し決定権を持つ人物)にヒアリングを行います。ヒアリング結果を元に、目的とゴールを設定します。
ITシステムを開発するために、机上で開発内容を定義することを「設計」と呼びます。開発内容を詳細に定義したものを「詳細設計」、大まかに定義したものを「概要設計書」と呼びます。また、開発を行う前に、ITシステムを利用する業務範囲を定義することを「要件定義」と呼びます。
要件定義、概要、詳細設計に基づき、実際のシステム実装と開発を行うフェーズです。開発されたシステム・プログラムは単体テスト・統合テストを経て本番稼動(Go Live)となります。
PMBOK(ピンボック;Project Management Body of Knowledge)とは、アメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute)が策定した、モダンプロジェクトマネジメントの知識体系です。
- 立ち上げ作業を行う。
- プロジェクトマネージャーがきまって、プロジェクトの条件などがきまる。
- プロジェクトの根拠となるもの(契約書など。プロジェクト憲章)ができる。
- プロジェクト目的と、成果物がきまり、スコープを構成要素にまとめる。
- アクティビティの順番と所要時間見積り、スケジュールを作成する。
- 人、モノについての資源を決定し、コストの見積と予算化をする。
- リスクを識別し、分析する。
- プロジェクト計画の策定。
プロジェクト計画書(アクティビティ)を実行する。
- 進捗報告。
- 変更すべきところがあれば、変更する。
- 契約完了の手続きをする。
- プロジェクトの結果の文書化。
コンサルタントという仕事はこのような流れになります。さて、次回はBI(Business Intelligence)そのものの解説をします。
会社説明、現場環境の説明を中心に、キャリア分析ができるような面談を進めております。
注:本連載「匠のキャリアへ」記事に関しましては、IT業界に特化したキャリア紹介業務を行う、テクノブレーン(株)のキャリアコンサルタントにより、業界の現場をリードする方々のキャリア・ノウハウを匠と称して記事紹介させて頂いております。読者の方々へエンジニア・アーキテクトとしてのキャリアビジョンを築くご参考になる記事として、ご愛顧頂けましたら幸いです。