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SaaSをリリースするまでの4つのフェーズと組織体制を解説──宮田善孝著『ALL for SaaS』

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 国内でSaaS市場が盛り上がる一方で、SaaSの企画からリリースまでを網羅して体系的に説明した資料がない。そう語るのが、戦略コンサルティングファームとスタートアップでSaaSに携わってきた宮田善孝さん。現在はfreeeでプロダクトマネジメントを統括する宮田さんがSaaSの立ち上げを徹底解説した書籍『ALL for SaaS』から、SaaSをリリースするまでの4つのフェーズと組織体制について説明されたパートを紹介します。

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本記事は『ALL for SaaS SaaS立ち上げのすべて』の「Part 2|SaaS構築の全体像」から「Chapter 1|SaaSを立ち上げるためのフェーズと体制」の一部を抜粋したものです。掲載にあたり編集しています。

4つのフェーズ

 SaaSをリリースするまでに、どのようなフェーズがあるのかについて具体的に見ていきたい。一般的にプロダクトを立ち上げる時と変わらず、以下4つのフェーズに分解できる。

  1. 事前/深掘り調査とプロトタイプ
  2. 開発
  3. ゴー・トゥ・マーケット戦略
  4. リリース

 上記の通り、各種調査を経てプロトタイプを作るところから始まる。そして、要件に沿って、開発を進めていくことになるだろう。ある程度プロダクトが形になってくると、どのように展開していくのか、主にビジネス面の計画を策定する。最後のリリースはこれまでの集大成になる。ここでは、各フェーズについて概要を確認しておく。

1. 事前/深掘り調査とプロトタイプ

 各種調査を通して対象とする業務を把握した上で、現状における課題を洗い出し、ソリューションの方向性を策定し、プロトタイピングを行う。そして、調査結果やプロトタイプへのユーザフィードバックなどを総ざらいし、開発に進むべきか否かの意思決定を行うことになる。

2. 開発

 プロトタイプを通して受けたユーザフィードバックを元に、ユーザストーリーの精緻化を行い、開発に着手できるように具体的な要件を固めていく。また実際に開発を進める上で必要なインフラの構築や、スクラム、品質保証(Quality Assurance、以下QAと表記する)などの運用を確立していくことになる。これら開発に関する前提に則って、リリースに向け実装を進めていく。

3. ゴー・トゥ・マーケット戦略

 具体的な開発要件が決まったら、いくらで売るべきか、どの程度売れそうか、さらにどのように売っていくのかを議論し、決めていく必要がある。これらは、プライシング、事業計画、販売戦略を指し、ビジネスサイドと協働し、進めていくことになる。

4. リリース

 最終的にプロダクトをリリースしていく上で、リリース判定基準やベータ版の種類と目的の整理など、まだ検討項目は残っており、対応を進めることになる。事前/深掘り調査から進めてきたことが無に帰さないためにも、盤石な状態でリリースを迎えたい。

図2.1.1:SaaS構築における各フェーズの概要
図2.1.1:SaaS構築における各フェーズの概要

 図2.1.1では、SaaSを立ち上げるに当たり、4つの大きなフェーズを定義し、それに伴う概要は一部デフォルメして、わかりやすさを重視し記載している。またフェーズ2の開発とフェーズ3のゴー・トゥ・マーケット戦略は直列ではなく並列で議論され進められることも多い。フェーズ1のプロトタイプを進める上で開発で精査されるユーザストーリーマッピングを前倒しし、ドラフト版として実施することもある。このようにフェーズごとに完全に固定化されたタスクをこなしていくのではなく、フェーズを跨いでタスクに取り組んだり、場合によってフェーズを並列させるなどの工夫を行い、柔軟に進めることが求められる。

 また、フェーズごとの期間は対象となるタスク、プロダクトの要件、開発の難易度、SaaSの立ち上げに投下するリソースなどによって大きく変わる。どれだけ事前/深掘り調査やプロトタイプの期間を取るのか、要件をどこまで切り詰め、開発期間をどの程度とるのか、リリース初期からプロダクトとしてどこまで完璧な状態で迎えるのかといった論点によっても、リードタイムは大きく変わる。図2.1.1には、freeeプロジェクト管理の企画検討からリリースに至るまでのスケジュール感を基準に少し幅を持たせて、目安として期間を記載している。

 上述の通り、4つのフェーズに分け、個々のリードタイムを意識して、全体設計を行い、それぞれ進めていくことになる。ただし、このフェーズの整理はあくまでリリースを迎えた後で、結果的にスケジュールを振り返り、フェーズごとに費やした時間を把握したものである。実際進めていく上では事前/深掘り調査とプロトタイプを経て、開発を行うかどうかの意思決定が大きな関門となり、それをくぐり抜けた後に、その後のスケジューリングすることもある。また、要件次第で開発期間は大きく前後するので注意が必要である。

 少しまとめると、SaaSを立ち上げるに当たって、全体像を俯瞰し、4つのフェーズを意識して進めていくことが非常に重要である。そして、これらのフェーズを経て、リリースを手繰り寄せるには、多岐に亘るタスクを丁寧に、そして臨機応変に進めていかなければならないのである。

組織体制

 SaaSの企画検討を進めるに当たって、2つの組織設計の考え方がある。それは事業型とファンクション型である。前者の事業型は各事業に必要なファンクションを備える体制を指す。この場合、事業責任者がSaaSの企画検討に対して責任を負い、異なるファンクションのメンバーを巻き込むだけでなく、ピープルマネジメントもその職務として担うことが多い。

 後者のファンクション型はプロダクトマネジメントや開発など、ファンクションごとの組織を組むが、ファンクション横断のバーチャルチームを組成し、プロダクトや事業を運営するスタイルを指す。各ファンクションが結果責任を負い、CEOを中心とした企業の中枢にレポーティングを行うことになる。具体的には、プロダクトの責任者としてCPO(Chief Product Officerの略)やVPoP(Vice President of Productの略)を置くように、各ファンクションの責任者に据えて、その配下に組織が組まれることが多い。

 昨今のスタートアップの多くがファンクション型の組織を採用しており、SaaSを運営しているスタートアップでも同様の傾向が見られる。これは、SaaSの立ち上げに高い専門性を持った様々なファンクションの人が協働し、推進していく必要があるからである。逆に、事業型があまり採用されない理由は、事業責任者が事業の運営に必要なファンクションに関する知見を併せ持つ必要が出てくるが、SaaSの立ち上げに必要な知見が多様すぎて、適切な事業責任者を擁立しづらいからである。

 本書の目的はSaaSを立ち上げていく上での方法論を確立させることにあるため、多様でかつ専門性の高いファンクションの協働が可能なファンクション型の組織体制を前提に議論を進めていくことにする。

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SaaS立ち上げのすべて

著者:宮田善孝
発売日:2021年8月6日(金)
定価:3,080円(本体2,800円+税10%)

プロダクトマネージャとしてfreeeで新規SaaSを立ち上げた著者が戦略コンサルティングファーム2社で培った経営戦略の視点や、スタートアップ/ベンチャー3社でのプロダクトマネージャとしての経験を元に企画検討から最終的にプロダクトとしてリリースするまでを網羅的に解説。

 

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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