SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2022 レポート(PR)

CTOが語る、エンジニア組織とキャリアのこれまでの10年・これからの10年【デブサミ2022】

【18-B-8】エンジニアキャリアと組織のつくり方、これまでの10年と今後の10年

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 エンジニアのキャリアに関する考え方や、プロダクト開発のチーム体制、エンジニア組織マネジメントのセオリーや事例などは、これまでブログやメディア、イベント、コミュニティなどで共有されてきた。しかし、変化の激しい時代において、今までの10年のやり方が次の10年に当てはまるかといえば、疑問が残る。そこで、本セッションでは黎明期から成長期、数千人規模の大組織になるまで、さまざまなフェーズにおいてエンジニア組織でマネジメントを経験してきたCTO経験者が、「これまでの10年」について振り返り、「今後の10年」を予測した。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
左から、株式会社BuySell Technologies 取締役 CTO 今村雅幸氏、グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高技術責任者 藤本真樹氏、株式会社GENDA CTO 梶原大輔氏
左から、株式会社BuySell Technologies 取締役 CTO 今村雅幸氏、グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高技術責任者 藤本真樹氏、株式会社GENDA CTO 梶原大輔氏

CTOから見た、エンジニアを取り巻くこれまでの10年

 CTOを経験した旧知の3人が登壇し、セッションは和やかな雰囲気で始まった。さて10年前といえば、藤本氏は現在と同じくグリーでCTOを務め、今村氏は2009年創業のVASILYにCTOとして参画し資金調達に成功、梶原氏は藤本氏のもとグリーで活躍していた頃だ。そこからCTOとしてエンジニア組織を束ねる役割を担い、順調にキャリアを築いてきた3人だが、当時から10年の間に起きた進化や事象をどのように捉えているのか。

 前半は、「これまでの10年を振り返って」をテーマに、「エンジニアのキャリアや組織についてどんな進化があったか」「10年間で一番進化を感じるものは?」といった切り口で変化について語った。

エンジニア組織における役割の明確化・細分化

 口火を切ったのは藤本氏だ。「当時は今より未熟で、世の中も変化しているので語るのは難しい」と前置きしながら、10年前は「エンジニアリングマネージャーという役割が言葉としても可視化されていなかったように思う。日本にはまだVPoEという概念も入っておらず、エンジニア組織づくりの準備段階だった」と語った。「確かにプロダクトマネージャーという肩書も一般的ではなかった」と今村氏も応じた。この10年間でエンジニア組織における役割の明確化・細分化が進み、組織づくりの成熟度も進んできていると思われる。

スマートフォンの普及とアプリエンジニアの登場

 「10年間の変化としては、スマートフォンの普及がしたことが一番大きいのでは」と語るのは、今村氏。iPhoneの登場は2007年だが、2010年前後で広く普及した。エンジニアの中でも「アプリエンジニア」という職種が認識されるようになった。

ソフトウェアエンジニアの社会的評価・給与相場が上がった

 「給与相場が上がった」というのは藤本氏。プログラミング教育の必修化などにも象徴されるように、社会全体でITの重要性が認知され、連動してITに関わる仕事の社会的評価や給与相場、待遇などが向上した。当然ながら、社会のデジタルファースト化が進み、ソフトウェアエンジニアのニーズが高まっていることも大きいと考えられる。「小学生がなりたい職業ランキング」にもプログラマーなどの職種が入るようになってきており、今村氏は「今以上に、子どもに憧れられる職業にしたい」と語った。

ノウハウが積み上がり、キャリアスタートがしやすくなった

 梶原氏は、「組織論、キャリア論などの知見が蓄積され、体系化されてきたことによって、それらが個人に還元されるようになってきた」と、組織づくりの成熟度が増し、それによって技術的な連携も取りやすくなったことを指摘した。今村氏も「手探り状態だった10年前よりも、聞ける人が増えてきた」と語った。

リモート化や副業などが一般化し、働きやすくなった

 10年というより、ここ数年の変化であるが、リモートワークが進み、いつでもどこでも仕事ができるようになり、働きやすくなったことは「嬉しい変化」(藤本氏)だろう。副業を認める企業も増え、キャリアの可能性が広がった。「以前は、副業NGというところが多かったが、むしろ副業をすることが推奨されるようになり、副業先で新しい技術を見につけるという発想が生まれてきた」(今村氏)

DXによってIT企業だけでなく一般企業にも働く場が増えた

 10年前の就職口は、ソフトウェア企業などIT企業がほとんどだった。しかし、DX推進の波が社会全体に押し寄せる中で、ソフトウェアがメインではない企業内でもソフトウェアエンジニアが活躍できる場が増えている。「内製エンジニア組織を作って推進していこうという変化」が端的に表れているといえるだろう。梶原氏と今村氏も、現在はエンターテイメント事業、リユース事業にそれぞれ身を置いている。その動機について梶原氏は、「外側からではなく、内側からDXを推進し、技術によってグロースさせられるのではないかと感じた」と述べた。

これからの10年、エンジニアのキャリアの指向はどうなるか

 この10年間で、組織づくりが成熟し、IT企業以外にも活躍の場が広がり、キャリアについてもさまざまな可能性が広がる中で、次の10年にはどのようなことが起きるのか。「エンジニアのキャリアや組織について、これから10年でさらに進化していくとしたらどういう形なのか?」「直近の取り組みの中で未来を予測するヒントは?」といった切り口で、それぞれが想像、または期待することについて話された。

 梶原氏は「キャリアについては、エンジニア組織やその中での個々の役割が成熟するにつれて分業化が進み、アプリエンジニアというそこに特化したキャリアの作り方もうまれている。自分たちはフロント&バックエンドもやりながらアプリ制作も行うというスタイルだったが、今後は『はじめからアプリだけ』というエンジニアも増えて来るのではないか」と語った。

 そうした分業化に対して、今村氏は「最近の組織ではチームが細かく分かれていることが多い。そこに新人が配属されると業務内容が限定され、スキルも狭い範囲に留まってしまうのではないか」と懸念を示し、「若手の多くが『ゆくゆくはフルスタックエンジニア』になりたいと志向している。ある程度フロントもサーバーサイドも全方向で触れられるチームづくりやフォーメーションにしたほうが、能力にキャップを設けずに幅広いスキルを身につけられるのではないか」と語った。

 今村氏の前職では300~400人もの大組織だったため、職種/業務によって細分化されていた。しかし、サービスの規模感によっては細分化するほどスピード感がなくなり、人材の流動性が高まると途端にマネジメントが難しくなる。そうした経験・考えのもと、また「フルスタックエンジニア」を希望する若手の意見もあり、現在の組織は職種で分けず、50人が関わるプロダクトのサブチームごと6人のチーム編成としている。デザインやインフラなど統一が必要な部分に関しては、別組織としてプラットフォーム的に関わるという。

 一方、藤本氏は「そうしたことが実現できれば望ましい」と評し、ただし「1つの領域でも一生かかるほど深さもあり、変化も早い。あれもこれもとなると、知識が広くても浅くなる恐れもある」として、バランスを取ることの重要性を語り、「その上で一領域について極めつつ、関係する部分も学ぶという考え方ならば、チームで仕事をする上での強みになる」と語った。

今後、エンジニアに求められる能力とは

 これからの10年といえば、まだしばらくは日本企業のDXが続くと思われる。その中で、エンジニアに求められる能力として、3人が強く同意するのが「課題を課題と認識する力」だ。

 「DXを推進しようという組織では、コミュニケーションを通じて既存のオペレーションを把握し、課題を解決することがエンジニアの仕事になる。特にIT企業から転職してその重要性を実感した」と今村氏は語る。

 藤本氏も「確かにITエンジニアは、ドメインはソフトウェアながら、アウトプットとしては『問題解決』が役割。それは変わることはない」と同意した。そして、「10年間でどう変わるかと言えば、ソフトウェアのプロダクトでは破壊的な変化はあっても、キャリアや組織については非線形な変化はない。むしろ慣性で大きく変わらず、むしろこれまでの10年の傾向から十分予測できるはず」と語った。

 そして、前述したこれまでの10年における変化の延長線上にあるものとして、次のような変化予測を行った。

人材の流動化とフラットな組織がさらに進む

 「働き方の多様化が進み、副業も普通になる中で、経営者とエンジニアの関係性はさらにフラットになる。特にエンジニアの人材不足もあって流動化が進み、自由な働き方を求める人が増える。そのためにも法制度やガバナンス、コンプライアンスは前提になる」(藤本氏)

SDGsなどエンジニアを事業に惹き付ける工夫

 「フラットな組織で人材の流動性が高まるとなれば、組織や事業にエンジニアをアトラクトする(惹き付ける)方法はもっと工夫が必要になると思われる。給与や待遇以上に、特に近年吸引力を持つのがSDGsとの関係性。新卒者の9割が関心を持っていると思われ、エンジニアに成ることがゴールというより、『何を作るか』『社会貢献にどう繋がるか』を大事にしている」(今村氏)

エンジニア組織と事業組織の連携・協業

 「エンジニア組織では、さらに分業が進み、意思決定の仕組みや役割も明確化すると思われる。その一方で、エンジニア側とそれ以外の人たちとのギャップが明らかになり、それが課題解決の端緒となっていくのではないか。そのためにはエンジニアと事業側との連携や組織の融合が重要になる」(梶原氏)それを受けて、藤本氏も「エンジニアもまた事業側の物語や常識を理解しようという姿勢が大切になっていくはず」と応じた。

 これまでの10年、そして今後の10年について語り終え、今村氏は、「エンジニアという職業の複雑性や難しさがあり、この10年で様々なノウハウが共有され洗練されてきた。しかし、今後10年もまた難しいことが続いていくことは明らか」と語り、「キャリアについても正解があるわけではなく、逆にどの道を選んでも正解だといえる。私も自分の選んだ10年を楽しみながら過ごしていきたい」と語った。

 藤本氏は「プロフェッショナルとしてプライドを持って働き、それが認められて対価を得られるなら、キャリアとしては続いていく。それが今の場で認められないというなら、売り手市場においては、認めてもらえる場を探すことも重要。一人ひとりの成長が業界の成長となって、再び10年で進化したと感じられるようにしていこう」と語り、結びの言葉とした。

 なお本セッションは、今村氏が現在所属するBuySell Technologies、梶原氏が所属するGENDAにも投資している、ミダスキャピタルの協賛により実施された。ミダスキャピタルでは、テクノロジー人材と、テクノロジーによって成長ポテンシャルの高い投資先企業とのマッチングを行っているので、「興味があればぜひコンタクトしてほしい」(梶原氏)と呼びかけた。

この記事は参考になりましたか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/15717 2022/03/30 12:00

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング