SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2022 レポート(AD)

ソリューションサービス事業へ大きく舵を切る老舗メーカー、パイオニアが取り組む開発組織の大変革【デブサミ2022】

【18-E-8】老舗エンタープライズ企業におけるSaaSエンジニア組織戦略(文化、技術、DevOps)と変革に求められるエンジニアのスキル・マインドとは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 1938年創業の老舗エンタープライズ企業、パイオニアは現在、ハードウェア売り切り型の事業モデルからSaaSサービスを軸としたソリューションサービス事業への転換を目指して、大改革の真っ只中。その旗振り役として設立されたSaaS Technology Center(以下、STC)では、モノ作り型のハードウェア開発体制からDevOpsのソフトウェア開発体制へと変革すべく、文化と技術の両側面から組織の刷新に取り組んでいる。抜本的な改革はどのように進められているのか。Developers Summit 2022の講演に登壇したパイオニアの執行役員でCTOの岩田和宏氏が紹介する。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

パイオニア株式会社 執行役員 CTO 岩田和宏氏
パイオニア株式会社 執行役員 CTO 岩田和宏氏

開発組織を変革するための3つのステップ

 国産初のダイナミックスピーカーから始まり、GPS搭載カーナビやカーCDプレーヤーなど数々の「世界初」を送り出してきた老舗メーカーのパイオニア。技術開発力で高い評価を得ていた同社だが、時代の変化に取り残され、2000年代に入ってからは経営が悪化。2019年には東京証券取引所第1部にて上場廃止が決定するという憂き目を見た。

 そんな苦境を跳ね返すべく、同社はすぐさま構造改革に着手。2025年に向けた新企業ビジョン「未来の移動体験を創ります」の下、モビリティデータを活用したソリューションサービスの提供など、ソリューションビジネスへと大きく舵を切る決断をした。

 同社の挑戦を裏で支えるのが、2021年8月に設立したSTCだ。DevOpsによる開発および運用の効率化、サービス開発および運用の内製化、データ活用の強化などを目標に、人・組織・プロセスを強化して底上げしながら、DevOpsでテクノロジーと品質保証、事業の密な融合を図り、プロダクトの成長を加速させるというミッションを掲げ、開発組織の大改革を推進している。

 STCのセンター長を務めるのは、パイオニアの執行役員でCTOの岩田和宏氏だ。同氏は、抜本的な組織改革に即効性のある解決策など存在しないとして、まずは200名近くの社内エンジニアと1on1を実施。新体制へ移行するために乗り越えるべき課題を、文化と技術の2つの切り口から整理した。

 結果、浮き彫りになったのは、モノ作り型の開発思考や制度、文化が深く根付いていること。例えば、縦割り組織で社内受発注のようなプロセスが動いており、開発もウォーターフォール型。外部ベンダーへの依存度も高く、インフラを含む開発技術標準がなく、クラウドやWebなどIT技術周りのスペシャリストが圧倒的に不足しているなどの課題もあった。

 このモノ作り文化・制度をどのようにしてサービスやソリューション開発の文化・制度へと移行させるのか。「その解答は、逆コンウェイの法則にある」と岩田氏は言う。逆コンウェイの法則では「自分たちの望ましいアーキテクチャ設計を促進するように、チームと組織側を機動的に進化させることを推奨する。理想的には“技術的アーキテクチャ”が“ビジネスアーキテクチャ”の同形写像になるように」という文言がある。これを岩田氏は「組織の構造やチーム間のコミュニケーションパスは、結果的にシステムのアーキテクチャに反映される。そのため、望ましいアーキテクチャと一致するように、またアジャイルなフローを実現するように、組織・チームを逆算して設計することだ」と解釈した。

 新たな文化や思想を醸成させるには、まずはソリューションサービスカンパニーへの変革を成功させるためのミッションやビジョンを作り、戦略や全体構成、ロードマップを具体化した上で、その実行部隊となる組織および開発体制を準備する。その組織には、SaaS開発に関わる技術の標準化や設計などを経験したことのある、アジャイルな開発やマインドを持った人材を投入。さらに、モノ作りのスペシャリストであるパイオニア社員を加えて、スキルシフトを図りながらDevOpsの開発思考を身につけてもらう。そして、その融合が進んだ先に新しい文化が醸成される。岩田氏は、この「組織・開発体制の構築」「人材の確保」「文化の醸成」の3つのステップで変革を進める戦略を立てた。

開発組織を変革するための3つのステップ
開発組織を変革するための3つのステップ

 現在は、iOSおよびAndroidエンジニア、Webアプリエンジニア、インフラエンジニア、データサイエンティストなどのスキルセットを持つ人材を、採用チームと連携しながら外部から積極採用中。「社内人材との融合が始まり、良いシナジーが生まれている」と岩田氏は明かす。また、開発についても内製化やSaaS開発に関わる技術の標準化、自動テストやUI/UX系デザイン体制の構築や評価などが進んでいるという。

次のページ
開発体制の整備とエンジニアに求めるスキルセット

この記事は参考になりましたか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Developers Summit 2022 レポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

谷崎 朋子(タニザキ トモコ)

 エンタープライズIT向け雑誌の編集を経てフリーランスに。IT系ニュースサイトを中心に記事を執筆。セキュリティ、DevOpsあたりが最近は多めですが、基本は雑食。テクノロジーを楽しいエクスペリエンスに変えるような話が好きです。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/15772 2022/04/21 12:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング