SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

一歩進んだAndroidアプリ開発ができる「Android Jetpack」入門

画面へのデータ反映処理を自動化できるデータバインディング! 監視オブジェクトやLiveDataの利用方法を紹介

一歩進んだAndroidアプリ開発ができる「Android Jetpack」入門 第8回

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

監視オブジェクトの利用

 ここから、このgenerateNewHeight()、および、generateNewWidth()の処理コードに話を移していきます。

個別データの変更を監視するオブジェクト

 その際、問題となるのが、再表示です。例えば、縦の長さが再生成された場合、当然ですが、縦の長さの表示欄と面積の表示欄の値を新しい値に変更する必要があります。一方で、横の長さの表示はそのままでも問題ありません。

 確かに、前回導入したイミュータブルなエンティティを新たに生成し、再生成された値もあらかじめ存在する値も、すべての値を設定したものをバインドし直せば、表示も変更されます。

 一方で、今回のサンプルのように、個別の値の変更に合わせて適切に表示を変える場合、無駄な処理が増え、使いづらいものとなります。可能ならば、エンティティ内の縦の長さを変更するだけで、面積表示も自動で変更できるのが望ましいでしょう。このように、個別のデータの変更を監視できるようにしたもの、つまり、監視オブジェクトを、エンティティとして利用することもできます。

 前回のリスト2で作成したRectangleエンティティを、監視オブジェクトとする場合、リスト2のようになります。

リスト2:監視オブジェクト版Rectangleクラス(Java版)
public class Rectangle extends BaseObservable {  // (1)
  private int _height = 0;  // (2)
  private int _width = 0;  // (3)
  public int getArea() {
    return _height * _width;
  }
  @Bindable // (4)
  public String getAreaStr() {
    return String.valueOf(getArea());
  }
  @Bindable  // (5)
  public String getHeightStr() {
    return String.valueOf(_height);
  }
  @Bindable  // (6)
  public String getWidthStr() {
    return String.valueOf(_width);
  }
  public void setHeight(int height) {
    _height = height;
    notifyPropertyChanged(BR.heightStr);  // (7)
    notifyPropertyChanged(BR.areaStr);  // (8)
  }
  public void setWidth(int width) {
    _width = width;
    notifyPropertyChanged(BR.widthStr);  // (9)
    notifyPropertyChanged(BR.areaStr);  // (10)
  }
}

 監視オブジェクトを作成する場合のポイントは、リスト2の(1)のように、BaseObservableクラスを継承する点です。そして、データを表すフィールドの値を個別に変更できるように、(2)と(3)のようにfinalキーワードをつけず、ミュータブルなオブジェクトとします。

 さらに、画面にバインドする値のゲッタに、@Bindableアノテーションを記述します。リスト2では、areaStrプロパティに該当する(4)のgetAreaStr()メソッド、heightStrに該当する(5)のgetHeightStr()メソッド、widthStrに該当する(6)のgetWidthStr()メソッドに@Bindableアノテーションが記述されています。そして、監視オブジェクトの監視を実現するコードが(7)と(8)、および、(9)と(10)です。

 例えば、縦の長さの新しい値をRectangleに格納するには、heightのセッタであるsetHeight()を利用します。そのタイミングで、画面表示に利用されるheightStrプロパティ、および、areaStrプロパティの値を更新する必要があります。その更新処理を行うメソッドが、notifyPropertyChanged()であり、その引数に更新対象プロパティをBRクラスの定数として指定します。

 このBRクラスは、データバインディングライブラリによって自動生成されたクラスであり、バインディング対象のプロパティを定数として保持しています。リスト2の(7)ではheightStrプロパティが、(8)ではareaStrプロパティが定数として指定されており、結果的にこの値がバインドされた画面表示が更新されます。

 (9)と(10)も同様で、横の長さのセッタであるsetWidth()が呼び出されたタイミングで、widthStrとareaStrが更新されるようにしています。

Kotlin版監視オブジェクトの作り方

 監視オブジェクトをKotlinで作成する場合も、リスト2をKotlinコードに置き換えたようなリスト3のコードとなります。ただし、Javaでは手動で定義したセッタとゲッタが、dataクラスを利用する場合は自動生成となっています。そのため、(1)や(4)のように、自動生成されたセッタをカスタマイズします。その中で、(2)や(3)、および、(5)や(6)のように、notifyPropertyChanged()を実行します。

リスト3:監視オブジェクト版Rectangleクラス(Kotlin版)
class Rectangle: BaseObservable() {
  var height: Int = 0
    set(value) {  // (1)
      field = value
      notifyPropertyChanged(BR.heightStr)  // (2)
      notifyPropertyChanged(BR.areaStr)  // (3)
    }
  var width: Int = 0
    set(value) {  // (4)
      field = value
      notifyPropertyChanged(BR.widthStr)  // (5)
      notifyPropertyChanged(BR.areaStr)  // (6)
    }
  fun getArea(): Int {
    return height * width
  }
  @Bindable
  fun getAreaStr(): String {
    return getArea().toString()
  }
  @Bindable
  fun getHeightStr(): String {
    return height.toString()
  }
  @Bindable
  fun getWidthStr(): String {
    return  width.toString()
  }
}

ViewModel内ではセッタを実行

 このような監視オブジェクトを作成しておき、MainViewModelのフィールドとしておきます。リスト1にもあるように、フィールドのRectangleオブジェクト内のデータをTextViewにバインドしているならば、縦の長さ、および、横の長さを再生成するメソッドであるgenerateNewHeight()、および、generateNewWidth()内のコードは、Javaではリスト4、Kotlinではリスト5のようになります。単に、新しい乱数を発生させて、セッタにセットするだけです。

リスト4:MainViewModelクラス(Java版)
public class MainViewModel extends ViewModel {
  private Rectangle _rectangle = new Rectangle();
   :
  public void generateNewHeight() {
    int height = (int) (Math.random() * 10) + 1;
    _rectangle.setHeight(height);
  }
  public void generateNewWidth() {
    int width = (int) (Math.random() * 10) + 1;
    _rectangle.setWidth(width);
  }
    :
}
リスト5:MainViewModelクラス(Kotlin版)
class MainViewModel : ViewModel() {
  var rectangle: Rectangle = Rectangle()
    :
  fun generateNewHeight() {
    rectangle.height = (Math.random() * 10).toInt() + 1
  }
  fun generateNewWidth() {
    rectangle.width = (Math.random() * 10).toInt() + 1
  }
}

次のページ
双方向データバインディング

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
一歩進んだAndroidアプリ開発ができる「Android Jetpack」入門連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

WINGSプロジェクト 齊藤 新三(サイトウ シンゾウ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook<個人紹介>WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。Web系製作会社のシステム部門、SI会社を経てフリーランスとして独立。屋号はSarva(サルヴァ)。HAL大阪の非常勤講師を兼務。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/18826 2024/01/11 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング