PwCコンサルティングのデータアナリティクスチームは、企業における生成AIの認知度、活用状況、および現状の課題を明らかにすることを目的に実施した、「生成AIに関する実態調査2024 春」の結果を6月17日に発表した。同調査は、日本国内における売上高500億円以上の企業・組織に所属する、課長職以上でAI導入に対して何らかの関与がある従業員に対して、4月3日〜8日の期間に行われ、912名から回答を得ている。
調査対象者に、生成AI活用推進度合いを尋ねたところ、「社外に生成AIサービスを提供中」という回答は前回調査から9ポイント増加した。また、他社事例への関心度を尋ねた質問では、「とても関心がある」という回答が前回調査から4ポイント増加し、着実に普及/関心度合いが上昇している。
前回/今回調査における生成AI活用の推進度を、業界横断で順位付けを行い、業界ごとの順位の変動を比較したところ、前回調査から継続して推進度が高く、生成AI活用をリードしている感度の高い業界であるパイオニア層は、社内向けだけなく社外向けのサービス提供も活発に行っており、今後も日本の生成AI市場をリードしていくことが見込まれる。前回調査では推進度が低かったものの、今回調査では上位の推進度となっており、他と比べて生成AI活用が加速している業界である期待向上層では、適切なユースケースが市場展開され、早期に業務適用させるべく直近で生成AI推進にリソースを投下したと予想される。一方で、今回の調査から停滞傾向にある業界層(停滞傾向層)が出現しており、これらの業界はこれまでのユースケース企画を見直して、生成AIに適した利用法を再度模索していると考えられる。また、様子見層では活用にあたっての何らかのリスクを懸念して、具体的な活動につながっていないと予想される。
生成AIで得られた活用効果に対する、当初の期待値との差分を尋ねたところ、「期待通りの効果があった」(48%)がもっとも多く、「期待を大きく上回っている」という回答は9%だった。一方で、「やや期待を下回る」と「期待とはかけ離れた結果になった」を合わせた割合が、18%に達している。
活用効果が期待を大きく超えた理由と、期待未満だった理由の1位回答の順位を比較したところ、生成AI活用効果が期待を大きく超えたと回答した人の38%が、「適切なユースケース設定」をもっとも重要な成功要因と認識している一方、活用効果が期待未満と答えた人の30%が「データの品質」をもっとも影響がある要因だと回答した。あわせて、期待を大きく超えたと答えた人のうち、「経営層ビジョンとの一致」を理由の1位に挙げた人は7%だったのに対して、期待未満だったと答えた人では0%となっている。また、期待を大きく超えたと答えた人のうち2%が、「社員のAIリテラシ」をもっとも影響がある要因だと回答する一方で、期待未満と答えた人の12%が、「社員のAIリテラシ」をもっとも影響がある失敗要因と回答した。
生成AI活用による社員業務の変化としては、「生成AIによって業務が一部もしくは完全にAIに置き換わると思う」と答えた人の55%が、「社員はより上流かつ創造的な業務または新規事業にシフト」と回答している。また、「社員の仕事は奪われ人員削減」という回答が30%を占めた。
生成AI活用効果の還元先としては、「従業員の雇用時間への還元」「新規事業への登用等、新たな投資に回す」「従業員への利益還元(給与増加、ボーナスなど)」が上位を占めている。
これらの分析を踏まえると、生成AIは黎明期の技術であることから各社とも試行錯誤をしつつ活用を推進している中で、成果については二極化の兆しが見える。とりわけ、期待を大きく超えた成果を出している企業は、経営層が生成AIにより起き得る変革を理解し、適切な投資を与えて生成AIの取り組みを推進することで、適切な成果を実現していることがうかがえる。また、生成AIによって定型作業を極小化して人員を削減して生み出した余力を、労働環境向上や賃金増加、社外ブランディングに投資しつつ、優秀人材の確保に乗り出していることも明らかになった。
以上のことから、「生成AIを経営資源に据えたドラスティックな経営・業務変革を行う企業」が生まれ始めていると考えられる。
さらにPwCコンサルティングのデータアナリティクスチームは、分析結果などに基づいて、生成AIを経営資源に据えた変革の先に起き得る、近い将来の予測を示した。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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