「脱Excel」でkintone導入も、次第に手に負えない状態に
アミタホールディングス(以下、アミタ)は創業時から産業廃棄物の100%リサイクルに取り組んでいる企業だ。従来の分別リサイクルとは逆の発想で、各企業が排出する産業廃棄物をブレンド(調合)することで品質を安定させ、それらをセメントや石炭等の代替原燃料として再利用する独自の手法を開発している。また、企業のサステナブル経営を支援する「Cyano Project」や、森と海を守る国際エコラベル(環境認証)の審査サービスなど、多岐にわたる事業を行っている。さらに、地域課題を統合的に解決するソリューションとして、互助共助コミュニティ型資源回収ステーション「MEGURU STATION」を開発し、兵庫県神戸市や福岡県大刀洗町など全国に16か所展開している。住民は、使用済み歯ブラシやペットボトルキャップをはじめ、さまざまな資源を持ち込む。アミタは、MEGURU STATIONで収集したデータ(持ち込み資源の種類、量、頻度、時間等)を活用し、地域ごとの行動予測や製品の需要予測を行い、企業の資源調達や生産活動を最適化する仕組みの実現を目指している。
アミタの日常業務では、多くの企業と同様に、さまざまな場所でExcelが活用されていた。全社共通の業務に関わるものであれば、トップダウンでサンプルとなるようなExcelテンプレートが配布されるものの、それぞれの現場が改良を加えてしまい、集計する本部は不整合なデータに頭を抱えてしまう。標準的な業務でExcelの亜種が多数登場してしまうのはどこでも聞く話ではないだろうか。
そこでアミタではクラウドベース且つローコード・ノーコードで使える営業支援システムや業務システム開発プラットフォームを試してみた。しかし、なかなか最適なものが見つからない。
アミタ 中野大悟氏は「我々が使いたい機能、求める効果に対して、ライセンス料がうまく合いませんでした。もう少しユーザビリティが高く、分かりやすく、自分たちでもアプリ開発できるものを模索しました」と話す。
そうしたなか、約10年前にアミタのIT部門がサイボウズのkintoneに着目して導入した。kintoneはノーコードでも使えるため、現場でのアプリ開発が行われ普及が進んだ。しかし、複雑な条件分岐やシステム間のデータ連携など難易度が高くなっていき、ここはプロにお任せするのが会社全体のリソースを鑑みた時に最適だと考えた。
「野良アプリ」はアンチパターンなのか?
そこでアミタが頼ったのがニックスだ。ニックスは1982年設立の歴史あるシステム開発会社で、企業の情報システム開発では豊富な実績がある。ITサービスソリューション部 部長 小川泰弘氏は販売管理システムやクラウドERPの導入、同 課長 夏目裕史氏は受託システム開発を中心に経験を積んできた。
同社では2013年ごろから社員にITコーディネーター資格取得を推奨し、中堅中小企業へクラウドサービスを活用したシステム導入や支援に力を入れている。これまで培ってきた基幹システム構築やデータ連携の高度な知見から、顧客企業が最新のクラウドサービスを効果的に活用できるように支援している。そのなかでサイボウズのkintoneは柔軟性や利便性が高い有力なツールとして活用されている。
最初はアミタの環境認証審査サービスに関する基幹システムをkintoneに移行するプロジェクトから始まり、後に100%リサイクルサービスの受発注システム、出荷管理システム、請求書発行システムなど、重要な業務システムがニックスの手により次々とkintoneへの移行が進められていった。
現状では簡易的なものは現場で自由に作成し、難易度の高い業務システムはニックスの支援を受けるなど、現場での開発とプロの支援をうまく切り分けながらkintone活用を進めている。今ではkintoneのテナントを2つ契約してマルチテナント構成にしており、社内には合計785ものアプリが稼働しているという。
もちろんなかには、いわゆる「野良アプリ」もある。アプリ開発に慣れたユーザーが「こういうのを作ってみました! 使ってみてね!」と嬉々として披露するものの、現場でいまいち定着せず、そのまま放置されてしまうのだ。
どのローコード・ノーコードツールを使うにしても、現場で自由に作れるとなると野良アプリが生まれてしまうのは避けられない。ニックス 小川氏は「kintoneをご活用いただいている会社さんでは、アプリ数は増える傾向にあります。1,000に近いところも珍しくありません」と話す。
アプリの多さ自体は悪いことではない。むしろ少ないと現場でkintoneやアプリ開発の習慣が定着していない表れとも言える。いずれkintoneの活用自体を断念してしまうケースもある。アミタでは10年間kintoneを活用してきたからこそ、現場主導のアプリが増え、同時に重要な基幹システムのkintone移行も進んでいると言える。
ツールの仕組みを理解し、利点を引き出す設計を行うことが重要
アミタがニックスに頼るのは複雑な業務システムをkintoneに移行するケースが多い。この場合、一般的なシステム開発工程における要件定義段階の、「どのようにアプリを組み合わせるか」「どのようなデータの流れにするのか」といった観点を、アプリ構成図を描いて確認するところから丁寧に行う。
できるだけkintoneの良さを引き出せるような形で設計するほうが、より短期間で効率的に開発できる。そのためのコツとして小川氏は「kintoneはノーコードツールで、データテーブルと画面が対になっています。旧来のスクラッチ開発のように、テーブルはテーブル、画面は画面と分けて設計してしまうとkintoneの良さをいかせなくなり、多くのカスタマイズ機能を実装することとなってしまいます。全体のアプリ構成をどうデザインするかはkintone導入支援業者として最も気を遣うところです」と話す。
データの流れでは、二重入力など入力に無理や負担が生じてユーザビリティを損ねていないかを確認する。ユーザビリティを高めるために、kintoneの標準機能で間に合うものがあればそれを採用し、無ければ何らかのプラグインを採用するのもありだ。幸い、kintoneには豊富なプラグインがある。
どうしてもカスタマイズ(開発)が必要な場面では、ニックスがモック(試作品)を作成。そのうえでどのように機能を拡張していくか、アミタとニックスでどう分担していくかをコストも含めて双方で確認していく。コストに関しては標準機能かプラグインかコーディングが必要になるかで変わる。
よって、基幹システムのような複数の業務アプリが絡む高度なものになると、ニックスの知恵や経験が生きてくる。マスターをどのように配置し、どのようなトランザクションを用意するか、初期の構成段階でしっかり考えておくと「あまり失敗しないで済みます」と小川氏は言う。標準機能を使うか、カスタマイズする部分の見極めについても夏目氏は「(機能や労力が)too muchにならないようにお客様と会話しながら選んでいきます」と言う。また、データ量も影響するので不要なデータはパージするといった配慮も必要になってくる。
データ構造を簡単にメンテナンスできるのもkintoneの大きな利点となる。夏目氏は「kintoneで最も衝撃的だったのは、一覧の定義が誰でも簡単にメンテナンスできることです。ここは革新的」と話す。これまで業務システムの保守において、データベースのテーブルの定義を変更することはプロの仕事だった。しかしkintoneの知識や権限があれば、項目の並び順や新規追加など短時間で可能だ。
プロのエンジニアがkintoneを活用することで得られる学びとは
ニックスはシステム受託開発もしていたものの、クラウドサービス導入支援事業へのシフトも早かった。小川氏はkintoneに出会った時を振り返り、次のように話す。
「以前はクラウド型ERPを提案の中心に据えていたこともありましたが、初期コストを抑えつつ、お客様の業務に合わせてシステムを柔軟に構築できる基盤を求めていました。kintoneは、まさにうってつけで、シンプルさと柔軟な拡張性を併せ持つサービスだと思いました。また、サイボウズ社が展開するパートナーとのエコシステムの輪に加わることも魅力の一つでした。kintoneを中核に様々なサービスとの連携する事が可能なので、お客様への提案の幅が広がりました」(小川氏)
そう思うのも、小川氏がITコーディネーター資格を取得した時期と重なっていたからかもしれない。同氏は「kintoneはITコーディネーターを通じて学んだ『お客様の意識を尊重し、価値を共有し、共に目標を達成する』という発想にすごく合致していて、自分でも共感できたところでした」と話す。
さらにエンジニア視点でのメリットもあったという。重厚長大な基幹システムだと、エンジニアは数年単位で同じプロジェクトに関与し続けることもあるが、kintoneだと短期間で構築できるため、多種多様な業界や企業に渡り経験を積むことができる。小川氏は幅広い経験ができたことが「エンジニアとしてすごく成長につながりました」と言う。
開発コストを過剰に増やさないようにするためにも、kintoneそのものの標準機能を熟知することが必要になる。小川氏は「kintoneを使い始めたころはオフィシャルのヘルプやデベロッパーサイトを熟読しました。またkintoneの資格制度を通じて体系的に学べたことも役に立っています」と言う。夏目氏は「サイボウズのサイトはコンテンツが充実しています。細かくリンクを貼ってくれているので、情報がすごく探しやすいです」と言います。
最後に読者へのメッセージとして、中野氏は「ライトな開発ならkintoneは抜群です。壁にぶつかったらニックスさんのような開発のプロに相談すると良いと思います」とニックスを推す。小川氏は「kintoneは短期間で効率的にシステム開発ができるため、開発実績を積み重ねたいエンジニアには魅力的なプラットフォームだと思います」、夏目氏は「開発者向けの無料の開発環境や研修から本当の正解が分かるようになります。またkintoneで苦手なところは他サービスと連携するのも良いです」と話す。
kintone APIも無料で試せる! 開発者向けサイト
kintoneは、東証プライム上場企業の3社に1社を含む、37,000社以上が利用しているサイボウズのノーコード・ローコードツール。ITの知識がなくても自社の業務に合わせたアプリを作成でき、日々変化する業務にあわせた改良も簡単に素早くできます。主な機能として「データベース+ワークフロー+コミュニケーション」の特性があり、顧客管理、出張申請、業務日報など幅広い用途で活用できるため、現場主導の継続的な業務改善を実現します。
ノーコードでアプリを簡単に作成できる一方でAPIも提供しており、JavaScriptによる画面カスタマイズや、REST APIを使って様々なシステムやサービスと連携することが可能です。
APIに関するドキュメントやTipsを開発者向けのサイトで公開し、顧客または自社向けの開発・テストや、開発スキルの習得に活用できる、kintone APIを無料で試せる環境を提供します。