第1回~第9回までの記事は「開発生産性の多角的視点 〜開発チームから事業経営に開発生産性を波及させるには?〜」からご確認いただけます。
10.1 はじめに
開発生産性を向上させるためには、実はコーディング自体よりも開発以外のフェーズにかかる時間を短縮することが重要です。実際にリードタイムを計測してみると、多くの組織では純粋な開発フェーズはそこまで時間がかかっておらず、むしろ要件定義や設計フェーズのドキュメント作成、頻繁な会議、急な差し込み依頼によるデータ抽出作業などが大きなボトルネックとなっていることがわかります。
これらの開発外業務は、エンジニア自身が担当することもありますが、多くの場合は開発組織のマネージャーやエンジニアと密接に関わるプロダクトマネージャー(PM)、プロダクト開発マネージャー(PdM)が担っています。彼らの業務効率化は、開発プロセス全体のリードタイム短縮に直結します。
開発組織を束ねるマネージャーやPM、PdMの業務は多岐にわたります。日々の業務に追われる中で、以下のようなさまざまなタスクを担当しています。
- 要求・要件管理:要件定義の作成、整理、超概算見積もり、優先順位付け
- 技術理解:既存プロダクトの仕様把握
- 品質管理:テスト計画、バグトリアージ、リリース判断
- データ分析:ユーザー行動分析、データ抽出によるSQLクエリ作成
- 顧客対応:フィードバック収集、要望管理
- プロダクト戦略:市場・競合分析、ロードマップ策定
- ステークホルダー連携:ビジネス部門との調整、経営層への報告
これらの業務は、開発リードタイムに直接影響を与えます。一つのタスクが滞れば、開発全体のスケジュールに遅延が生じるリスクがあります。従来の方法では、これらの業務をこなすために多くの時間と労力が必要でした。
10.2 AI活用前後の業務効率比較
近年、AI技術の急速な進化により、これらの業務を効率化する強力なツールが登場しています。特にCursorのようなコーディング支援だけではなく業務支援ができるエディターやNotebookLMのようなドキュメントのノートツールは、PM・マネージャーの日常業務を大きく変革する可能性を秘めています。
以下の各業務に対するAI活用前後の表を、例として見ていきましょう。
業務領域 | AI活用前 | AI活用後 |
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要求・要件管理 |
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技術理解 |
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品質管理 |
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データ分析 |
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顧客対応 |
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プロダクト戦略 |
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ステークホルダー連携 |
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これだけ見ても、だいぶ行動パターンを変化させないといけない気持ちになってきます。
本記事では、開発マネージャー・PMがAIツールを活用して、開発リードタイムを短縮する具体的な方法について探っていきます。