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【最新Kotlinアップデート解説】バージョン1.1からの変更点総まとめ

Kotlin最新アップデートまとめ ──sealedやdata、プロパティに関するアップデート

【最新Kotlinアップデート解説】バージョン1.1からの変更点総まとめ 第3回

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プロパティに関する変更点

 最後に紹介するのは、プロパティに関する変更点です。

ゲッタの省略記述

 Kotlinのプロパティとは、単なる変数ではありません。データに対するゲッタセッタ(アクセサ)が自動生成される仕組みです。このことから、プロパティのセッタやゲッタをカスタマイズできるようになっています。

 また、データを持たないゲッタのみのプロパティ、つまり算出プロパティ(Computed Property)を定義することもできます。

 例えば、リスト15の(1)のようなコードです。

[リスト15]算出プロパティの例
data class GinBaseCocktail(
  val name: String,
  val ginVolume: Int
) {
  val ginVolumeStr: String  // (1)
    get() {  // (1)
      return "${ginVolume}ml"  // (1)
    }  // (1)
}

 リスト15の(1)で定義したginVolumeStrプロパティには、その実体(データ本体)が存在せず、プロパティへのアクセスは、その都度ginVolumeプロパティを元に算出された文字列がリターンされます。

 ゲッタの{ }ブロック内のコードが(1)のように1行のみの場合は、代入式が利用でき、次のコードとすることができます。いわゆる、単一式関数(Single-Expression Functions)の構文です。

val ginVolumeStr: String
  get() = "${ginVolume}ml"

 さらに、こういった単一式関数のゲッタの場合、プロパティの型への型推論が働き、型宣言が省略できるようにバージョン1.1で変更されています。

 これを利用すると、ginVolumeStr算出プロパティは、次の1行で記述できます。

val ginVolumeStr get() = "${ginVolume}ml"

インラインプロパティ

 同じく、バージョン1.1で導入されたのがインラインプロパティです。インライン関数については前回紹介しました。

 インラインプロパティは、このインライン関数と同じ機能をプロパティのアクセサに適用できるものです。すなわち、コンパイル段階でアクセサのコードを埋め込むことができます。

 定義方法もインライン関数と同じく、inlineキーワードを使います。例えば、リスト16の(2)のようなコードとなります。

[リスト16]インラインプロパティの例
data class BourbonBaseCocktail(
  val name: String,  // (1)
  val bourbonVolume: Int  // (1)
) {
  inline val ginVolumeStr get() = "${bourbonVolume}ml"  // (2)
}

 ただし、このインラインプロパティを定義できるのは、バッキングフィールドを持たないプロパティに限る点に注意しましょう。

 バッキングフィールド(Backing Field)とは、プロパティのデータを保持しているプロパティの実体のことで、通常、表には顔を出しません。

 例えば、リスト16の(1)のようなプロパティを宣言した場合、その内部では名前とバーボンの量を保持するプロパティの実体(データ本体)とそのアクセサが自動生成されていることになり、このデータ本体がバッキングフィールドです。

 一方、(2)の算出プロパティは、前項で説明した通りデータ本体が存在しません。これは、バッキングフィールドが存在しないプロパティです。このようなプロパティのみ、インライン化できます。

 そのため、リスト16の(1)に対してinlineキーワードを記述すると、エラーになるので注意してください。

 ※エラーとなるのはバージョン2.1以降です。それ以前のバージョンの環境では警告のみ表示されます。

まとめ

 Kotlinのバージョン2.0までに導入された新機能をテーマごとに紹介する本連載の第3回目は、いかがでしたでしょうか。

 今回は、クラスとインターフェースに関するアップデートというテーマで、sealed、data、プロパティに関する変更点を紹介しました。次回は、この続きとして、委譲プロパティやインラインクラス、Enumに関する変更点を紹介します。

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 齊藤 新三(サイトウ シンゾウ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook <個人紹介>WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。Web系製作会社のシステム部門、SI会社を経てフリーランスとして独立。屋号はSarva(サルヴァ)。HAL大阪の非常勤講師を兼務。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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