若手に「選択肢」を与える場所を作りたい
最初に登壇したのは、「ココカラ勉強会」を主催する前村克樹氏。関西在住の前村氏は、エンジニア歴6年目(2025年2月時点)。現在はプロジェクトマネージャー1年目として実務に携わりつつ、大阪を拠点に若手向けの勉強会運営に力を注いでいる。
「ココカラ勉強会」は、月1回オフラインで開催され、LT(ライトニングトーク)やグループトークを中心に学びと交流の場を提供している。運営期間は3年半、運営メンバーは5名で、平均参加者は約26名にのぼる。これまでに、SansanやLINEヤフー大阪オフィス主催の公式イベント「MixLeap」とのコラボや、スポンサー企業と共催したカンファレンス「Next Step Meetup」なども実現してきた。
こうした活動の原点には、前村氏自身のキャリア上の「選択」がある。社会人2年目の頃、技術に向き合えない職場環境に疑問を持った前村氏は、外部の勉強会へ参加。そこで前向きに学ぶ仲間と出会い、設計への意識やものづくりへの姿勢を学んだ。この経験がきっかけとなり、自身もより技術志向の企業へ転職することを決意する。
その後、勉強会で知り合ったエンジニアに誘われて副業にチャレンジ。ハイレベルな開発案件に苦しみながらも、技術的に鍛えられた。そして経験を積む中で、勉強会の主催や友人との副業プロジェクト、後進のコードレビューなど、多面的にキャリアを広げていった。
前村氏は、キャリアの分岐点には「視野」と「パワー(行動力)」の両方が必要だと語る。そしてこれらは、「人との出会いや対話から生まれるもの」という見解だ。「他者と会話を重ねることにより視野が広がり、パワーももらえる」。そんな場所をつくれたらと考えたことが、前村氏をコミュニティの主催へと向かわせたのだ。
さらに前村氏は、コミュニティ単体ではなく、「場所と場所の循環」にも注目している。たとえば若手向けの勉強会が、「Developers Summit KANSAI(デブサミ関西)」やベテラン層の集まりへと接続したケースも。こうした出会いの中で、多様な価値観や選択肢が広がる好循環を実感しているという。
「今できる最大限のことは、大阪の若手向けITコミュニティという場所を継続させること。このターゲットに向かってピンを打ち続けることが、自分の役割だと思っている」。前村氏の言葉には、コミュニティに育てられた実感と、その恩返しを次の世代へつなぐ覚悟がにじんでいた。
