スキルアップを目指し、SESから事業会社へ
桃井氏は、新卒で地元の零細企業に就職し、事務などの仕事を言われるがままこなしていたという。1年経って自分のキャリアを見つめ直したときに、興味のあったIT業界に入ろうとSES企業に転職した。
桃井氏は、IT業界に入ってからいくつかのライフイベントを経験し、キャリアと働く価値観を変化させてきた。「このセッションではエンジニア職に就いたあと、2回の転機とそこから得た経験をお話しできればと思っています」

パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 ビジネスコアインフラ部 コアインフラ室 リードコンサルタント
桃井 良枝氏
桃井氏は現在のパーソルホールディングスに入社するまでに、IT業界でSES企業とベンチャー企業の2社を経験している。一度目のキャリア転機は、SES企業に在籍しているとき、「結婚」というライフイベントのタイミングで起きた。
「同じSES企業で、日勤・夜勤の保守業務に就いていた夫と結婚しました。夫は結婚してすぐに事業会社に転職して、インフラエンジニアとして働き始めたんです。事業会社で日々スキルアップをして、充実している様子で、SES企業にいた時よりもかなり楽しそうだな、と。私も事業会社っていいな、と関心が高まりました」
SES企業時代、桃井氏にとっては初めてのIT業界だったこともあり学ぶことが多かった。主にサポート業務を任される中で、問い合わせをもらうことでサーバーやネットワークの仕組みを知ることができたので、「最初はとても楽しかった」と振り返る。
一方で、15年前の時代には構築案件に女性がなかなかアサインされる機会が少なく、いつまでもサポート業務しか任せてもらえなかった。桃井氏の業務は、システムの一部の動作について調査をして回答するもの。システム全体に関する知識が身につかないと感じ、「このままでは自分のキャリアが広がらないのでは」という不安があった。
自社サービスを持つ事業会社ならシステム構築の工程に一貫して関わることができるのではないか。そう考えていたところ、身近な人が事業会社で楽しく働く姿を目の当たりにしたことで、より転職の意思を強くした。
最初のキャリア転機となったこの転職活動では、自分の「やりたいこと」を見つめ直したと桃井氏。
「自分はスキルアップを目指したい。スキルアップとは、システムの設計から構築・運用・保守と一貫して関わり学ぶことだと結論付けて、これを軸に転職活動を行いました」
それまでのエンジニアとしての経歴はサポート業務がメインだったため、なかなか希望の職種で採用してもらえず、転職活動には苦労した。そんな中、クラウドストレージ事業を展開しているベンチャー企業から声をかけてもらってインフラエンジニアとして入社することができた。
しかし、すぐにはスキルアップに取り組めなかった。あくまでも前職のサポート業務の経験を買われて採用されていたからだ。前職のスキルを生かして実機検証やマニュアルの作成といったサポート業務を行いながら、徐々にできる業務を広げていった。
少しずつ経験を積む中で、ついに自分でシステム構築・運用保守に関われるタイミングが訪れた。新しいクラウドストレージサービスの事業を開始することになり、桃井氏も開発に携わることになったのだ。
当時の会社では、機器設置からサーバー構築、運用保守まで自分たちで行っていた。使っているソフトウェアもOSS製品だったため、有償サポートはなく、不具合が起きた際も自分たちで調査・対応していた。
「周りのサポートを受けながら、サーバーの設計から運用保守という一貫した業務に携われた。転職時に軸にしていたスキルアップの目的を達成することができました」