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IT×大企業で社会の変革に挑むトップランナーたち

「AIなんて」が消えた3年──みずほFG・CAIO藤井氏、齋藤氏が語る、大企業AXの現在地

中野 佑輔(編集部)[著] / 丸毛 透[写]

みずほFGから「AIなんて」が消えた3年間

──みずほFGがAI利用を検討し始めたのは3年前と伺いました。改めて、この3年間で起きたAI関連の進化をどう捉えていますか?

藤井:我々がAIを使い始めたのは2023年6月ですが、当時のLLMといえばGPT-3.5ベースのChatGPTです。画像を扱えず、長期記憶の機能もない。いわゆるエージェントという概念もまだありませんでした。一問一答で気の利いた回答は返ってくるけれども、ハルシネーションも多いという状況でした。

 それが2026年の現在、研究開発やコーディング、最近だと創薬や動画生成、3Dモデリングまで、人がいろいろなことを考えながら長時間こなさないといけないタスクを、AIが正確にこなすようになりました。振り返ると、改めてこれは大きな変化だと感じます。

──AIの進化に伴い、みずほFGの内部にはどのような変化があったのでしょうか。

藤井:最初は懐疑的だった人もたくさんいます。普段から最新技術にたくさん触れている人は、AIの業務活用に対しても「なぜやらないのか」という感覚を持ちます。しかし、先端技術に日常的に触れていない社員にとっては、その進化が業務や社会にどのような変化を与えるのか、先に起きる未来を想像しづらいのです。

 ただ、技術がものすごい勢いで向上すると、いろいろなユースケースが世の中に生まれます。経営陣も他社の先進事例や社会動向を敏感にとらえ、具体的な活用方法をイメージすることができるようになります。この外部環境の変化が一番大きいと思っています。

 加えて我々の場合は、社内向けのAIツールを結構たくさん配っていて、社員がすごく使ってくれています。ポジティブなフィードバックが得られ、実際に業務効率も向上している。それを無視して経営は当然できません。

 これは我々のようなセンター・オブ・エクセレンス(CoE。専門知識を集約して全社を支援する横断組織)や事業部門だけの話ではありません。コンプライアンス、リスク、監査といった、いわゆる守りの部門の人たちにも、そういう時代に対応しないといけないという意識がすごく出てきています。ですからスピードは確実に早まっていますし、AI活用に関する意思決定の早さや、そこに配分される予算規模も、3年前とは比べものにならないぐらい変化しています。

失敗を許容しながら、より良いプロダクトを作っていく

──藤井さんは3年前、銀行の組織文化として「失敗を許容する」ことの重要性を語られていました。この3年でAIが社会に浸透する中、組織のガバナンスとAIとの関わり方はどう変化しましたか。

藤井:弊社では、経営トップ自らが「失敗しないとわからない」と言っています。もちろん、お客さま情報の漏洩といった致命的な失敗は絶対に許されません。しかし、真っ当にやってみて結局お客さまに刺さらなかったということなら、それは仕方がないので次の一手を考えようとなります。

 いずれにせよ、やってみないとわからないし、やってみて初めて駄目だったとわかり、その結果として次どこに行くかを考える。「これをずっと続けていかないと、変化の大きい時代に競争力を維持することは難しい」。この認識は会社で共有されています。

──齋藤さんは実際にプロダクトを作ってこられた立場から、社内ユーザーの反応の変化を感じますか。

齋藤:私は2024年1月からアプリケーションを自分でも作り、作るチームも立ち上げてきましたが、ものすごく変わってきています。最初の頃は「面白いね」「こんなことに使えるかも」という意見が多かったです。最近は「この契約書の内容を埋めるために、このExcelファイルとこのPDFを全部入れて契約書を埋めてください」といった具体的なユースケースが出てきています。

 人が転記したり、少し考えて計算したり、意味を考えて言葉を変えて契約書に盛り込んだりといった作業時間が、AIによって短縮できています。2年前にチャットボットの利用シーンを網羅的にデータで取ったときは翻訳やマクロ生成が強かったのですが、今は実際の業務に組み込むことができてきている。これが大きな変化です。

──AIの業務活用という観点で、LLMのマルチモーダル化は大きな変化だったのですね。

齋藤:はい、かなり大きな変化でした。元々は画像を取り込むこともできませんでしたが、今は取り込めるし生成もできます。例えばPDF1つ取っても、文字だけを抜いて処理した方が優れている場合もあれば、段落やポンチ絵を含んだ1枚の紙として読み込ませた方が精度が良い場合もある。1つのPDFを処理するだけでもいろいろなやり方が取れるようになったのは、マルチモダリティの良さの1つです。

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この記事の著者

中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)

 金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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