オープンソースカンファレンス2009仙台が開催される
オープンソース系カンファレンスとしては東北地方で初の大規模開催となる「OSC2009 Sendai」が1月24日、東北電子専門学校(宮城県仙台市)を会場に開催された。併催された「仙台Ruby会議01」も含めて最大5セッションが同時に行われる多彩なプログラムに、主催者の予想を上回る300人近くのオープンソース開発者や利用者が東北各地から集まった。
オープンソースをめぐる近年の傾向として、地域振興あるいは地域産業の活性化という観点から、大手ベンダーを介さずに草の根でも利用可能なプロダクトとして期待されている側面がある。今回のOSCでは、とくに午後のパネルディスカッション「オープンソースを東北地域でどう生かすか」で、産官学コミュニティそれぞれの視点から、地域と密着したオープンソースの可能性が検討された。
地方でも東京でも同じになるIT業界
仙台にいても東京と遜色なく仕事できる - 片平
仙台でウェブアプリケーション開発を手がけるフリープログラマーの片平裕市氏は、日本Rubyの会のメンバーでもあり、同時開催された仙台Ruby会議01の実行委員長でもある。片平氏は、ほぼ100%の開発を「Ruby on Rails」で行っており、現状で情報的なディバイドはないという。
プログラミングの仕事は、SubversionやSkypeなどのツールを活用すれば、どこにいてもこなすことができ、東京にいなくてもそんなには困っていない。仙台にいながらにして、東京の企業と遜色のない形で仕事ができていると語った。
クラウド化が「どこにいてもいい」ITを推進する - 中村
一方、東京で仕事をしているサン・マイクロシステムズ株式会社の中村彰二郎氏(新規ビジネス開発本部本部長兼情報セキュリティ統括責任者)も、今の時代はネットとOSSによって働くモデルが変わる、と語る。
中村氏も東北学院大学の出身で、中村氏の時代には地元に企業がなかったから東京に就職したが、今後は「どこにいてもいい」ということが大前提になる。IT業界は「クラウド」の世界に入るので、最先端がどこか、アメリカとかヨーロッパとか日本とは関係なく、世界で一番喜ばれるものが使われる。OSSに関わる技術者にとっては「いよいよ勝負です」と鼓舞した。
リアルワールドの密度を「標準化」が補う - 岩本
東北学院大学の岩本正敏准教授(工学部電気情報工学科)は、技術者教育の現場から、地方大学の学生には地元志向が強いという傾向を語った。それは「外に出て行きたくない」ということではなく「親の問題や、家のことを彼らなりに考えた結果」だという。
しかし片平氏や中村氏も語るように、今では仙台にいて世界を相手に仕事することは不可能ではなく、情報の収集も東京が必ずしも有利ということはない。それだからこそ、自分のいたいところで、仕事がしっかりとできる仕組みを作らないといけないと語る。
ここで問題になるのは、ネットよりもむしろ「リアルワールドでの密度が低いこと」だ。同じことを考えたり、仕事をしている仲間の数と密度が低い。これを補う方法として「標準化」がある。標準的なツールやソフトウェアを使うことで、地域で共通の話題を持ち、密度を上げる。OSSで標準化を進めることで、まったく新しいモデルが生じるという。
地方と勉強会
OSSとリアルワールドの関係では、近頃は「勉強会ブーム」と言われるほど、開発者によるコミュニティ活動が全国で盛んになっている。片平氏も、地元で「Rails勉強会@東北」や「東北デベロッパーズコミュニティ(以下、TDC)」を主催している。参加者の傾向としては、SIerで東京の案件をブランチで受けている人が多いという。
片平氏によれば、地方でのコミュニティ活動の問題として「出てくる人が限られてくる」ということがある。ある程度の興味ある人たちより広い層に「どうしてもリーチできない」というもどかしさを感じているようだ。Rails勉強会@東北は、ほぼ月1回で16回を開催してきたが、コアなメンバーで固まってしまう傾向もあるという。
昨年2月に設立したTDCでは、ややライトな形を模索し、実験的にさまざまな会合を開催している。メンバーは現在160人ほどになり、勉強会にも2~3倍の人が集まるようになった。さらに今後の抱負を、片平氏は次のようにまとめた。
東北のひとって、アホなことをする人があまりいない代わりに、動きはじめるとずっと継続する。瞬間的に終わらないところが良さなので、TDCもずっと続けていく。続けることによって、生まれるものがあると信じている。続けられる限り、ずっと続けていきたい。