アクシスソフトのリッチクライアント製品『Biz/Browser』『Biz/Designer』は、業務効率向上を主眼にしたエンタープライズ向けのRIA製品だ。同製品は、インターネット環境のオープン性に加えて、徹底したユーザビリティの向上による日々の業務の効率化はもちろん、クラウドコンピューティグ/SaaSのフロントエンドとしての利用も視野に入れており国産のRIAとして他には無いポジションを確立している。同社の営業統括部統括部長の西村修氏と、営業技術部次長の小泉裕司氏に、Biz/Browserなど同社の製品の特徴や開発ポリシーなどについて聞いた。
入力から出力までの操作感をリッチに
PCとWebが普及した現在、業務用アプリケーションにおいても、以前は個別の環境毎に作っていたものが、オープンなプラットフォームを活用し、かつ、Internet Explorerなど、軽量なブラウザで動作するWebベースのものに移行が進んでいる。しかし西村氏は、「Webシステムの主なメリットは、システム運用管理者に対するメリットであり、使用する側の業務担当者の利便性が、専用のアプリケーションに比べて見劣りするという問題が起きています」と指摘する。「つまり、企業は数人分のシステム管理コストを下げる一方で、場合によっては数千名分の業務生産性低下という遙かに大きな問題を抱えることになってしまいます」と西村氏。
WebブラウザをクライアントとしたHTMLベースの業務アプリケーションの場合、専用端末・専用アプリケーションのようなクイックなレスポンスを得ることが難しい。また、入力の処理についてもフォームの各項目の入力時に日本語入力モードや半角英数字モードの切り替えが発生するなど、使い勝手もあまりいいとはいえない。そこで同社では、HTTP通信というWebのオープンなプラットフォームを使いながらも、業務アプリケーションに特化できるような専用のブラウザであるBiz/Browserを開発した。「10年以上前の低スペックのパソコンでも快適に動作し、非常に軽く安定して動くようにしています。Windows 98であろうが、Vistaであろうが、環境の差異を吸収して動作します。このため、Internet Explorerのバージョンが変わったせいで、アプリケーション側の改修が必要になるといった問題もありません」と西村氏は語る。
RIAというと視覚効果としてのUIがクローズアップされがちだが、Biz/BrowserやBiz/Designerでは、人間が利用するインターフェースとしてのUIを追求しているという。西村氏は「Biz/Browserの開発においてはいかに操作性の良いアプリケーションが実現できるかが重要なテーマでした。GUIによる直感的な分かり易さは当然のこととして、一つの業務単位でのスループットが重要であると考えました」と経費精算アプリケーションを実演しながら説明する。「入力を開始し、一つの明細を入力し、まとめて承認者に送信するまでが一つの業務単位です。このスループットが低いとどんなリッチな画面でも不満が出ます。経費精算の例であれば、利用者が明細行を1行入力しているとき、すでに1行分のデータを手にしているはずなので、1行分のデータを入力し終わるまで、入力を中断させるようなことがあってはなりませんし、利用者に次の入力欄を探させるようなことがあってはなりません。逆に、1行入力が終わって2行目の入力を始めるまでの間やすべての明細データの入力後に『申請』ボタンを押下した後であれば利用者は少し待つことに不満を感じにくいはずです。つまり『利用者を待たせること』と『処理時間がかかること』は同義ではないということになります」
もちろんGUIの操作性も、スループットを高めるために重要な要素だ。キー押下数の最小化やマウスクリックの最小化、入力オペレーションの最小化、視覚効果による適切な誘導などが基本となる。
西村氏は、「こういったGUIの操作性は、Biz/Designerによって簡単に設定できますので、開発者にとっても非常にメリットのある点だと思います。AjaxやFlex、Silverlightなどと比較しても非常に容易に実装可能です。Biz/Designerなら、例えば[Enter]キーで項目の遷移を行うといったキーボードオペレーション中心の操作感をプロパティ設定で簡単に作成できます」と、企業における業務システムに特化して設計されていることをアピールした。
Biz/Browserの利用においては業種などは問わない。同社の顧客は、東京海上や第一生命、ヤマト運輸など2009年4月現在で720社、クライアントは数十万を超えている。
導入事例のページでは、Biz/Browserを導入した背景・理由・サービス概要など、詳細な資料が提供されている。
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素早いレスポンスと軽快な操作感の理由
業務効率向上のためのレスポンスを追求しているBiz/Browser。技術的には、他のWebアプリケーション同様、アプリケーション自体はWebサーバにある。しかし、クライアントのPC側で動作させる際、アプリケーションを中間言語にコンパイルして、バイナリファイルとしてPC上のディスクに保持する。高速に動作する秘密はここにある。最初の認証や連携部分以外のアプリケーション自体の取得や動作には、ネットワークアクセスが発生せず、データ入力終了後に更新を行うことで、ネットワークとつながり、データがサーバに送られる仕組みだ。「つまりクライアント/サーバのように動作できるWebアプリケーションです。やはり速さは重要です」と西村氏はその軽快性について説明した。
小泉氏は、続けて「サーバ側アプリケーションから見るとBiz/Browserは、あたかも通常のブラウザのように見えます。つまり、サーバアプリケーションの開発は、通常のWebアーキテクチャとほぼ同様となり、Webサーバがあり、そしてJSP、ASP、サーブレット、COBOLなど何らかのプログラムが置かれます。Biz/Browserの場合で異なるのは、通常はサーバ側で作り込まなければいけない画面遷移の制御が不要になる点です。なぜなら画面遷移はBiz/Browserの専用言語であるCRS(チェイン・リフレクション・スクリプト)が制御することになるからです」とさらに技術面を補足した。
セキュリティに関しても十分な対策が施されている。Biz/Browserで扱うCRS自体はクライアントのPCにバイナリ化されてキャッシュされるが、その中にデータは含まれない。実装上、クライアント側にデータは一切残らないようになっている。もちろん、通信に関しても、SSL(HTTPS)に対応している。また、Biz/Browserでは、個々の企業における開発要件上、必要であればローカルファイルアクセスやプッシュ型のアプリケーションの実装が可能である。つまりWebアプリケーションでありながらオフライン動作が可能となり、非常に柔軟で、かつデータの暗号化などに対応したセキュアなシステム構築が可能となる。
Biz/Browserの技術は、ネットワークの負担が少なく、デザイナーがアプリケーションを容易に作れるというメリットがある。このメリットは、モバイル対応においても有効となる。モバイル端末に特化したBiz/Browser Mobileは、小さな画面のモバイル端末向けに最適化されている。モバイル端末の場合、アプリケーション開発にC言語を使う場合が多く、開発コストも比較的高くなる。西村氏は、「例えば流通系のお客様の場合、店舗を増やすのは、売上げをアップしたいからです。しかし、専用アプリケーションで動作させている場合、システム管理者は店舗の数に応じてシステムの導入や入れ替えの際に出向いたりするなどの負担が増えます。Biz/BrowserならWeb化しているので更新も楽です。特に業務系小型端末を必要とする業務は独特の作法が操作面や運用面に求められますが、そういった慣習を変えること無く店舗展開のリードタイムを短縮できることになります」と、モバイルニーズへの Biz/Browserの適合性を説明した。
なお、Biz/Designer Mobileはモバイル端末ごとのプロファイル設定を行うことで、機種に合わせた画面サイズや、スマートフォンの場合の縦/横画面設定なども可能だという。CRSのスクリプトはモバイルでもPCでも全く同じように扱うことができる。クラスの対応状況など詳細な差異はあるものの、どちらかを開発したことがあれば、両方対応可能だ。
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作り手の効率も追求した開発環境
Biz/Browser向けのアプリケーションを作るにあたり、開発者にとってのメリットをさらに尋ねてみると「専用の開発環境であるBiz/Designer(GUI/スクリプトの2Way開発環境)は覚えやすく、非常に使いやすいツールです。開発自体も効率性を重視しています。業務アプリケーションに必要な部品は揃っていますので、それを組み合わせて作ることができます。直感的な操作でアプリケーションを作ることができるのです」と小泉氏。Biz/Browserの言語であるCRSは、部品(クラスライブラリ)をフォーム上に貼り付けていく過程で自動生成され、文字入力制御などの設定もプロパティ設定を行うだけでスクリプトに自動的に追加される。もともとCRSはJavaScriptライクな言語なので、覚えやすい。CRSによる直接スクリプトコーディングで細かい挙動を補ったり、サーバへのデータリクエスト/エントリなどをコーディングすれば簡単にアプリケーションの開発ができてしまう。「サンプルアプリケーションやTIPS集もオンラインで公開しています。用意された雛型を業務に合わせても良し、実際に使う方の感覚で画面を作っていただくのも良し、技術者サイトの情報をフル活用して欲しいです」と小泉氏。なお、製品サポートは、Q&A専任のスタッフがいることで安定した回答を提供しているという。
小泉氏はさらに「先日、Biz/Browserと.NETで同じ機能を持つアプリを作って開発の生産性を比べたところ、気がついたことがありました。まず、.NETの強い部分は、マイクロソフトの持つ広いフレームワークや基盤の部分です。たとえばVisual Studioなどのターゲットは、Webアプリケーションだけにターゲットを絞っているわけではなく、様々な形式のデスクトップアプリケーションまでかなり広い分野をカバーできます。それに対してBiz/Browserの場合は、Webアプリケーションに特化しているので、開発環境であるBiz/Designerもネットワークデバック機能を始め、Web環境での開発/保守を効率的に行える機能にフォーカスして充実させることが可能となっています。
.NETの場合は、多彩なクラスやプロパティが用意されていることで非常に細かいアプリケーションコントロールが可能ですが、反面、実装の手間は煩雑化し、工数にも影響が出る場合もあるようです。Biz/Browserなら、入力フォームを作ればいいので、エンジニアの方ならすぐにできます。今までの一般的なアプリケーション開発、たとえばVBの経験者なら『ボタンを押せばイベントが発生する』『イベントに何か処理を書けば当然何かが動く』『メッセージボックスにテキストボックスの値を渡せば入力した内容が出る』といった世界に近いですね。配布やパッケージングなどに配慮するといった面も少ないので、純粋にアプリ開発に専念できます。テストにおいても、HTTP通信においてデータがどう行き来しているかも容易に見ることができます。こうした面でも、迷いなくアプリが作れるのではないかと思います。正直、Biz/Designerの使い方が分からないという質問はほとんどありません」と開発のしやすさをアピールした。
専用サーバの要らないWeb帳票生成システム
アクシスソフトでは、Biz/BrowserやBiz/Designer以外にも業務効率向上のための製品を多数用意している。中でも、同社が積極的に展開しているのが、帳票の印刷に特化したシステムPrintStream® Core SEだ。クライアントから帳票生成用のサーバにあるWebアプリケーションを呼び出して、帳票のイメージデータを出力し、そのデータをクライアント側のプリンタで印刷できるシステムだ。PCだけでなく、モバイル端末からの利用にも対応(PrintStream® for Mobile)し、モバイル端末と、Bluetooth通信可能なプリンタさえあれば、その場で帳票を印刷して顧客に渡すなどの作業が可能だ。取材時に拝見したデモンストレーションでも、PCを必要とせずモバイル端末とモバイルプリンタだけで本格的な業務帳票が印刷された。
小泉氏は「PrintStream® Core自体は、Javaのライブラリとして提供していますので、かなり汎用性が高いです。サーバーサイドのJavaのアプリケーションから印刷イメージを生成するという簡単かつ軽量な仕組みです。その出力形式に弊社のPSSという形式がありまして、これが帳票の高速印刷を実現しています。PSSは、生成された帳票データを分割してクライアント側に送ることが可能なストリーミング形式を採用しています。これにより、帳票業務の中で一番時間がかかる印刷処理までのリードタイムと印刷までのトータルの時間を短縮できます。しかも、PrintStream® Coreは、Biz/Browserとは独立した製品で単独使用することが可能です。もちろんBiz/Browserと組み合わせることで入力から出力まで効率的なWebアプリケーションを構築することが可能となります」と帳票業務の効率化について説明した。
特にモバイル端末に対応したPrintStream® for Mobileは、様々な利用シーンが想定できる。例えば、現場での作業担当者が作業報告書や確認書をその場で印刷し、お客さまにサインをいただき、控えをお渡しするといったものや、料金回収をするときに、その場で契約書やコンビニの支払い用紙を印刷するなどが想定されている。最近、PCの持ち出しが厳しくなっている企業もあるので、そういった状況の中、PCなしで帳票を出したいというニーズに対応している。
データ入力から帳票の出力まで、一貫して業務効率向上を目指すアクシスソフトの製品群は、利用者と開発者双方にメリットを提供するという意味でも、リッチなインターネットソリューションといえる。
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