NTTPCコミュニケーションズが昨年10月から提供を開始した『WebARENA CLOUD9』は、米国Verio社のクラウドプラットフォームを日本市場に最適化したパブリック・クラウドサービス。中堅中小企業をターゲットとし、「使いたいときにすぐ使える」「高い安定性とセキュリティ」「柔軟なリソース変更と料金体系」の3つのコンセプトを追求する同サービスについて、同社の担当者に聞いた。
日米のNTT Comグループ企業によるクラウドサービス
NTTPCコミュニケーションズ(以下、NTTPC)が2010年10月に販売を開始したクラウド型のホスティング『WebARENA CLOUD9』(ウェブアリーナ クラウドナイン、以下CLOUD9)は、NTT Comグループの米国企業Verio社とのコラボレーションで実現したサービスだ。
ただし、Verio社のクラウドプラットフォームを採用したからといって、データセンターが米国にあるわけではない。国内データセンターに、Verio社のプラットフォームを設置し、NTTPCが日本ユーザー向けに日本語対応コントロールパネルと、独自にカスタマイズしたOSイメージを提供している。
Verio社とのコラボレーションの狙いについて、データセンタ事業部サービス開発部の安松氏は、「弊社の独自開発を考えていたのですが、グループ会社であるVerio社が既に米国の高いクラウド技術を持っていましたので、これまでとは違うスキームで挑戦することにしました。弊社では、日本のお客さまにあったサービス開発ノウハウを持っていますので、お互いのいい点を活かして相乗効果を生むようなサービスにしたいと思って取り組んでいます」と説明した。
安定性と柔軟性を兼ね備え、すぐに使えるクラウド
CLOUD9は、「使いたい時にすぐに使える」「高い安定性とセキュリティ」「柔軟なリソース変更と料金体系」の3つのコンセプトのもと、サービス内容が練られている。
すぐに使えるように、申し込みから利用開始までのプロセスを短縮できるよう自動化している。クレジットカードでの支払いであればオンラインサインアップして最短3分で利用可能となる。「他社のサービスでは、申し込みから利用可能になるまで数日かかる場合も多いですが、申し込みからすぐに使えるというのは他にはないメリットの一つです」と安松氏。
安定稼働への配慮では、サーバー故障時など代替サーバーへの移行を自動で行う『フェイルオーバー機能』(図1)や、リソースの利用状況に応じて空きリソースのあるサーバーに自動移行する『マイグレーション機能』(図2)が標準で提供されている。負荷に応じてリソースを拡大・縮小できるオートスケールアップやオートスケールアウト機能の提供も今年の春以降のリリースとして計画を発表している。
元来、WebARENAのホスティングサービスは、安定稼働という点で定評があり、NTTグループ運用の信頼感がある。データセンタ事業部 技術開発部の萩原氏は「WebARENAでは、動画変換やイベントのチケット販売、テレビ番組やスポーツイベントと連動したサイトなど、特に急激なアクセスを集めるコンテンツの運用経験が多数あります」と実績を語った。
その理由の一つとして、ユーザーは回線を高く評価しているという。「WebARENAのサービス全般的にネットワークの帯域が十分確保されています。実は、日本にあるほとんどのインターネット回線のスピード計測サイトは弊社でホスティングしています。ネットワーク帯域という点でも評価されていると思います」とも語った。
さらに、セキュリティ面の配慮から、サーバーは、プライベートネットワークに設置され、「ポートマップ設定機能」によって必要なポートだけを開放する設計となっている。「これまでの経験やお客さまの声からコントロールパネルを設計しました。ポートマップ設定もその一つです。セキュリティを担保するため、お申し込みしたてのお客さまがサーバーを作成しても、外向けのポートが開いていないため、最初はサーバーへのログインはできません。sshdをスタートさせたり、開放するポートを設定したりといった操作をコントロールパネルから行えるようになっています」と萩原氏。
リソース面では、ディスクやメモリ、CPUといったリソースは、コントロールパネルからオンデマンドで即時変更可能となっている。基本サービスの仮想マシン構成はディスク容量50GB、メモリ1GB、CPU1コア共有となっており、ディスク容量1000GB、メモリ16GB、CPU4コア共有まで必要に応じて利用できる。これだけ容量があると専用サーバーからの乗り換えニーズにも応えられる。
リソースの仕様決定の方針について萩原氏は、「例えば、メモリ512MB、CPUが0.5個など、あまりに小さな構成で始めるつもりはありませんでした。運用時にお客さまがリソースについて気にしなくてもいい最低ラインから始められる構成になっていると思います。また、最大値はできるだけ広げて、パフォーマンスを出せるようにしました」と語った。
料金体系は、初期料金5,250円(税込)と、前述の最小構成による月額基本料金が4,800円(税込、クレジットカード支払いの場合)。これに、ディスク容量/メモリ/CPUのリソース変更料金などのオプション料金が加算される。月の途中でリソース変更を実施した場合でも、サイズ変更し使った日数分だけ日割りで課金されるようになっている。
なお、CLOUD9では他社のクラウド型ホスティングサービスでは有料となるデータ転送量への課金がない。萩原氏は「アクセスに応じてリソースを拡大・縮小できるのがクラウドのメリットの一つですが、転送量が従量課金だと、ユーザーにとっては費用負担が増える場合もあると思います。CLOUD9では転送量は無料で無制限なので、回線の品質とともにアピールできるポイントです」と語る。
日本の慣習に合わせながら、更なる進化を続ける「CLOUD9」
CLOUD9の概要について紹介したが、本サービスは進化の途中だ。現在発表されている開発ロードマップでは、今年の春以降に「バックアップ・リストア機能」「オートスケールアップ機能」「時間単位の従量課金と最大料金設定」を、秋以降に「ロードバランシング機能」「オートスケールアウト機能」「サーバー追加増設・複数台構成対応」をそれぞれ追加するとしている。
「オートスケールアップへの対応にあわせて、オプションのリソース変更料金に時間単位の従量課金を導入する予定で最終調整しています。課金が青天井とならないよう、お客さまで最大料金を設定できるようにする予定です」とデータセンタ事業部 技術開発部 寺田氏。
今後もVerio社との間で開発・運用が続いていくCLOUD9だが、今回NTTPCとしては初めてとなる、米国企業との協業で苦労した点も多い。主なものは、日米でのサービスに対する考え方の違いだ。例えば、ユーザーが設定を誤ってサーバーにアクセスできなくなった時のため、sshサービスの設定を初期化する機能をコントロールパネルに追加したいとリクエストしても、最初は理解してもらえなかったという。
寺田氏は「Verio社では、『間違ったら、OSを再インストールすればいい』など、いかにもアメリカ的な印象です。日本のお客さまはシビアで、たとえ一部でも使えない機能があるとお叱りを受けるのですが、アメリカでは、『それが使えなくてもこっちが使える』と、プラスの面だけを見る傾向にあるようで、こうした意識合わせをするために、お互いの考えをすりあわせながら進めてきました。もちろん、Verio社は弊社にないノウハウを持っています。特に大規模の運用ノウハウは凄いです。開発に関しても、問題が発生したとき、私たちが想像もつかないような解決法を提案してくれることもあります」と話した。
CLOUD9の名称は、英語の慣用句「on cloud nine(天にも上る心地、至福の)」といった意味を込めている。先端のクラウド技術を日本市場向けにアレンジしたCLOUD9は、更なる高みを目指し、よりよい機能やサービスを向上していく。今後に期待の持てるクラウドサービスだ。
なお、NTTPCでは、2011年2月21日から4月28日の間、初期料金無料および月額基本料金が最大で3か月分無料になる「サーバーお乗換えキャンペーン」を実施中だ。詳しくは、キャンペーンサイトを参照のこと。また、使用環境を試してみたい方には、基本機能そのままで、10日間無料のお試しサービスもある。
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