Mobile Future Conferenceと題されたAトラックの第1セッションには、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の代表取締役社長 兼 CEO 南場智子氏が登壇。DeNAの成長の軌跡を紹介するとともに、将来の展望やエンジニアへの期待について語った。また後半では、同社取締役 兼 COOの守安功氏が具体的な施策について説明し、デモンストレーションを行った。
モバゲータウンでの急成長が記憶に新しいDeNAだが、設立時より2~3年ごとに立ち上げてきたショッピングモールやモバイル広告といった他事業も確実に成長し続けている。南場氏は「新規事業を立ち上げながら乗り換えるのではなく、腰を据えて取り組み、何本も柱を持つ企業となることが目標。モバゲーだけでなく、数年後はまた別の事業でも注目されていたい」と展望を語った。
そしてDeNAの設立時からのさまざまな取り組みを振り返りながら成否について解説を行った。まず「ビッダーズ」のシステムを外注して失敗した苦い経験を披露。この際の猛省が起点となって、DeNAは高い技術力を持つ開発集団へと大きく転換する。そして、ユーザー満足度向上のために進出したショッピングモールでは、ビジネス向けビジネスの厳しさを学び、黒字化を遂げた後、モバイルという新天地で「モバオク」をスタート。エンジニアからの提案でユーザーの快適さを重視してビッダーズから独立させ、大きな成功を収めた。さらに事業部が自発的に始めた「ポケットアフィリエイト」や、実質的には南場氏の手放しで進められた「モバゲータウン」など、エンジニア主導型でDeNAが成長する様子が紹介された。
エンジニアに対するDeNAのスタンスが強く感じられたのは、社運をかけた「モバまち」での失敗を糧にして、「怪盗ロワイヤル」で大成功を収めた大塚氏のエピソードである。後を引き継いで半年で完璧なソーシャルゲーム開発部隊を作り上げたという精鋭チームに対する誇りも伝わってくる。
エンジニアが成果を出せる環境を作るために、南場氏は「よく話を聞く」「大きく報いる」などを挙げる。その言葉からは、フラットな円型の組織であることが伺い知れる。そうした南場氏率いるDeNAが「スマートフォン」×「ソーシャル」×「ゲーム」というかけ算のなかでどのように闘っていくのか。南場氏は「世界に日本の優れたエンジニアの力を見せつけていきたい」と意気込みを熱く語った。
グローバルなメディア展開を実現するDeNAの新たな開発環境とは
続いて、取締役 兼 COOである守安功氏が登壇し、より具体的なDeNAの戦略について語った。
その戦略とは、世界に展開していく「クロスボーダー」そして、PCや携帯電話からスマートフォンへと広げる「クロスメディア」の2つだ。これまで閉鎖的な携帯電話の市場で成長してきたDeNAだが、スマートフォンの本格的な市場投入により、日本も世界と同じ基盤が整いつつある。そこで海外からの進出がより先に、日本から世界に打って出ようというというわけだ。
そのための開発基盤も整備がなされつつある。昨年買収を行った米国のngmoco社が開発しているngCore SDKは、1ソースで携帯電話とスマートフォン両方に対応する。また、プラットフォームAPIについては、日本、米国独自の部分をもつLocal APIとともに、双方にまたがるCommon APIを提供。今後はCommon部分を増やすことに注力するという。なおngCoreは基本的にはJava Scriptで開発、各OSのネイティブ機能に直結し、差分は吸収されるため開発しやすい。短時間で世界共通のゲームが開発できるというわけだ。当然レベニューシェアなども踏襲していく。
なお、国内では12/15より『モバゲータウン for Smartphone』 ブラウザ版の提供を開始。3月には3つの独自開発ゲームがリリースされるという。その1つである忍者をモチーフにしたゲームがデモンストレーションとして紹介された。