活況を呈すジオメディアサービス、その理由は?
ジオメディアの活況を支えている要因の1つに、デバイスの多様化が挙げられる。特に、スマートフォンの爆発的普及は、外出先など屋外でのネット利用時間を大幅に増加させた。これは、ヤフーのログを見ても明らかだと村田氏は説明する。
また、位置情報取得技術の進化もある。GPSに関しては、もともと日本ではかなり早い時期(2002年)から携帯電話に搭載されはじめ、今日ではほとんどの携帯電話やスマートフォンの標準的な機能となった。さらに、施設内で位置情報を取得できるIMES(Indoor Messaging System)や、RFIDタグに位置情報を持たせるNFC(Near Field Communication)など、屋外だけでなく屋内でも位置情報を容易に取得できる技術も普及し始めている。
ジオメディアサービスを提供するプレイヤーも多彩だ。foursquareやコロプラはもちろん、FacebookやTwitter、mixiといったメジャーなSNSも、位置情報を活用したサービスを展開。ヤフーでも、Yahoo!地図やYahoo!グルメなど人気の地域情報系サービスを統合・強化し、今年6月より新たに「Yahoo!ロコ」としてサービスをスタートした。
技術的に位置情報を容易に取得できるようになったとはいえ、これだけ多くのプレイヤーがジオメディアに注目するのには、他にも大きな理由がある。そのキーワードとして村田氏が挙げたのが、「O2O(Online to Offline)」だ。
O2O(オー・ツー・オー)とは、オンラインの情報がオフラインの商業活動に影響を及ぼすという概念を表す言葉。確かに、オンライン情報の中でもリアル世界の店舗や施設などを含む位置・地理情報は、「現在地周辺で好みに合った飲食店を検索して、食事に行く」といったように、オフラインの購買活動などに直結するケースも多いだろう。
みんなで入れて、みんなで使うプラットフォーム「YOLP」
実際にジオメディアサービスをつくる際には、「2つの大きな課題がある」と村田氏は語る。1つは、ジオ系データの調達。そしてもう1つが、開発負荷の軽減だ。
ヤフーでは、この2つの課題を解決するためのオープン・プラットフォーム「Yahoo! Open Local Platform(YOLP)」を用意している。YOLPは、地域・生活情報の流通を目的とした情報基盤であり、電話帳(法人)データ約600万件、ランドマークデータ約80万件ほか、パートナーであるマクドナルドの店舗データ、近畿日本ツーリストの宿泊データなど、1,000万件以上の地域情報を格納している。情報の豊富さだけでなく、“鮮度が高い”ことも大きな特徴だ。
「パートナーと直接契約をしてデータをご提供いただいているので、たとえばマクドナルド様の店舗データなら、新店舗も非常に早いタイミングで反映される」(村田氏)
また、データだけでなく、各種APIやiPhone/Android用のSDKなども提供。これにより、開発生産性の大幅な向上が期待できる。一方、YOLPにデータを提供するパートナーにとっては、自社のデータが地域情報としてヤフーの中だけに限らず、他のサービスにも幅広く流通するというメリットがある。
村田氏によれば、「みんなで(情報を)入れて、みんなで使う」というのが、YOLPの基本コンセプト。もちろん「みんな」の中にはヤフーも含まれており、3・11の東日本大震災直後には、非難区域マップや計画停電マップなどを、YOLPを活用して次々と立ち上げたという。
「プラットフォームがあるからこそ、緊急時に必要なサービスを迅速に立ち上げることができた。皆さんも今後、何らかの形で位置情報と連携したサービスをつくる際には、ぜひ効率のよいサービス開発のためにYOLPをご活用いただきたい」と最後に語り、村田氏はセッションを締めくくった。