パネルディスカッション
第1部は、カンファレンスの予算やスポンサーの獲得方法といったカンファレンス運営にまつわるテーマで、パネルディスカッションが行われました。パネリストの方々は、大規模カンファレンスの運営に携わっておられる皆さんです。
氏名 | 運営コミュニティ |
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法林 浩之氏 | 日本UNIXユーザ会/LLイベント実行委員 |
牧 大輔氏 | Japan Perl Association代表理事 |
田中 康一氏 | PHP Conferenceコアスタッフ |
Jxck氏 | 東京Node学園祭実行委員 |
清水川 貴之氏 | PyCon JP 2012副座長 |
藤山 裕子氏 | 日本マイクロソフト株式会社コミュニティイベント支援担当 |
今津りこ氏(司会) | PyCon JP等スタッフ |
カンファレンス運営の動機はさまざま
パネルディスカッションの冒頭で、まずカンファレンスに対する想いや目的について、登壇者の皆さんが述べました。「コミュニティやソフトウェアといった先輩達が作り上げたもので、日々食べています。それに対して自分は、カンファレンスの運営といった形で恩返ししたい」というのは、日本UNIXユーザ会やLLイベントを運営する法林氏。一方で東京Node学園祭実行委員であるJxck氏は、「単純に面白そうだからという気持ちでカンファレンスをやっています。海外の凄い人を呼んで話を聞きたいといった、同じ考えを持った人達で集えたら良いなと考えています」と言います。
参加者の歩留まり問題
カンファレンスの参加人数をどう決定しているか、という話題がでました。YAPC::Asia Tokyoを運営する牧氏は、「面白いイベントで、なおかつ1000人呼びたいとまず考え、予算やスポンサーをつけてトップダウンで決定しています」といいます。東京周辺で1000人規模のカンファレンスを開催するとなると会場が限られるそうで、選定に大変苦慮するそうです。
また最近、IT系のイベント運営で話題になることが多い「参加者のキャンセル」に関する話題にもおよびました。「過去の経験から、約30%の当日キャンセルが発生すると予測しています」とPyCon JP副座長の清水川氏。さらに「募集数は変わらないのに、年々キャンセル状況が悪くなっているという体感があります」と、Jxck氏が続いて発言しました。前回の東京Node学園祭では無断キャンセルが多発し、赤字が発生する事態となったようです。さらに「無料開催でのカンファレンスで20%、事前支払い制の有料カンファレンスでも10%のキャンセルがあります」と、日本マイクロソフト株式会社の藤山氏からの説明がありました。カンファレンスの有料・無料に関わらず、10%から30%のキャンセルが発生するようです。
カンファレンスの参加費と参加価値
そして、カンファレンスの予算について話がおよびます。
予算規模はカンファレンスによって大きく幅があり、一番少ないPHP Conferenceでは80万円+ネットワーク費用、一番大きいYAPC::Asia Tokyoでは1200万円の予算が計上されている、と紹介されました。これらの予算は、スポンサーからの支援と参加者が支払う参加費によって賄われているそうですが、その参加費も、PHP Conferenceや東京Node学園祭の無料からYAPC::Asia Tokyoの3,500円(平均)と、イベントによって幅があるようです。
さらにこの参加費の決め方について、清水川氏は「昨年に限ればスポンサーからの支援で運営費がまかなえる状況でした。単純に言えば入場料無料でも良いのではという話になります。しかしながらカンファレンスに参加することで、交流がはかれる、直接質問ができる、熱気を直に感じられるといったことを体験してもらえます」と言い、それらの価値を考えた上での金額設定になっているようです。
またここで、参加者として会場に来ていた日本Rubyの会理事である角谷信太郎氏が「なぜRubyKaigi 2013の参加費が大幅に値上げされたのか(通常35,000円)」と質問を受ける場面もありました。角谷氏は「自分たちが実現したいRubyKaigiを開催したり、海外で開催されるRubyKaigiと格を合わせたり、海外の方々へもRubyの良さを伝えたいという意味で、参加費を決定しました。高額な参加費だとしても価値を感じている人に参加してほしいと考えています。また現在では、地域RubyKaigiが各地で無料、もしくは無料に近い金額設定で開催されているので、そちらでもニーズをカバーできていると考えています」と説明しました。
参加者同士の交流場所を提供する悩みと工夫
会場に関するトピックでは、ネットワークの問題が話題になりました。「LLイベントではLL NOC(Network Operations Center)チームという専門のネットワーク部隊を編成し、ネットワークに熟知しているメンバーに設計・構築を行ってもらっています」と説明する法林氏。各カンファレンスでもネットワーク提供をどうするのかは、頭を抱える問題の一つであるようで、この取り組みを賞賛する声が会場であがりました。
懇親会については、飲食可能な会場を選定する苦労が共有されました。「会場の収容規模が増えると豪華な会場が増えます。そうすると飲食できる会場は減るし、飲食可だとしても結婚式といったパーティー向けのメニューになってしまいます。サーモンマリネといった料理ではなく、我々は炭水化物と揚げ物とビールといったものが食べたいので難しい」と牧氏が発言すると、笑い声が会場にどっと沸きました。
また、PHP Conferenceコアスタッフの田中氏も懇親会での工夫を紹介しました。「懇親会の会場を大きめの場所3か所にわけて行うことにしました。登壇者は各会場に分散してもらい、参加者にその情報を提示しました。ボードで募集を行い、定員になった会場から締め切ることで、1つの会場に偏ることなくうまくいきました」とのこと。他にもPHP Conferenceでは、ランチを一緒にとる仲間を募集するための「ランチボード」を用意し、参加者同士の交流を促す工夫を施したそうです。