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Office 365入門

Office 365は導入価値あるサービスか?(2013年版)

Office 365入門 第1回


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IT管理者から見るメリット/デメリット

 前項でも少し触れましたが、Office 365導入はIT管理者の仕事を削減します。ただし、IT管理者の仕事自体はなくなりません。DNS設定から各クラウドサービスの初期設定、定期的に発生するメンテナンス作業など、やることは多くありますが、PowerShellを用いた管理が中心となり、スクリプトをまとめて用意しておくことができるので、従来よりも管理工数を削減できるでしょう。

 IT管理者から見た場合のOffice 365導入メリットを簡単にまとめます。

  • 利用者に応じたサーバーのサイジング計画やサーバーリプレース計画や作業が不要
  • サーバー自体のメンテナンス不要
  • SLA99.9%(オンプレミスでこれを担保するには冗長性などを考慮して構成する必要があり管理工数も高くなる)
  • 各サービスのバックアップ不要
  • Office製品のライセンス管理不要
  • 高品質のサービスリクエストが利用可能

 主に物理サーバー周りの管理はIT管理者の悩みの種になりがちだと思います。各クラウドサービスの設定のみ意識すればいいというのも、嬉しい点になるのではないでしょうか。

ISO27001維持、更新も問題ない!

 著者の所属している会社でも業務効率化やセキュリティ対策、ISO27001(ISMS)の継続維持のためにオンプレミスがいいのか、クラウドがいいのかと検討が進みました。クラウドの導入がISO27001取得や維持できるかどうかということに対していまだ懐疑的な企業もあるとは思いますが、Office 365が実際に運用されているデータセンターでは定期的にISO27001の審査を受けています。そのため、Office 365が自社のISO27001取得の弊害となることはありません。むしろ、自社でサーバーを管理するよりもよほどデータの堅牢性や完全性、可用性が担保されるといえます。

Active Directoryがあれば、なお管理しやすい仕組み

 Office 365は、クラウドサービスのため、ブラウザ越しで、アプリ越しで利用する際にはサインインが必要です。通常のWebサービス同様に、メールアドレスとパスワードを入力して利用することになります(図3)。

図3 Office 365のサインイン画面
図3 Office 365のサインイン画面

 Office 365の強みの一つとして、シングルサインオンの一つ前の段階が提供されています。それはズバリActive Directoryの同期です。IT企業であれば、大抵はActive Directoryが導入されているのではないでしょうか。Office 365は、オンプレミスのActive DirectoryとWinodws Azure Active Directoryとで連動しています。Windows Azure Active Directory側にデータを送るだけでWindows Azure Active Directory側の設定はオンプレミスのActive Directoryには反映されません。ユーザーとグループの管理同期ならば5分程度で同期がとれるため、一元管理も容易です。

 逆に、オンプレミスにActive Directoryを用意していないエンドユーザー企業では、Windows Azure Active Directory上にユーザーやグループを作成できます。一つ一つ手で入力することもできますし、CSVで一括登録もできます。あくまで、オンプレミスのActive Directoryがある場合は、より楽に管理ができると考えておくとよいでしょう。

あえて挙げるOffice 365のIT管理者から見たデメリット

 ここまで、メリットばかりを記載しましたが、あえてOffice 365のデメリットを記載します。著者が考えるデメリットは以下の2点です。

  • オンプレミスにバックアップが取れない
  • 各サービスのバージョンアップの遅延はできるが回避はできない

 ISO27001など会社のセキュリティポリシー次第では、『クラウドサービスでも念のためバックアップを取得すること』などの要件が策定されていることもあると思います。しかし、Office 365の各サービスはあくまでSaaSの一種なので、各サービスをオンプレミスにバックアップをとることはできません。

 続きまして、バージョンアップについてです。日本の企業では、バージョンを固定してガリガリカスタマイズを行う傾向が強いと思います。Office 365はメリットで記載したように、サーバー周りでの細かな管理は不要です。つまり逆に言うと、ユーザーが現行バージョンを維持したいと考えていても、自動でバージョンアップされます。遅延自体はアップグレード通知が来てから最大60日程延長できますが、アップグレードは回避できません。IT管理者はそのことを理解したうえで、カスタマイズ(SharePoint Onlineのみですが)を進めるとよいでしょう。

まとめ

 今回はOffice 365とは何かを中心に、導入する際のメリットとデメリットを重点的に紹介しました。著者の所属している会社ではOffice 365導入から1年が経ちますが、感覚として、Office 365は社員全員が移行前に比べて満足度が高いです(以前の環境が極端だったというのはありますが)。IT企業は往々にして自社内のインフラは後回しにしがちです。Office 365は自動でメンテナンスされ、常に最新の環境を維持してくれます。

 次回はOffice 365の管理者画面とOffice 365を導入する際の初期設定周りについて紹介予定です。お楽しみに。

参考文献

修正履歴

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この記事の著者

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

WINGSプロジェクト ナオキ(ナオキ)

WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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