コスト面でのメリット/デメリット
ここからはOffice 365を選択した場合の情報を記載していきます。最初に、中小企業にありがちな状態をいくつか列挙してみます。
- メールサーバーをオンプレミスで立てていて一人一人のメールサーバー容量に制限がある
- メールサーバーがPOPのみの対応
- 施設設備予約が共有ファイルサーバー上のExcelなどで実施されている
- 情報共有サイトが一切ない
- Web会議システムや在籍情報管理ツールがない
- Officeのライセンス管理ができていないまたは管理が煩雑である
上記すべてに当てはまる場合はOffice 365のE3プラン。いくつかの項目が当てはまる場合は該当する項目のOffice 365の個別プランを検討してみるとよいでしょう。
ただし、Office 365を新規に導入する際に注意する点は、以下のどちらかになるかと思います。
- 置き換え費用
- 追加費用
すでに社内でExchange ServerやSharePoint Server、Lync ServerやOffice ProPlusが導入されている場合、会社に提案するのは不可能ではありませんが、少し困難です。また、Web会議システムや情報共有サイトを保有していない会社の場合、今まで計上されていない費用が追加で計上されることになります。こちらも追加のコストを支払う価値があるソリューションであるかどうかを正確に見極めて資料を用意し、経営層に訴えることが重要です。
著者が自社に対して提案した手法
ここで、著者が自社に対して提案した際の手法を一例として紹介します。著者の所属している会社は以下の社内環境でした。
- メールサーバーをオンプレミスで立てている(Exchange Serverではない)
- メールサーバーがPOPのみの対応
- 施設設備予約が共有ファイルサーバー上のExcelなどで実施されている
- 情報共有サイトは無償のものをオンプレミスで構築
- Web会議システムをオンプレミスで立てている(Office 365導入一年前に数百万かけて新調済)
- Officeのライセンス管理が煩雑で、最新バージョンがリクエストに対して不足がちで仕方なく旧バージョンを使用してもらう
この環境の場合以下のようなデメリットが考えられます。
- メールサーバーのバックアップを取らずにいたため、社員一人一人がメールデータのバックアップ取る必要がある。バックアップが無い場合、端末破損時にすべてのメールデータが消える
- 施設設備予約は共有フォルダ上のExcelファイルで実施していたため、排他ロックがかかり予約がスムーズにできない
- 導入したWeb会議システムの仕様ですが、Web会議システム用のIDを予約する必要があり、多用するほど施設設備予約が使われ排他ロックが多くなりストレスがたまる
- ファイルサーバーにある重要なデータのバックアップとリストアを強く意識する必要がある
- Officeが全社的に見て複数バージョンが混在し、(ソフトウェア資産管理ソフトを導入はしていますがそれでも)バージョンをまたぐライセンス管理が非常に煩雑
幸いにして自社ではExchange Server、SharePoint Server、Lync Serverはありませんでした。また、Officeは新バージョンが出るたびにボリュームライセンスを社員の1/5程の数を購入し、業務上必要な方にのみ提供しているということで、社内のOffice環境はバージョンの統一も取れず管理が煩雑な状況でした。
このような状況を打開するため、上記すべての状況を丸ごと解消できるOffice 365の導入を考え提案しました。提案時に見るべきは、オンプレミス構築をした場合の10年程のコスト算出と、Office 365の導入によるコスト比較です。オンプレミス構築した際は冗長構成のサーバー代、バックアップのNAS代、UPS代の他に年々増加する社員分のライセンス上乗せ、Exchange Serverなどのライセンスがかかります。ライセンスは単品がいいのか最新バージョンにバージョンアップできるSoftware Assurance(SA)がいいのかなど、実際に金額を調べてグラフ化してみると説得力が増しやすいです。実際に著者が作成したExcelグラフは図1になります。
オンプレミス環境の場合電気代や管理費用、サーバーを設置する場所代など目には見えづらいコストも上乗せされます。図の特徴として一時的に出る費用がずば抜けて高いか、契約中は他のクラウドサービス同様に一定のコストが計上されるかの違いが一目で分かります。また、よく話題に上がることですが、オンプレミスの場合は資産となり、減価償却計算なども必要となってきます。そのため、必要なだけ契約して社内にモノが存在しないクラウドサービスは、経費としてのみ考えることになる点も説明が必要でしょう。
この辺りを一通りクリアすると、大抵の中小企業の場合ではOffice 365の方が導入コストが削減できるというデータが出てくるはずです。
意外とあなどれないOffice 365 ProPlusの5ライセンス
なお、著者個人の感覚ではありますが、Office 365はエンドユーザーはもちろんですが、本記事を読まれるようなIT企業こそ入れるべきだと強く感じています。一番大きな理由としては、Office 365 ProPlusのインストール数です。通常ボリュームライセンスで購入した場合Officeは1ライセンスで、メイン端末(デスクトップとノート端末問わず)と、ライセンス付与者が使用するノート端末(2台目はノート端末限定)の計2台インストールして使用することができます。このボリュームライセンスはダウングレード権もついてはいますが、IT企業において仮想環境も含めて複数台端末を保有している社員が居るのは、特に珍しいことではないでしょう。ボリュームライセンスの2台制限(2台目はノート端末限定)ではOfficeライセンスが足りないという状況も、決してありえない話ではありません。また、ボリュームライセンスの考え方はソフトウェア資産管理ソフトで反映されないため、最終的にはIT管理者が端末管理台帳などと照会しながらラインセンス管理をすることになります。この照会はIT企業であれば端末台数が非常に多く、中々いい時間を奪われます。
Office 365のOffice 365 ProPlusは、前述のとおり基本的に最新版のOffice限定ですが、一人あたり5ライセンス付与されます。Office 365 ProPlusのインストールはOffice 365のポータルからEXEをダウンロードして実行しますが、5ライセンスの管理は個々人で行われ、5台を超えてOfficeをインストールしようとした場合、すでにインストールしている5台の端末名が表示され、使用しない端末をユーザー自身が選択します。つまり、Officeに関してはIT管理者が資産管理をする必要もなくなります。ユーザーも自由にOfficeをインストールできるようになるので、双方にとって非常に有益です。