「スマホサービスに最適なUXを考えるアプローチ方法」(ヤフー瀧さん)
UXデザイナーの瀧さんは、社内で「デザイン思考」を推進する活動を行っているそうです。今回の発表では、スマートフォン向けのサービスに適したUXを考える際のアプローチ方法について、実際の体験談を交えながら解説しました。
デザイン評価手法の一つ「アクティングアウト」
「アクティングアウト」はデザイン評価の方法の一つであり、アイデアを実際に利用する環境で体験してみることで、アイデアを検証できたり新たな発見を得られたりします。スマートフォン向けのサービスは利用者の環境がさまざまであるので、特に有効だそうです。
「アクティングアウト」の活用事例
瀧さんのチームでは、おでかけサポートアプリ「way」(現在は提供終了)を作るときにアクティングアウトを活用したそうで、その時のプロセスが説明されました。まず、最近印象に残っている「おでかけ体験」を文章にして、その中から心に残る体験につながっている要素を抽出します。次に、その要素を元に理想のUXのコンセプトとストーリーボードを作成します。そして、アクティングアウトを実際に体験して、アイデアを検証したり、新たなニーズがないかを探したりします。
こうした流れでストーリーを作り、オフィスの外に出てアクティングアウトを実施したそうですが、「事前に考えておいたアイデアはすべてイマイチだった」と振り返っていました。むしろ、アイデアを検証している時以外の、「自由に寄り道をしている時間帯」のほうがみんな自然に楽しんでいたそうです。
その時間帯に見られた行動パターンについて、お店の商品に興味を示してショーウィンドウに張り付いているような「接近隊」、まったく興味を示していない「離れ隊」、「接近隊」と「離れ隊」の間ぐらいの「中間隊」の3つに分類していました。また、「同じ人でも状況によって行動パターンが変化する」ということも分かったそうです。
こうした発見をもとにUXのコンセプトをブラッシュアップしたところ、「ユーザーの行動の選択肢が適切に増大するような 想定内外の『揺らぎ』を提供するサービス」というものになったと述べました。UXのコンセプトがまとまった後にUIに落としこむ作業が行われました。「(ある時刻における、)選択肢の中で揺らぐUX」については、現在地周辺のお店やイベント情報を流す(たくさんの選択肢の中で揺らぐ)という機能を提供することで、「行動パターンの変化の中でゆらぐUX」については、行動パターンに合わせて、情報を切り替えられるUIにすることで実現させたそうです。
ユーザーを知るための3つのアプローチ
サービスのユーザーを知るためのアプローチについて、以下の3つを挙げました。
- 自らがユーザになって体験
- ユーザーを観察する
- ユーザーから聞き出す
「アクティングアウトは上記の1と2を組み合わせて同時に行うもの。ユーザーになりきって体験を楽しむ『1人称視点』と、一歩引いて状況を分析する『3人称視点』を組み合わせることで、ユーザーも気づいていない未知のニーズを発見することができる」とまとめました。
参考資料
- 『UXデザイン実践のために押さえておきたい大事なこと』(schoo)
- 『ヤフーのモノづくりにデザイン思考を取り入れる~第4回ユーザーの価値観を探るインタビューとは?~』(Yahoo! JAPAN Creative Blog)