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New Relic、AI時代の「ビジネスオブザーバビリティ」戦略と技術支援体制を発表

 オブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームを提供するNew Relicは、新社長就任会見および事業戦略説明会を、5月21日に開催した。同社は、従来のアプリケーションパフォーマンス管理(APM)を中心としたシステム監視の領域から一歩進め、システムの稼働状況とビジネスの重要業績評価指標(KPI)をリアルタイムに連動させる「ビジネスオブザーバビリティ」の確立を新たな事業方針として掲げた。AI時代における複雑なシステム運用を支えるプラットフォームとして、日本市場での成長を加速させる戦略が示され、ユーザー企業であるオリックスやLIXILにおける具体的な実践事例が紹介された。

 説明会の冒頭では、新たにNew Relic株式会社の執行役員社長に就任した古舘正清氏が登壇し、今後の日本市場における事業方針と成長戦略を説明した。古舘氏は、ITの歴史においてメインフレームの垂直統合型モデルから、クライアントサーバー、ハイブリッドクラウド、そしてネットワークやデータのセキュリティ領域まで広く経験してきたキャリアを持つ。

New Relic株式会社 執行役員社長 古舘正清氏
New Relic株式会社 執行役員社長 古舘正清氏

 同氏は長年の経験から「ITインフラがどれだけ経営に役立っているのか」という疑問を常に抱いており、アプリケーションとインフラが分業化された結果、ITと経営が分断されている現状を課題として指摘。その上で、オブザーバビリティプラットフォームに出会った際、これが経営に直結するインフラプラットフォームになると直感したことが、今回New Relicに参画した理由であると明かした。

 古舘氏は、AI時代において生成AIによって構築されたアプリケーションが急増し、インフラの運用もAIを用いた運用(AIOps)によってコントロールされるようになる中、システム運用の前進にはオブザーバビリティが不可欠であると述べる。さらに、これまでの同社の成長を牽引してきた「DX時代における、アプリケーションの問題特定と修復」という役割を超え、これからはシステムKPIとビジネスKPIをつなぎ、ビジネスの損失を最小化する役割を果たす「ビジネスオブザーバビリティ」の時代へ移行すると定義した。

時代に合わせたオブザーバビリティの進化
時代に合わせたオブザーバビリティの進化

 「リアルタイム経営」とは、BIツールのように過去のデータを基に未来を予測するものとは異なり、デジタルサービスやビジネスプロセスにおいて今まさにリアルタイムで発生しているITの問題をAIなども活用しながら自動修復し、ビジネスの機会損失を最小化する取り組みである。

 古舘氏は、あるユーザー企業の最高情報責任者(CIO)の言葉として「ERPシステムのSAPが1日止まると数億円の損失が出るが、従来はそれが可視化されていなかった」という例を挙げ、このようなビジネスプロセス全体を可視化するインフラの必要性を強調。New Relicは日本国内において約48%と、トップのシェアを持っており、すでに100社近い公開事例を有している。古舘氏は今後の展望として、2030年度までに売上高を現在の2.5倍に拡大する目標を掲げ、経営層向けのオブザーバビリティ推進に向けて、CIOやCDOのコミュニティを設立すること、そしてパートナー企業との連携強化を進めていく方針を示した。

 続いて、首席エヴァンジェリストの清水毅氏が登壇し、ビジネスオブザーバビリティを具現化している最新のユーザー事例として、オリックスとLIXILの2社の取り組みを紹介した。

New Relic株式会社 首席エヴァンジェリスト 清水毅氏
New Relic株式会社 首席エヴァンジェリスト 清水毅氏

 清水氏は、現在のデジタルビジネスにおいて、システムと経営は切り離せない関係にあり、また単体のシステムではなく多様なシステムが連携している現状を示した。一方で、非エンジニア部門のメンバーはシステムについてわからないなど、システムと組織が分断されているという現状を指摘。

 このような状況において、守りの運用(IT視点)から攻めの武器(ビジネス視点)としてのオブザーバビリティへパラダイムシフトするためには、エンジニア部門に限定されたツールとして監視を行うのではなく、ビジネス視点や顧客視点を持ってユーザー体験や事業貢献度を可視化し、非エンジニア部門である営業やマーケティング、カスタマーサクセスがデータを活用できる状態を作ることが重要であると述べた。

 清水氏が最初に紹介したオリックスの事例では、独自の生成AI-OCR技術を活用した文書管理サービス「PATPOST」の事業においてNew Relicが導入されている。同事例では、契約企業数が2000社を超えたタイミングで、顧客の利用状況やトラブルの関連性を営業担当者が把握しきれなくなるという課題に直面。これに対し、New Relicのダッシュボードを全チームで共有し、顧客ごとの利用マルチテナントシステムをテナント別にフィルターをかけて分析できるようにした。

構築したダッシュボード
構築したダッシュボード

 これにより、セールス・マーケティングチームは業種ごとのユースケースや訴求方法をダッシュボードから把握し、インサイドセールスが体験中の顧客に対して的確なアプローチを行うことで追加契約の獲得などにつなげているという。さらに、カスタマーサクセスチームは、顧客からの問い合わせに対する障害調査をエンジニアの介入なしで実施できるようになり、従来はエンジニアチームに確認して15分かかっていた調査時間が1~2分に短縮された。組織の壁を超えて共通のデータに基づいて会話ができる環境が構築され、事業成長の要として機能している。

 2社目の事例として紹介されたLIXILでは、基幹システムであるSAPを利用したミッションクリティカルなシステムと、顧客向けのデジタルセールスフロントシステムを連携させた環境でNew Relicを活用している。エンドユーザーが利用するサービスにおいて不具合や遅延が発生した際、それがフロントシステム側の問題なのか、それともSAP側のクエリの問題なのかを特定することが極めて難しく、組織やシステム間の分断が調査の難航を招いていた。

 加えて、SAPのコンサルタントとWebアプリケーションエンジニアではスキルセットがまったく異なるため、コミュニケーションの壁も存在していた。LIXILはこの課題に対してNew Relicを導入し、多層にわたるシステムを一気通貫で可視化することにより、年間トラブルシューティング時間を200時間削減することに成功した。さらに、エンドユーザーの視点でプロセス全体をフルスタックで見通せるようになり、潜在的な問題を先んじて把握する先手が打てるようになったことで、自律的に行動するエンジニア組織への変革が実現したという。

多層にわたるシステムを一気通貫で可視化
多層にわたるシステムを一気通貫で可視化

 最後に、執行役員 CTO 技術統括本部長の瀬戸島敏宏氏が登壇し、これらの戦略や事例を日本市場にデリバリーするための技術支援体制について説明した。

New Relic株式会社 執行役員CTO 技術統括本部長 瀬戸島敏宏氏
New Relic株式会社 執行役員CTO 技術統括本部長 瀬戸島敏宏氏

 瀬戸島氏は、同社が日本で活動してきたこの5~6年でオブザーバビリティの価値は急速に変化してきたと振り返る。2020年頃のクラウド普及期には、インフラからアプリケーション、フロントエンドまでをフルスタックで監視し障害対応時間を短縮することが主な価値であったが、その後デジタル競争力を高めて経営と直結させるフェーズを経て、現在はそこにAIが掛け合わさるインテリジェントなフェーズに移行している。この変化に対応するため、同社は「デリバリー強化」「ユースケース拡大」「エコシステム拡大」の3つの重点施策を展開する。

3つの重点施策
3つの重点施策

 デリバリー強化においては、単なる監視ツールの提供にとどまらず、顧客の現場に伴走するコンサルティング体制を強化する。その中核として、経営層向けにビジネスオブザーバビリティの成熟度を評価するアセスメントプログラム「ビジネスオブザーバビリティ・アセスメントサービス」を今夏リリースする。これは人、組織、投資、リアルタイムデータ活用などの観点から、現状の現在地と理想のロードマップを整理するための30問弱の項目からなるアセスメントであり、今後はパートナーと連携して顧客の価値創出を支援していく。

 また、ユースケース拡大の焦点としてSAP対応を挙げ、同社がSAP社から唯一認証を受けたオブザーバビリティソリューションを開発している強みを説明。SAP S/4HANAへの移行といった市場の大きな課題に対して、2026年2月にSAP専属の技術メンバーを採用した体制を確立し、課題の洗い出しから導入、ダッシュボード化、アラート設計までを一気通貫でサポートする体制を整えた。

 エコシステムの拡大については、日本国内にすでに4万人の登録ユーザーが存在し、ユーザーグループ「NRUG(New Relic User Group)」の登録者数も2000人を超えている強みを活かし、エンジニア向けだけでなく、アセスメントと連動した経営層(CxO)向けのコミュニティを新設することで、現場から経営までが一体となったオブザーバビリティの文化定着を目指す。

 さらに、2026年3月に発表した日本リージョン(国内データセンター)の開設について、2026年7月の利用開始に向けて予定通り順調に準備が進んでいることを報告した。AI時代においてデータのプライバシーやガバナンス、データの物理的なロケーションを重視するエンタープライズ企業が急増していることから、日本国内でデータを完結できる基盤の提供は大きな意味を持つ。

 瀬戸島氏は最後にまとめとして、これらの技術支援体制の抜本的強化により、国内の登録ユーザー数を現在の4万人から10万人へと伸ばし、システムデータが経営判断にリアルタイムで貢献する世界を支えていくと語り、発表を締めくくった。

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この記事の著者

森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

CodeZine編集部所属。

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https://codezine.jp/news/detail/24300 2026/05/22 16:20

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