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大規模クラウドERPへ進化を遂げたfreeeの挑戦とは――マイクロサービス化による品質とリリーススピードの向上、データ分析基盤を担う「巨匠」

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2017/10/16 14:00

 全自動で会計ができる「クラウド会計ソフト freee(フリー)」(以下、会計フリー)や人事労務ソフト「人事労務 freee」(以下、人事労務フリー)など、スモールビジネスに携わる人々が創造的な活動に注力することができるソリューションを開発・提供しているfreee株式会社。2012年に代表取締役の佐々木大輔氏とCTOの横路隆氏の2人で立ち上げた同社は、今や従業員数350人を超えるまでに成長。さらに今、地方に開発拠点を作るなど、プロダクトと共に企業規模も拡大しつつある。なぜ、こうした急成長が実現できたのか。その理由や創業時から掲げ続けている理念について、横路氏に話を聞いた。

スモールスタートでリリース。でも失敗だった!?

freee株式会社 CTO 横路隆氏
freee株式会社 CTO 横路隆氏

 2013年にリリースしたスモールビジネス向けのクラウド会計ソフト「会計フリー」は、現在80万社以上に利用され、500名規模以上の上場企業でも活用できるクラウドERPへと進化を続けている。freeeの共同創設者でありCTOを務める横路氏は、プロダクトの進化、組織の成長と共に歩んできた一人だ。

 「スモールビジネスは大企業と比べて、カネ、ヒト、モノ、情報の格差に加え、信頼、信用の格差もある。そのため、大企業のように思い切ったことがやりづらい側面もあります。しかも彼らはビジネスがしたいのに、事務作業で本来の業務が圧迫され、やりたいことに集中できていないケースが非常に多い。そのボトルネックをテクノロジーで解消することで、小さいビジネスが活躍できる、かっこいい世の中にしたいと思ったのです」

 そこで、まずはビジネスの根幹である会計ソフトを開発することに至った。創業は2012年7月。翌年の2013年3月には会計フリーをスモールスタートでリリースした。

 「既存の会計ソフトをそのまま模したモノではなくて、今までにない本当に業務に必要なモノを作りたいと思いました。しかし自分たちの考えたプロダクトが市場に受け入れられるかはわかりません。そこで、その検証をなるべく早く行うために、スモールスタートでリリースしました。ですが失敗もありました」

 freeeは個人事業主を含むスモールビジネス向けのプロダクト。にもかかわらず、リリース時期が確定申告の翌週にずれ込んでしまった。「もっとスモールにしてリリース時期を早めるべきでした」と横路氏は振り返る。

エンジニア自身がユーザーの課題を感じ、価値あるモノを作っていく

 現在のfreeeは、500名規模の大企業でも使えるプロダクトに成長した。大きなソフトウェアになっても、「開発のこだわりは創業時から変わっていません」と横路氏は語る。

 「エンジニアは仕様を渡されて作るだけではなく、自らお客さまの課題を感じ、お客さまの価値になると信じるモノを作る。これは創業時からの理念で、踏襲し続けることを心掛けています」

 しかし、活用するお客さまの規模が多様化したことで苦労している点もある。それは「どの規模のお客さまにとっても価値のあるモノを、どうやって作っていくか」ということだ。なぜなら、お客さまに本当に価値が届いているかどうかは検証することが難しいからだ。

 「中にはせっかく開発したのに使われない機能だったり、意図通りに使われていない機能があったりしました」

 そこでお客さまの満足度が測れるNPS(Net Promoter Score)という顧客ロイヤルティを数値化する指標を導入。オンライン上でフィードバックをもらい、点数が低いお客さまには、社員が電話をかけてヒアリングする(社長自らかけることもある)といった、一見すると泥臭いこともやっている。

 お客さまにとって本当に価値あるモノを届けるための取り組みはそれだけではない。「お客さまがfreeeをどう使っているのか、そのログをしっかり分析するための技術基盤を今整備している」と横路氏は力強く語る。データでお客さまのことを理解し、その結果をプロダクトに生かしていくためだ。

 このデータ分析基盤の整備を担当しているのは「巨匠」と呼ばれるエンジニアだ。巨匠とはfreee独自のキャリア制度で、現在の巨匠は4代目。特定の分野の技術に自信のある人が立候補し、エンジニア全員による投票で選出される。巨匠は1カ月間通常業務から離れ、何が会社にとって最もインパクトがあるか考えた上で、そのテーマに没頭して取り組むことができる。現在、データ分析基盤はその巨匠が、Digdag(データフローエンジン)やAmazon Athena(クエリサービス)、Apache Spark(分散データ分析エンジン)などを駆使して整備を行っている。

マイクロサービス化で品質とリリーススピードをさらに向上

 また、freeeはマイクロサービス化にも取り組んでいる。会計フリーや人事労務フリーなど、それぞれのソフトウェアは独立している一方で、有機的に連携している。

 「影響範囲を調べるだけでも一苦労。作業や進捗管理も属人化しやすく、開発速度も落ちてきていました。当社はまだまだこれから事業を拡大していく時期です。そのための施策としてマイクロサービス化を取り入れました」

 大きなモノを全員で開発するのではなく小さなまとまりに分け、事業として集中すべき場所に、少数精鋭で高速な開発サイクルを回していくことを選択したのである。

 DBトランザクションなどを考慮すると技術的に分割できない部分もあるため、サービスをどう分けるか、その単位の検討には苦労しているという。

 「いずれにしてもマイクロサービス化は事業の変化や速度に対応するため。Go言語やgRPCというGoogleが公開したRPCフレームワークを活用して、マイクロサービス化を進めています。gRPCの良さは強制的にAPI仕様を書かないといけないところです。サービス間のプロトコルを明文化することができます。各サービスはKPIを満たしてさえいれば作り方はある程度自由で、エンジニアに裁量を持たせるようにします」

 さらにフロントエンドのリニューアルにも取り組んでいる。創業当時から使っていた技術はBackbone.js。しかし、やりたいことを表現するにはイベントハンドリングや状態の管理が非常に難しく、「サービスが成長するにつれて、人間が認識可能な範囲を超えてしまい、開発速度が落ちてバグが増えてしまった」と明かす。そこで交通整理の意味も込めて、「Babelによる最新のECMAScript、React/Flux、Flow、Immutable.jsを活用した、コンポーネント指向のフロントエンド開発への移行を行っており、ほぼ完了しつつある」という。

世の中を変えるビジネスプラットフォームを作ることができる

 このようにさまざまな取り組みを実施しているfreeeだが、働く上での魅力とは何だろうか。横路氏がまず挙げたのは「ビジネスプラットフォームを通じて、スモールビジネスに新しい価値をつくりだせること」だ。

 「freeeは、スモールビジネスにとって本当に役立つ実用的な業務アプリケーションを提供することにより、ヒト、モノ、カネといった各社のビジネスリソースの情報を把握するプラットフォームです。そして各社がリアルタイムにどういった取引をしているかがわかるため、その情報を使って与信や信用度を算出するツールとしても活用できます。さらにfreee上から銀行振り込みができる機能など、企業活動のインフラをも提供することで、企業間取引のプラットフォームにもなりつつあるのです。このビジネスプラットフォームを活用し、金融機関などと連携しながら今までにない全く新しいサービス開発に携われるのは魅力ですね」

 2つ目は扱うデータの面白さだ。小さな会社がどのような取引をしているか、これまで誰も知り得なかったリアルタイムで正確な情報をfreeeは預かっている。例えばそれによって可能となるのが、将来のキャッシュ残高の高精度な予測だ。一説には倒産の半分が、キャッシュフローがうまくいかなくなったことによる黒字倒産だという。つまり、売り上げはあるのに資金調達ができなくて倒産しているのだ。しかし、freeeを使えばすべてのお金の流れが把握できるため、黒字倒産を防ぐことが可能になる。

 3つ目は新しいチャレンジができること。現在、採用を積極的に行っている同社では、3カ月ごとに新しいロールが設定される勢いで、既存社員、新入社員問わず、手を挙げれば誰でもチャレンジが可能だ。先述したシステムのマイクロサービス化でも、さらなる価値をユーザーへ提供すべく、経験者や技術基盤・開発基盤を作るメンバーを募集している。

 チャレンジの場はそれだけではない。毎年開催される開発合宿もその一つである。

 「合宿では丸一日缶詰になり、より良いプロダクトを作るために追加したい新機能など、日ごろなかなか取り組めないことに全員でチャレンジします。昨年もそこで挙げられた案の、約3分の1が実際にリリースされました。ReactNativeで書かれ、交通費精算機能が搭載されたモバイルアプリが生まれたのも合宿がきっかけでした」

 4つ目は多様な働き方ができることだ。

 「例えば子どもがいて早めに帰りたい場合は、7時~16時といった勤務時間にすることもできます。育児休業制度も充実しており、私自身も11月に子どもが生まれるので、1カ月間の育休を取得する予定です。すでに取得した男性エンジニアもたくさんいます」

 また、freeeでは副業を認めている。これには社員自らが起業するなどして個人事業主となった際に、自社のプロダクトを利用することを推奨している側面もある。平日はfreeeの業務をして土日に副業に取り組むエンジニアも存在する。

 そのほか、業務委託や契約社員として働くなど、多様な働き方を選ぶことができる。

さまざまな分野のエキスパートが活躍できる場所がある

 現在、第2創業期と称し、事業の拡大を積極的に推進しているfreee。その一環として、地方に開発拠点も設置していくという。「まずは大阪に開発の拠点を作りたい」と横路氏は話す。freeeでは現場のエンジニアが自ら採用業務を行う。そのため採用時の視点は「同じゴールを目指して一緒に働きたいかどうか」だ。それに加えて「技術が好きで課題解決をしたい気持ちが強い人」が求めるエンジニア像だという。

 また、開発エンジニアも約100名にまで増えたことで、データベースのプロやエンタープライズアーキテクチャのプロ、アジャイル開発のエキスパートなど、専門的な分野に長けた人が活躍できる環境が整ってきた。さらに、「機械学習エンジニアも活躍できます」と横路氏。同社では2016年6月にスモールビジネスのバックオフィス業務を人工知能(AI)でより効率化することを目的に、「スモールビジネスAIラボ」を新設した。「データを活用した機能の開発はどんどん進めていきたい」と横路氏は意気込む。例えば、記帳の効率化ができる自動仕訳エンジン、不良債権自動検知機能などはすでに実現されている。そのほか、自動消込エンジンは京都大学との共同研究から生まれ、人工知能学会でも発表している。

 「今はインターネットバンキングを利用していないユーザーにも使い始めてもらえるよう、通帳のコピーなど紙の書類を郵送していただき、当社で会計フリーにデータを入れるサービスも行っています。その工程ではOCRエンジンの精度向上にも取り組んでいて、精度が上がってくれば、お客さま自身がスキャンした画像データをアップロードするだけでデータ化できるようになるでしょう」

 freeeで働く最大の醍醐味は「技術で世の中を良くすることができる」こと。つまり自分が開発したモノで、人の働き方を大きく変えられるのだ。

 「私たちのミッションに共感し、スキルを身につけて活躍したい、今まで培った技術を生かして社会貢献したいといった想いを持っているなら、ぜひ、私たちの仲間になってほしいです」

 これから立ち上げを予定している大阪の開発拠点は、立ち上げのスタートアップメンバーとしての採用となる。

 「お客さまにとって、本当に価値があると心の底から信じられるモノを開発し、一緒に会社を大きくしていきませんか」

freeeでは一緒にスモールビジネスを盛り上げていくエンジニアを募集中!

 freeeでは様々なポジションにてエンジニアの募集をしております。興味を持っていただけましたらまずはオフィスへ遊びに来てくださいね!

 以下求人もご参照ください。

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著者プロフィール

  • 中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

     大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

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