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「PyCon JP 2018 ひろがるPython」登壇者座談会 ~わたしのPythonのひろげかた~

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2018/09/01 14:00

目次

コミュニティへのひろげ方

――続けて、外へのひろげ方について伺います。どのようなコミュニティ活動をされてますか?

鈴木:以前「Effective Python読書会」を開いたことがあったのですが、コミュニティ運営の大変さを思い知らされました。まず、告知しても人が集まらない。その次は場所をどうするかという問題に悩みました。当時は公共施設を借りていましたが、場所代もかかるし手続きも面倒でした。結局5,6回開いた後は続けることが出来ませんでした。

中川:私は、Python mini Hack-a-thonやPythonもくもく会に参加しつつ、去年から「Pythonもくもく自習室」というもくもく会を主催するようになりました。職場の移転をきっかけに土日でも会社のスペースを使えるようになったので、自分で開催ページを立てて、人集めをして、数か月繰り返したらどうなるんだろうというテーマの下、取り組んでいました。

 PyCon JPでも、初心者向けのセミナーのメンターをしたので、それもコミュニティ活動に入ると思います。裾野をひろげるというより、どうやったらプログラミングやPythonを始めるきっかけとして機能するかと思って始めました。

 コミュニティ活動の良い点は、人が集まって何かすることと独学することのメリット・デメリットを交互に行き来できるところだと思います。コミュニティを主催していると色々な人と話せるのも魅力です。

 大変な点は、鈴木さんの話と逆で、程よい人数で開催するにはどうしたらいいのかというところです。最近は、なるべくレベルの高い人、初心者の人、真ん中の人をバランスよく集めて、お互い交流できるような場をどうやったら作れるのか悩んでいるところです。そういう交流こそコミュニティの醍醐味だと思うので大切にしたいです。

大元:私はOSSへの貢献がほぼ100%です。大学の頃からその時々で興味あるOSSにコミットしています。例えば、Kerasのv1の頃の日本語のドキュメントは半分ほど私が書きました。最近はディープラーニングからは足を洗い(笑)、Microsoft製のLightGBMのコミッタをしています。

 業務で必要なものや、自分の興味あるOSSへの貢献がコミュニティ活動になるのかなと思います。

増田:私は2006年頃からワークショップに出たり、講演をする側の活動をしていたのですが、そのうち「PyConやれば?」という雰囲気が出てきて、今のPyCon JP代表理事の寺田さんをはじめ、数名で協力してPyCon JPを立ち上げました。

 関西では、東京ほどPythonの集まりが多くないし、持続してるところも少ないと思います。コミュニティができては自然消滅するというのが繰り返されているのですが、そのような中で集まりの場を作りましょうという企画を散発的に行なっています。

 個人的には合宿をしたいと思っています。

 一日で書ききれるソフトウェアのサイズは限られていますが、丸一日か二日くらいあると、小さなプロジェクトを作って、ドキュメントも整備して、リリースするまでできるんですよね。そういうまとまったアウトプットができる機会として合宿のスタイルがいいと思っています。

 会った人とも長い時間一緒に過ごすので濃密な話ができます。半日だと知り合っておしまいということが多いのでもったいないです。

古木:私はコミュニティ運営はやっていなくて、もっぱら参加する側です。Python mini Hack-a-thonや、もくもく会に行ってコードを書いて、最後に成果発表するといった関わり方をしています。あとはPyLadies TokyoでLTをしたり合宿に参加したりしています。

 合宿のお話はよくわかります。一日一緒にいると、深夜のテンションで色々な話ができます(笑)。PyLadiesの合宿に行ったときも、深夜に突然「本家のPyLadiesの翻訳をやろう」とオーガナイザーさんが言い出したのをきっかけにプロジェクトが始まって、今でも続いているようです。いつもと雰囲気が違うから、ノリでいろいろなことが始まったり、普段しない話ができるのが面白いです。

――勉強会は一人だと参加しづらいとか、知らない人と接するのが大変だったりするイメージがあるのですがどうでしょうか?

古木:一人で参加するということには抵抗ありませんでした。行ってみて合わなければ帰ればいいかと思っていました(笑)。行こうか迷っている時間のほうがもったいないですよ。合わなければ「ここは合わないんだ」ということが分かって、次から気をつければいいだけだと思っています。もくもく会の形式だと実際にコードを書いて、動くプログラムを見せれば、話すのが苦手でも分かってもらえるので、私にとっては敷居が低かったです。

――コミュニティ活動がきっかけで、仕事に繋がったような話はありますか?

古木:金銭が発生することはやってないですね。ただ、本のレビューなどで声をかけられることはあります。

鈴木:私も、仕事に繋がったものはないです。有志で本を書こうという話が出たくらいです。

大元:私は貢献したOSSをそのまま仕事で使っているので、その点で繋がっています。仕事で使うOSSをプライベートでも追っていたり、趣味で作ったライブラリをそのまま仕事にも使うということはあります。

 OSSへの貢献は、大変なこともあるんですが、仕事とやり方が似てると思っています。仕事なら、上司が思い描くことを確認してから提案を持っていくと思います。

OSSでも新しい機能を追加したいとなったら、あらかじめ「こういう機能を入れたい」という合意を取る必要があります。リポジトリのオーサーの中には好き嫌いが激しい人もいるので、プルリクのやりとりを観察して、その人に方向性を合わせて提案するようにしています。

 それに、OSSでのプルリクベースのやりとりのおかげで、コミットログの粒度やレビューの勘所などの能力も身についたと思います。

大元 司:株式会社ドワンゴ Dwango Media Village部で研究開発に携わる。PyCon JPへの登壇は今回が初めて。採択トークは「niconicoにおけるコンテンツレコメンドの取り組み」
大元 司株式会社ドワンゴ Dwango Media Village部で研究開発に携わる。PyCon JPへの登壇は今回が初めて。
採択トークは「niconicoにおけるコンテンツレコメンドの取り組み」

中川:私の場合は、はっきり言って繋がっています。過去に所属していたコミュニティの繋がりで転職を決めたことがあります。アウトプットを出したりディスカッションをしている際に、「中川さん向けのテックリードエンジニアのポジションがあるので入りませんか?」といった具合で誘われて、ちょうど私も転職を考えていたのでスパッと転職を決めました。

 コミュニティの中でやっていたアウトプットがブログや登壇資料になったものを見て、「登壇しませんか」とか「執筆しませんか」と声をかけられたこともあります。

 OSSに貢献した経験はないですが、PyPI(パイピーアイ:Pythonライブラリ・モジュールを登録できるアーカイブ)に公開した野球の統計用のライブラリが仕事に生きています。「この式、既視感あるな」「そういえばライブラリで作ったことがあるな」という感じで、自分で作ったライブラリをインストールして使っているということはあります。

増田:私は何年か研究員を経験した後、一般企業に就職したのですが、Django(ジャンゴ:PythonのメジャーなフルスタックWebアプリフレームワーク)の勉強会で講演したり、一緒に開催する中で、参加者の一人に「転職したいんだって? 関西にオフィス作るよ」と言われたことがきっかけでした。

 その当時関西でもワークショップをやったことがあって、そのワークショップの主催メンバーに、今私が働いているモノタロウ(株式会社MonotaRO)の社員がいました。一緒に合宿を開催するなど、交流が細く長く続いていました。その後、最初に転職した会社を辞めて、何社か渡り歩いて、関西でまた仕事したいなと思って探していた時に声がかかりました。モノタロウは、2003年頃からずっとPythonでシステムを内製している会社なのです。そういう経緯もあって、Pythonの開発経験が活かせそうでした。当時のCTOはオープンソースソフトウェアの活用に力を入れていて、採用にあたって、コミュニティの中でアウトプットのある人を欲しいと思ってもらえたこともプラスに働きました。

 今でも、これまで完全に内製していたソフトウェアの一部をOSSで置き換えていくことで、システムの安定性の担保に外の力を活用したり、新しい技術を取り入れていったりしています。その中で、中にいる人の技術が向上していったり、OSSへのフィードバックなどのアウトプットができるようになっています。興味を持った人が、コミュニティ活動で得たことを取り入れるようになるというプラスの効果も生まれています。

――みなさんはどういうきっかけで、PyCon JPなどで発表をするようになったのでしょうか?

大元:プライベートの取り組みでPyData.Tokyoに参加するぐらいで、こうしたイベントで発表したことは今までありませんでした。ドワンゴはScalaやC++, PHPのイメージが強くて、Pythonのイメージはあまりないと思うのですが、実はPythonを活用しています。例えば、レコメンド関連のエンジンを叩くWeb APIのところはTornado(トルネード:Python製のノンブロッキングなWebサーバ/フレームワーク)を使用しています。それを世に伝えたいという思いがあってプロポーザルを投げました。

鈴木:私は自分のための勉強の記録をはてなブログに投稿したのが最初です。数学ネタから始まり、『Effective Python』、『実践 Python 3』の原著である『Python in Practice』、デザインパターンにまで及びました。どちらかというと、仕事がつまらなかったので最初は負の感情ベースでした(笑)。

 PyCon JPの発表を決意したのは、単純にかっこいいからという憧れがあったからだと思います。そんなにきれいな動機ではないですね(笑)。

古木:私の場合はいろいろな人に後押しされた感じです。

 PyCon JP2017で清水川さんが発表された、『len()関数がオブジェクトの長さを手に入れる仕組み』で、「初級者から中級者に行くときは歴史を知ろう、PEPを読もう」と言っていたのが印象に残っており、実際に読んでみようとしたのですが、PEPは数が多くて初学者がいきなり目的もなしに読むのは困難なので、何か全体の構造や関係性を俯瞰するものが欲しいなと思いました。その頃たまたま行ったイベントで、「可視化法学」という、法律の条文の参照関係を可視化するプロジェクトの発表があり、これをPEPでやって全体を俯瞰できるようにしたら読むモチベーションになるかと思ってもくもく会で取り組んでみたところ、「面白い」という反応がありました。

 これを続けていくうちに色々な方から「発表したほうがいいよ」と薦められたので、今年のPyConでこのLTをやろうと思い至ったのですが、「LTではなくトークに出した方が良い」と言われまして(笑)。

 今年はLTに登壇して、来年はトークにと思っていたのですが、計画が前倒しになりました。

古木 友子:富士フイルムソフトウエア株式会社所属。趣味で始めたPythonを活かし、仕事では画像認識・データ活用関連のプロジェクトに従事。PyConへの登壇は今回が初めて。採択トークは、週末のプライベートプロジェクトを元にした「Interactive Network Visualization using Python ~ NetworkX + BokehでPEPの参照関係を可視化する」
古木 友子富士フイルムソフトウエア株式会社所属。趣味で始めたPythonを活かし、仕事では画像認識・データ活用関連のプロジェクトに従事。PyConへの登壇は今回が初めて。
採択トークは、週末のプライベートプロジェクトを元にした「Interactive Network Visualization using Python ~ NetworkX + BokehでPEPの参照関係を可視化する」

増田:最初の頃は、翻訳をやっているからか「初心者向けの講演をしてほしい」という依頼を受けたり、「今年のPythonのランゲージアップデートを話してほしい」というお誘いを受けることがあって講演していました。

 そのうち、Djangoのようなソフトウェアプロジェクトの翻訳をやるようになってからは、翻訳で調べたことを勉強会で話そうと思って、機会があればプログラムに入れてもらって話していました。初期のPyCon JPでは、企画側だけど自分でLTネタを持ち込んだこともあります。OSSを作ったときに、ドヤ顔したくて勉強会で話すこともありました。

 最近はそういう活動からは離れていたのですが、MonotaROの一員としてPythonのコミュニティに露出したいのと、会社でも PyCon JPでの発表を奨励していることもあって、今回PyCon JPにプロポーザルを出しました。MonotaROは今Python 3化に取り組んでいるので是非その話をしたいし、話をすることで、聴衆の人から「うちはこういう風にやっているよ」ってコメントを頂いたり、懇親会などで「こんな風にやったらいいと思うんだけどどうだろう」って議論ができたらいいなという思いもあります。

中川:自然にアウトプットを出すようになったというのが正直なところですね。もくもく会などの小さめのイベントや、2013年のPyCon APACのSprintでLTをしたのが最初ですね。

 その頃は「作ったもの・やったことを発表すると意見が貰えます」「その意見でまた次をやりたいと思います」というサイクルがちょうど回り始めて、その中で「もっと上手く発表できるようになりたい」というテーマがありました。5分のLTでもちゃんとKeynoteでスライドを作ったりしてました。

 そうしていくうちにPyCon JP 2014のCfPに出してみたら通ってしまいました。そのときは好きな野球のためのプロダクトをDjangoで書きましたという発表をしました。

 一回登壇したらすごく自信がついて、その後もずっとPyCon JPで発表し続けています。

 今年も野球の発表ですが、仕事にしたので野球の発表は今年が最後と周りの人にも言っています(笑)。

――データ分析をスポーツに適用する話ってまだ少ないと思うのですが、普通のプロダクトと違う野球ならではの部分はありますか?

中川:私はアナリストやサイエンティストではなくWebエンジニアなので、「今日はサイトにユーザーさんが何人きてくれた」「何を買い物してくれたか」という視点でデータで見ます。それらが想定より少ない場合には、「サイトの応答速度が遅いから上げよう」「サイト構造がわかりにくいから改善しよう」という施策を打つと思うのですが、スポーツでもそれは同様です。

 「この選手は力んだスイングをしているな」とか「投球スタイルを少し変えたら、三振を奪えるピッチャーになるかも」とか、そういったところをデータでいかに示唆するか、スポーツの場合はそういう話が多いです。


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修正履歴

  • 2018/09/03 15:48 誤字を修正しました:PyCon初登壇⇒PyCon JP初登壇

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連載:「PyCon JP 2018」レポート

著者プロフィール

  • 大堀 優(オオホリ ユウ)

    新日鉄住金ソリューションズ株式会社,技術本部,システム研究開発センター,データ分析・基盤研究部,データ分析グループ,研究員.現在は,異常検知をはじめとした機械学習及びデータマイニングの研究開発に従事

  • 二宮 健(ニノミヤ タケシ)

    株式会社LIFULL所属。普段は社内向けの広告運用自動化ツールやデータ分析基盤を作っている。最近読んで面白かった本は『数学教室 πの焼き方: 日常生活の数学的思考』」

  • 花井 宏行(ハナイ ヒロユキ)

    スタディプラス株式会社所属。PyCon JP 2018事務局スタッフ。Python未経験のままスタッフに参加。スタッフ参加がきっかけでPythonに興味を持ち、日々勉強中。

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