はじめに
「みなさんの手元に辞書はありますか?」。テクニカルライティングの正確性を担保するツールとして辞書は必須です。けれど今は、紙の辞書どころか電子辞書や辞書アプリすら手元になくたって、Webをググればすんじゃう時代。なので言い換えましょう。「みなさん、お気に入りの辞書をすぐ使えるようにしていますか?」。そして、うまく活用していますか?
今回は、日本語の辞書の使い方についてのヒントをご紹介します。
対象読者
- テクニカルな文章を書いている人/書かなきゃいけない人
- その中でも、とくにソフトウェア開発に関わっている人
テクニカルライティングの領域は広いですけど、この連載ではソフトウェア開発に関連した文書を主に想定しています。
私のお気に入りの辞書
私(筆者)は紙の辞書もいくつか持っています。ずいぶん古いものですが、国語と英和を数冊ずつ、それに漢和/古語/和英/独和/仏和など。とはいうものの、もはやどこにしまってあるものやら。もうすっかり紙の辞書は使わなくなりました。
代わって、国語や漢和などは前世紀の終わりごろから電子辞書を使っています。それらの辞書をEBWinというアプリに入れてあるので、辞書を横断していっぺんに検索できます。次の画像は、私の使っているEBWin4です。インストールしてある辞書の名前も見えます。物書きの先生に見られたら「なんだその貧相な辞書は。質/量ともに笑止!」と笑われてしまいそうなラインアップですが、文芸作品を書いてるわけじゃないってことでご容赦ください。
英和系は、それほど必要性を感じていなかったので、今世紀になってからもしばらくは紙の辞書を使っていました。それがいつ頃からでしょうか、プログラミング関係の情報収集が日本語の商業誌ベースでは追い付かなくなり、自分でテクニカルな英文を大量に読まざるをえなくなりました。紙のMSDNマガジンが休刊した2003年以降くらいからでしょうか。
その頃には、すでに英英辞典のWebサイトがいくつか公開されていました。例えば、dictionary.comは1995年にオープンしています。そして、2013年にはGoogle翻訳が日本語に対応しました。今では、英語の文章はWebの翻訳サービスに放り込んで、それでも分からない英単語はググって英和辞書のWebページを当たるようになりました。そのとき、検索結果の中からどの辞書サイトを選ぶかという意味で、やはり私なりのお気に入りがあります。
また、ChromeやFirefoxには、表示されている単語から国語辞典などを引く拡張機能もありますね。私は使っていませんが、お気に入りの拡張機能を使っている人もいるでしょう。
紙でも電子辞書でもWebサイトでもかまいませんが、お気に入りの辞書をすぐに引けるようになっていますか? テクニカルライティングに限らず、正確な文章を書くには大事なことです。
「そうは言われても。辞書を引くなんて、読むときに意味が分からないときくらいでしょ。書くときにはIMEが出してくれるし。すぐに引けなくたってそんな不自由しないよ」。そうでもないんです。文章を書くときにも、辞書は役に立つんです。ただ意味を調べるだけじゃない活用法を、2つほど紹介していきましょう。