【シーズン1】新技術を積極的に取り入れプロジェクトがスタート
社内でツアーを組み、お客さま二十数名の参加を併せて募る形で、レジなし店舗「Amazon Go」を現地シアトルで体験するツアーを行ったのが2018年5月。「都合3回の渡米で合計30回くらい、それこそアカウントがBAN(禁止・廃止)されるんじゃないか、と思うくらいさまざまなところを見ていた」といいます。
当時の状況を振り返りつつ、横田氏はAmazon Goを以下のように評しました。
「当初、仕組み周りについては『何かをやっているはず』なんだけど分からない状況でした。来店したお客さんがITエンジニアでなくても、最新テクノロジーを普通に体験できていることが一番すごいことだな、と思いました」(横田氏)
ツアーから帰国後、「これ(Amazon Go)を作ります」と横田氏は社内にて宣言。最初はドン引きされつつも、興味を持った8名のメンバーと共に、直近に予定されていた小売り関連の勉強会で発表を行う目標を定めました。こうして、「横田deGo」プロジェクト:シーズン1が2018年06月にスタートしたのです。
クラウド(AWS)やモバイルを専業にしているクラスメソッドでは「分かるところは極力、マネージドサービスを使ってパーツを組み合わせ、短時間でやろう」といった方針を重要視しています。プロジェクト開始時点で横田氏以外はAmazon Goを体験していない状況もあり、要件定義に関してはゴール(実現したい体験)を「動画」の形で作成し、イメージを共有することから始めました。その上で想定しうるユーザー体験を一連の流れとして図に起こし、必要となるであろう仕組みにタスクを分割、技術検証を行ってパーツをつなぎ合わせていく……という形で進めていきました。
ちなみに技術検証の過程で、横田氏は「いくら失敗してもいい、最悪出さなくてもいい。なので思いっきりやってくれ」とメンバーに伝えていたといいます。新しいサービス・技術を精力的に取り入れ、試行錯誤を重ねながら前進していきました。
予定していた一連の仕組みが連携できるようになったのは「お披露目会」となるイベントの前日。横田氏がシアトルで目の当たりにしたAmazon Goでの体験を披露したデモンストレーションは好評を得て、翌週の新聞(日経MJ)にも記事が掲載されました。
【シーズン2】ハード面での課題もたくさん見えてきた
「シーズン1」のメンバーからほぼ全員が交代となって始まった「シーズン2」。2カ月後の2018年10月に自社イベントがあるということで、そこでの展示をゴールとして設定しました。Amazon SageMakerやエッジコンピューティング、測距センサーなどの技術を積極的に検証してプロジェクトと連動させていく過程は前シーズン同様。「クラウドが得意な会社だったのですが、実は回路が得意なエンジニアも結構いた」という状況の中、環境をより洗練させていくことができました。
また、このシーズンで得た知見・課題について、横田氏は以下のように振り返りました。
「いろいろとデモンストレーションをするようになると、セットで持ち込んだものが『箱ごと壊れる』ケースに直面しました。ソフトウェアはコピーしても壊れませんが、ハードウェアは持ち運ぶと壊れます。また、センサーとルーターの干渉問題、ネットワークの接続性に関しても試行錯誤を繰り返しました」(横田氏)