MSPサービスでAzureのさらなる活用に期待
基幹系システムに続き、順次サーバーの移行を進め、2021年の年末年始には予定通りMicrosoft 365の移行も実施した。移行後はテストを行い、順次本番環境へ切り替えたので「ユーザーは前のデータセンターか、Azureかは分からないままスムーズに移行することができました」と佐藤氏。移行後の後片付けや一部機能の移行残があったため、独立期限を3ヵ月延長することにはなったが、サーバー環境切替は前のデータセンターからの独立期限を守ることができた。
Azureへの移行で、ハードウェアの容量制限がなくなり、容易にスペックや容量を拡張できるのは大きなメリットだ。従来の運用は、大手建材会社に頼っていた部分があり、その部分は自分たちで対処しなければならなかったが、ソフトバンクのMSPサービスに任せられたことで従来通りの体制で安定したITインフラの運用ができている。
「我々がインフラの安定性を心配することはありません。これは、Azureに最適なソフトバンクのMSPサービスであるからこそのメリットでしょう。安定性の確保に時間をとられない分は、ITを活用するアクティブな部分に集中することができます」(佐藤氏)
ジャパンホームシールドでは、外部でいくつかサブシステムも利用している。スムーズにAzureに移行できたことで、それらもAzureに集約できると考えている。「集約できればデータも一元的に管理でき、データの有効活用も可能でしょう。今後はデータから得られる価値を、新しいITインフラの強みにしていきたいです」と佐藤氏は言う。
今回は短期間に安全に移行することが第一目的であり、ソフトバンクとしてもまずはその要望に応えることを重視した。とはいえ、移行を進める中で、ジャパンホームシールドから使い勝手を良くしたいといった要望も日々受けており、適宜それにも対応している。「たとえば、サーバー間のファイル共有をしやすくしたいという要望がありました。当初予定にはなかったAzure Filesを、指定されたVMとAVDの共用ドライブ両方として使えるように仕様変更しています。これによって、定期的に生成されるファイルを手動で移動させる手間が省けたようです。導入時には要件に入っていないことでも、MSPとして運用サポートしながらチケット管理で柔軟に対処しています」と大山氏は言う。ソフトバンクのMSPサービスでは、サーバーをリフトまたは自動構築するためのツールやCI/CDパイプラインが利用できる。加えて、ランディングゾーンとして、ガバナンスやセキュリティ、ネットワーク、ID管理、監視の仕組みなどが、ベストプラクティスとして顧客環境に標準実装されるという。これらも短納期と高品質の両立を実現できた理由の一つだと振り返る。
日本マイクロソフト パートナー事業本部 コミュニケーション&グローバルサービスパートナー事業本部 ビジネスディベロップメントマネージャーの本田教之氏も「Azure Expert MSPだけでなく、Azure Networking MSPでもあるソフトバンクだからこそ、短期間での移行ができたのでしょう」と言う。Azureへの移行後もオンプレミスと同じように運用できるわけではなく、クラウドに最適化した設計、運用が必要となる。そのためのノウハウは「Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure」としてまとめられており、ユーザーもこれを使えばAzureを使いこなせるかもしれない。しかし、ユーザーだけでそれを実現するのはそう簡単ではない。
このCloud Adoption Frameworkを熟知しているのが、Azure Expert MSPだ。これを取得するにはAzureに関する技術力や専門知識のみならず、マネージドサービスの提供実績とその運用方法、今後の戦略や継続的な改善など幅広い領域において、第三者の厳しい認定を受ける必要がある。本田氏は「その認定を取得しているソフトバンクには高い信頼感がある。今後は、Azureへの移行で利用しやすくなったAIなどの新たな機能を積極的に使い、ジャパンホームシールドには攻めのITにも取り組んでほしい」と言う。
「Azureには様々な機能がありますが、その部分はまだまだ使えていません。今後はサーバーレスなどをターゲットに、よりAzureを使いこなしていければと考えています。AIやビッグデータ分析などができるプラットフォームも作っていきたいです」と佐藤氏。そのための技術者確保は簡単ではないので、今後もソフトバンクのMSPとしてのサポートには期待がかかる。
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