異例の“超短期”クラウド移行が始まる
移行期限は2022年2月末。多くの時間が残されていないことから、既存の環境にはなるべく手を入れないようにしたい。そのため物理サーバーを仮想化しクラウドへ移行する方法をとることにした。ファイルサーバーなども含め、基幹系システムを中心に移行対象サーバーは20台ほど。それに「Active Directory」など新規に構築する管理サーバーも加えた計27台のサーバー、その他ロードバランサーなどのリソースがAzure上に構築する対象となった。
また、社内業務処理で「Microsoft Access」を用いていたものがあり、これについてはクラウドにAccessの環境を丸ごと移行し、Azure Virtual Desktopを使いアクセスすることにしたという。その上でAzure上の環境にアクセスするために、ソフトバンクが提供する専用線接続サービス「ダイレクトアクセス for Microsoft Azure」を利用し、閉域網で接続しセキュリティを担保した。
「Azureやネットワークに関する技術的な質問をした際にも常に明確な回答が得られ、ソフトバンクなら安心できると考えました」と佐藤氏。このように、クラウドに接続するネットワークとAzure環境を統合した提案、構築、運用が可能な点がソフトバンクをパートナーに選定した最大の評価ポイントだったと振り返る。さらに、ソフトバンクが「Microsoft Azure Expert MSP」と「Microsoft Azure Networking MSP」の2つの認定を取得していることから、Microsoftとの深いパートナーシップや同社ビジネスに対する技術力がある、と判断したという。
今回のクラウド移行では、27台のサーバーに優先順位をつけ順次移行を実施した。既存環境をそのまま移行するので、サーバー名なども変更しない。移行期間中は、前のデータセンターとAzure環境をダイレクトコネクトで接続し、同じ名前のサーバーが両方の環境に存在することになった。サーバーは、単体で動くわけではなく、必要な周辺システムも合わせて移行する必要があった。これらのコントロールは、手間のかかるものだったと佐藤氏は振り返る。
こうしたジャパンホームシールドの要望を受け「スケジュール優先で、柔軟な対応を心掛けました」と振り返るのは、ソフトバンク クラウドエンジニアリング本部 サービスデリバリー部 サービスデリバリー2課の大山 令生綱一郎氏だ。スケジュールを守りつつ品質も担保する。そのため、仮想サーバーの構築では、アジャイル的な手法で環境のデプロイをパターン化。自動構築しながらも外部公開のセキュリティ面には注意するなど、品質とスピードのバランスをとるための工夫もしたという。
最初の6台のサーバーは基幹系システムで、移行できるタイミングは準備期間を考慮すると夏休みしかなかった。これを逃せば年末年始になるが、そのタイミングはMicrosoft 365への切り替えに充てたかった。そのため、まずは基幹系システムの移行は夏休みまでに確実に終了することが必須となる。基幹系システムはデータ量も多く、止めることも許されない。それに、事前の十分な検証も必要で、かなりタイトなスケジュールだったという。それでも、結果的にはソフトバンクのサポートもあり、基幹系の移行はスケジュール通りに完了できた。
ところで、プロジェクトにおけるジャパンホームシールドのインフラ構築体制は、佐藤氏を含めメイン担当が2人、外部サポートメンバー1人を加えたわずか3人だったそうだ。プログラムやデータの移行においては各システム担当者数名と連携しながら、少人数で短期間に移行できたのは、ソフトバンクのサポートがあってのことだった。「仮想サーバーなどは頑張れば自分たちでも構築できたかもしれませんが、移行後も運用は続きます。運用はもちろん、その後のAzureの使いこなしも含め対応してもらえるMSPのサポートは、我々のような小さな体制では極めて重要です」と佐藤氏は言う。