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キーパーソンインタビュー

半年以上の育休×2を取得したパパエンジニア、キャリアへの影響は? メリット・デメリットを含めふりかえる

育休を取るにはキャリアの自律が必要

──実際に育休を取得してみて、想像とのギャップはありましたか。また、育休経験者と話して何か気づかれたことはありますか。

 そもそもあまり先入観なく、情報もなく育休に入ったので、ギャップというのはなかったですね。ただ育休を取った理由やタイミングについて、後から気づいたことがあります。多くの人が1人目の時は取らず、2人目になって「このままでは家庭が崩壊する」というタイミングで取っていて、私のように1人目の時から「取るつもりで取った」という人は意外と少ないように思うのです。でも、結果として1人目で育休を取っておいてよかったと思うのが、2人目の大変な時に既に「家事育児に慣れている」ことです。

 実は、1人目のとき、妻は「どうせあなたなんて、休んでも何もできないでしょう」と乗り気でなかったんです。でも一緒に取得したことで育児に余裕を持って取り組むことができ、家事や育児のスキルを高めることができました。だから4年後の2人目の時は、はじめから育休取得を期待されて、スムーズに家事や育児を分担できました。

 そしてもう1つ、育休をちゃんと取れている人は、キャリアについて自律性が強いという印象があります。家庭の方で必要とされているのに関わらず、育休を取らない人の心の底には、「(家庭にかけるパワーを減らして)会社に尽くしているのだから自分を評価してほしい」という気持ちがあるのかもしれないですね。そのため、たとえば「引き継ぐ人がいない」というように組織が甘えてきても「それは組織の問題だ」と言い返せない。一方、育休を取る人は育休を取ることについても、自分の生き方やキャリアと照らし合わせて自律的に「こうしよう」と考えて決定している。

──復職後に大変だったことや工夫したことなどについてお聞かせください。

 人生で複数の「頑張ること」があるというのは、極めて大変なことだと感じました。家庭と仕事、それも子どもという自分がコントロールできないものに責任を持つという、そのバランスが難しい。子どもが生まれるまでは、仕事を頑張って残りの時間を自分のために使えばよかったけれど、今は家庭と仕事の両立で玉乗りしながらのジャグリングしているような感じです。あえてコツといえば、「やらないことを決めること」でしょうか。時間や物理的に制限が生まれたことで「やるべきこと」に集中するようになりました。「やること」と「やらないこと」をしっかり区別することは、仕事をする上での誠実さではないかと思っています。

 これまで男性は、仕事が忙しいことで家庭をおざなりにすることが社会的に許されてきたと思うんです。たとえば誰かに何か言われることを恐れて「やらなくてもいい仕事」までするのに、家庭に対しては「仕事が忙しいから」と言い訳する。でも、実は仕事はその人でなくてもできることも多いけど、家庭はその人でなくてはできないことばかり。だから、私は家庭をおざなりにする理由に仕事を使いたくないと思いました。ただ、こればかりは自分が誠実であること以外に対処ができないですからね。そのバランスは常に意識しています。

 だから逆も然りで、仕事をおざなりにする理由に家庭を使いたくないとも思いました。復職後、仕事に身が入らないことを心配されることが多いですが、私はむしろ働きたくて肩をブンブン回ししながら復帰しました。やっぱり仕事は好きなので、限られた時間であってもいい仕事をしたいですからね。手は抜きたくないし、成果も上げたい。意識的に時間を区切ることで集中力も増したように思います。

──永石さんは育休から戻られて、プロダクトマネージャーへのキャリアチェンジをされています。それはどのようなお考えがあったのですか。

 当時、今の仕事が自分のキャリアとして”真ん中”ではないという意識がありました。ただ納得できるくらい、しっかりやってから次のステップにと考えており、2〜3年働いたタイミングでキャリアチェンジを考えるようになりました。

 それで上の子どもが3歳になって少し時間がとれるようになった感覚があり、妻と「2人目が生まれるまで1年間は仕事に注力しよう」と話し合い、私はプロダクト企画の部門に手を上げて転籍し、妻も同じタイミングで転職してキャリアチェンジしています。そんなふうに家庭や仕事について状況をシェアして、話し合って力の割り振りも決めていく。それができたことで、夫婦の信頼関係が強くなったと思います。信頼関係がない状態では相手がだらけていると「サボっている」と不信感を持つけど、信頼関係があるとお互いに「疲れている? 手伝おうか?」と頼り合える。そして、家庭が安定していると精神的にも安定して余裕が生まれ、仕事にも良い影響があると感じます。

育休で得た経験は家庭にも仕事にもプラスになる

──パートナーである奥様はどのように思われていますか。育児について、妊娠・出産をする女性と、男性との差はあるのでしょうか。

 私の場合、それまで仕事ばかりをしてきていたため、一人目に育休取得をしたいと妻に伝えたとき、妻としては「本当にこの人に育児ができるか?」と半信半疑だったそうです。そんな中でも、妻は私を信頼して対等な目線で育児に向き合ってくれました。これが「どうせできないでしょ」と扱われ、諦められたとしたら辛かったと思います。

 当然ながら、妊娠・出産を担う女性の方が、育児を「スキル」として見たときのアドバンテージは大きくなります。私の場合、出産時に病院に泊まり込みができたのですが、コロナ以降はそれも難しくて、大抵の人は1週間ほど妻や子と離れて過ごすことになるでしょう。ほんの1週間の間に意識もスキルも女性の方が上になるし、男性が頼りなく見えるのは当たり前。それを「役に立たない」と断じてやらせないでいると、どんどんスキルも心にも差が生まれると思うんですよ。男性側が「妻に嫌がられて育児をするより、仕事していたほうがマシ」という状況になるのは、後々大きなマイナスになると思います。だから、多少スキルに差があっても一緒にやっていくというスタンスを見せてもらえると、男性もキャッチアップしやすいかもしれません。

──永石さんはマネージャーとしても活躍されていますが、育休を取得したことで外的・内的に何か変化はありましたか。

 マネージャーになって、育休を取ったことによるメリットをさらに強く感じるようになりましたね。たとえば、私は今現在はちょっとハードワーク気味ではあるものの、育休を取ったという事実が「仕事人間ではなく家庭も大切にしている人」としての名刺代わりになって、心理的安全性というか、「私的なことも相談できる相手」として認識されていると思います。男性はもちろん、女性も相談しやすいだろうし、少なくとも育休を取ることに文句を言われる恐れはないわけですよ。チームマネジメント的な意味合いでもメンバーとのコミュニケーションがスムーズになり、家庭に入ってコミットしたという経験はそこにも生きていると思います。

 今後、男女とも育休を取ることが当たり前になれば、「取得する人側のこと」も「取得する人が出そうなチームのマネジメント」についても、経験や知見があることが強みになると思います。そう考えると、育休がキャリアに生きるのは間違いないですね。むしろ「子どもが生まれても育休を取らないこと」の方がイレギュラーになり、経験していないこと、知らないことが判断にも影響し、デメリットになる時代になるのではないでしょうか。

──現在の仕事にもプラスになっているということですね。では、当時のご自身に送るつもりで、メッセージをお願いできますか。

 当時、今より収入が低く、育休での減収はなかなか痛手に感じましたが、その時に得た共有体験が、その後の夫婦関係の基盤になっているのは明らかです。不安に思っていたキャリアへの影響もまったくなく、むしろ仕事面ではプラスになっていると感じます。ですから、8年前の自分には「大丈夫だから、安心してしっかり育休とりなさい」と伝えたいですね。そして、私の経験が育休を取るべきかと悩む男性の背中を押し、一人でも多くの方に育児という貴重な体験を大切なパートナーと共有する決断をしてもらえたらと思っています。

──永石様の育休体験をお聞かせいただき、多くの方の参考になったと思います。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

小林 真一朗(編集部)(コバヤシシンイチロウ)

 2019年6月よりCodeZine編集部所属。カリフォルニア大学バークレー校人文科学部哲学科卒。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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