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キーパーソンインタビュー

半年以上の育休×2を取得したパパエンジニア、キャリアへの影響は? メリット・デメリットを含めふりかえる

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 株式会社リクルートでHR系メディア(新卒者向け就職メディア「リクナビ」)のプロダクトマネージャーとして活躍する永石陽祐氏。8歳と4歳の2児の父であり、それぞれの出生時には半年以上の育児休暇を取得した経験を持つ。育休取得までの葛藤および取得までの経緯、育休中から明けての家庭と仕事の両立、エンジニア&マネージャー職におけるメリット・デメリットなど、さまざまな観点からお話を伺った。

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今回
今回お話を伺った永石陽祐氏

一般的になりつつある男性の育休、キャリアへの影響をどう考える?

──まずは自己紹介をお願いします。現在のお仕事に加え、これまでのご経歴や得意とされる技術領域などもお伺いできますか。

 現在は、リクルートでHR領域のプロダクトマネージャーとして「リクナビ」などのUXの改善および新規機能開発を担当しています。また、グループマネージャーとして中長期的戦略の検討やメンバーのマネジメントなどにも携わっています。リクルートには2014年7月に中途入社し、当初は全社のICT領域でインフラエンジニアとしてツールの導入促進やシステムの保守運用に携わっていました。後にプロダクト企画部署への転籍を希望し、今に至っています。

 リクルートは2社目となり、新卒で入社したのは外資系通信機器メーカーで、ネットワークのエンジニアとして機器の導入などを行っていました。そこからインフラ系エンジニア、そしてプロダクトマネージャーというのはちょっと珍しいかもしれませんが、ずっとオンラインコミュニケーションの領域にあって興味関心を持ち続け、自分自身では連続したキャリアを歩んできたつもりです。

──育休について、実際に育休を取られる前、20代前半ではどのような認識を持っていましたか?

 当時(2012〜2014年頃)は外資系企業にいたこともあり、実際に育児休業を取得している男性の先輩社員もいたので、制度の存在は知っていました。ただ、その人は外国人でしたし、日本人男性として育休はそう普通に利用する制度ではないという印象がありました。自分事として取得を考えるようになったのは、リクルートに入社し、2015年に27歳で第一子が誕生することになってからです。育休を取得した先輩のことを尊敬していましたし、価値観や人生観にも共感があったので、いつか自分がその立場になったらぜひとも育休は取りたいと考えていました。ただ、当時の日本全体で見れば男性育休の取得者は2~3%のレベルで、周囲に取得した人がいなければ、選択肢としても知らないままだったかもしれません。

 また、自分は取得するつもりでいても、制度の利用者がまだ少なく、「キャリアを1回止めること」に対して悪影響がないか、「特殊なことをする意識高い人」と評価されて転職に不利なバイアスがかからないかなど、恐怖心のようなものはありました。

 そこで、人事に相談したところ、育休取得の経験のある男性社員が、それぞれの育休体験を語るという有志の社内イベントを紹介されたんです。みんな口々に「取ってよかった」と満足げに語り、キャリア的に「マイナスになった」と言う人は一人もいなかったんです。実際、育休後もマネージャーなど管理職になっていたり、社内の大きな賞をとっていたりと、活躍している先輩たちからの体験談を聞くことで不安感がなくなりました。

 今なら、世の中に男性育休を取る人も増えているので、自分と近い境遇の人や同じくエンジニアのブログなどを参考にするでしょうね。転職エージェントにも、育休を取得した男性のキャリアや働き方など情報が蓄積されてきていると思うので、相談したかもしれません。

引き継ぎなどの準備から育休中の時間の使い方まで、エンジニアならではの工夫も

──男性育休を取り巻く世の中の雰囲気も大きく変わってきているように感じます。その中で、エンジニアであることのメリットやデメリットについてはどのように感じられますか。

 まずエンジニアとして気になるのは、育休により長期間職場から離れることで、スキル面の遅れをとることが不安な方も多いかと思います。私自身は技術変化が早い領域ではなかったのであまり気にしていなかったのですが、30~40年働く中で、1年足らずでスキル面でのビハインドが生じることはないと思いました。たとえば、留年や浪人で社会人になるタイミングが遅れても、1年間海外留学しても、そんなに大きなビハインドにはならないですよね。むしろ人によっては得難い経験を得る可能性だってあるわけですから。

 とはいえ全く勉強しなかったわけでもなく、妻と二人で同時に育休を取ったので、なんとか自分の時間をとって、勉強時間を確保しました。どちらかというと実践派で体系的な知識を身につける方ではなかったのですが、育休中はよく本を読みましたし、仕事中ではできない勉強もできたと思います。

──育休に入る前の準備はどのくらいからされたのですか。また、引き継ぎなどはどのように行いましたか。

 準備は出産の3カ月〜半年前くらいからでしょうか。半年前くらいから上司に「取るかも?」という前ふりをしておいて、そこから人事や周囲に相談して、3カ月前くらいに「取ります」と周知しました。

 引き継ぎについては、よく「大変だ」といわれますが、実はそんなに準備していなかったんですよね。普段から自身の業務を引き継げる状態にすることを意識して仕事をしていたので、3カ月前なら十分過ぎるほどでした。また、育休の取りにくさの理由としてよく「引き継ぎ先がない」ということを聞きますが、それは「組織や経営の問題」として認識し、あえて線引きして気にしないようにしました。

 ドキュメンテーションについては、エンジニアとして再現性が必須と考え、意識して取り組んできました。日常的に実施することで周りから信頼を得やすく、いざというときでも誰かが対応できるので、育休前に限らず普段から実施して損はないと思います。むしろ誰かに業務を引き継ぐというのは、何か暗黙的にへばりついた”意味のないタスク”などを発見して引きはがせるチャンスでもあるので、マネジメント側として育休に限らずポジションや業務を回していくことは大切だと思います。

──育休中はどんな生活を送られていたのですか。

 するべきことに優先順位や主従があるわけではなく、妻と一緒に「家事も育児も全方位でがんばりました!」と言えます。想像しにくい部分で言えば、たとえば保育園を探して入園させるだけでも一大プロジェクトなんですよ。特に2015年頃は待機児童問題が表面化してきた頃で、私も「保活」のために引っ越しして、その後、家も買いました。出産・育児から始まって地続きでいろんなライフイベントが発生し、本当にやることが多かったですね。何が大変かと言うと、「自分でコントロールができないもの」がとにかく多いことです。独身時代や結婚して妻と二人の時なら、大人として割と何でもコントロールができるし調整できる。それが、子どもが生まれると、特に新生児には不確定要素が多く、それを軸に自分が動いていくしかない。自分が主体でないものの”動かし方”については、これまでとまた違った考え方、アプローチをする必要がありました。

 眼の前のことをやるだけでなく、やらなくてはならないことを一つ一つ積み上げながら、その相互依存性を考えながらどちらを優先するかを考えてやっていく。その場しのぎではなく仕組みとしての解決策を考える。そんなプロマネ的な脳の使い方はしていたと思います。保活や引っ越しなどのプロジェクトでは、スケジュール管理、タスク管理は常に妻とITツールを介して行なっていました。今なら、情報共有にはSlackを使い、スケジュール管理はスプレッドシートでやっているかもしれませんね。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

小林 真一朗(編集部)(コバヤシシンイチロウ)

 2019年6月よりCodeZine編集部所属。カリフォルニア大学バークレー校人文科学部哲学科卒。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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