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Developers Summit 2024 セッションレポート

ITエンジニア本大賞 2024、技術書部門とビジネス書部門の大賞が決定! プレゼン大会をレポート

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 ITエンジニアにおすすめしたい本を選ぶイベント「ITエンジニア本大賞 2024」(主催:翔泳社)の最終プレゼン大会が2月15日(木)に開催され、技術書部門の大賞にManaさんの『1冊ですべて身につくJavaScript入門講座』(SBクリエイティブ)、ビジネス書部門にラファエル・ヴィアナさんの『チームを動かすIT英語実践マニュアル』(アルク)が選ばれました。

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 CodeZineを運営する翔泳社が毎年2月に開催しているITエンジニア本大賞は、ITエンジニアに読んでもらいたい本を選ぶイベントです。一般投票で技術書部門とビジネス書部門のおすすめ本を募り、各部門から得票数の多い3冊ずつがプレゼン大会に出場。会場での最終投票によって大賞を決定します。

 今回も計6冊の著者と編集者がプレゼン大会に臨み、著書の狙いや内容について紹介。満席の会場での投票によって、技術書部門ではManaさんの『1冊ですべて身につくJavaScript入門講座』(SBクリエイティブ)が、ビジネス書部門ではラファエル・ヴィアナさんの『チームを動かすIT英語実践マニュアル』(アルク)が大賞に輝きました。

 本の魅力や面白さだけでなく、プレゼンによって心が動かされたという投票コメントもありました。ここではそれぞれの本のプレゼン内容を簡単に紹介します。

【技術書部門(50音順)】

【ビジネス書部門(50音順)】

ITエンジニア本大賞 2024 特設サイトへ

技術書部門:1冊ですべて身につくJavaScript入門講座(Mana、SBクリエイティブ)

1冊ですべて身につくJavaScript入門講座

 Manaさんは初心者向けにWebデザインを教えている方で、入門書やブログの執筆のほか、講座の講師もしています。生徒と接する中で、どうやらJavaScriptが非常に恐れられていることがわかってきたとのこと。本書を執筆したのは、まさにそんな恐怖を和らげ、楽しくJavaScriptを学んでほしかったからだといいます。

 そのために、本書では3つの工夫を取り入れました。1つ目は、プログラミングの目的を見失って挫折してしまうことを避けるため、学ぶための目標を小分けにしたこと。2つ目は、初心者にとってエラーは真っ赤な顔をして怒っているように見えるため、わざとエラーが出る書き方を紹介し、安心して失敗できるようにしたこと。3つ目は、難しい言葉の羅列に面して臆してしまわないように、たとえ話を多く盛り込んだこと。

Manaさん

 キーワードは「No More 挫折」。初心者でも楽しくWebサイトを作れることを目指して書かれた入門書で、要所要所に散りばめた小さな工夫に気づいてもらえると嬉しいと締めくくりました。

技術書部門:「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック(IPUSIRON /増井敏克、翔泳社)

「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック

 本書は多くの技術書を執筆し、また読んでもきた2人の著者による本です。増井さんはこれまで、自分に合う本をどうやって選べばいいのか、どうすればうまく読みこなせるのかを、読者としても著者としても考えてきたそうです。たとえば入門書にしても、読者と著者の想定する範囲が異なるので合う合わないがあり、内容は変えられないので読者側が注意して選ばなければならないといいます。

 学習方法に関しては、入門書と専門書の2段階ではもったいないので、その間を埋める本や入門書の読み比べなどを勧めています。積読の解消法も紹介されましたが、増井さんとしては「解消しない、永遠になくならないのが積読です」と結論しました。

 IPUSIRONさんからは、くじ引き読書法が紹介されました。自発的に勉強する人は専門書を読むものの、それ以外の分野を勉強するのにどうやって本を選べばいいのか難しいところ。この読書法は目をつむって本棚の前に立って、最初に触れた本を読むという読書法です。

 また、時間制限読書法は、90分ほどの時間を設定してその中で読破することを目指す読書法です。悪書を選んでしまうデメリットを最小化できるのと、良書であれば再読して理解を深めることもできます。

増井さん&IPUSIRONさん

 2人は最後に、読書法に正解はないので本書を参考に自分に合った選び方や読み方を見つけてほしいとメッセージを送りました。

技術書部門:単体テストの考え方/使い方 プロジェクトの持続可能な成長を実現するための戦略(Vladimir Khorikov、マイナビ出版)

単体テストの考え方/使い方 プロジェクトの持続可能な成長を実現するための戦略

 本書は翻訳書のため(原著はManning Publishingの『Unit Testing Principles, Practices, and Patterns』)、編集者の山口正樹さんが登壇しました。プレゼンは原著者のKhorikovさんからのビデオメッセージと、翻訳者の須田智之さんからのコメントが紹介されました。

 Khorikovさんは日本文学のファンで、ゆえに今回著書が日本で評価されたことを光栄に思っていると話しました。本書については、単体テストについての本が少なく、あったとしても初心者向けで基本的すぎたり、内容に納得できなかったりしたことが執筆の動機だったそうです。適切なテストの実践に苦労している開発者を対象に、単体テストの妨げになっているものを取り除いて次のレベルにいってほしいとエールを送ってくださいました。

山口さん

 須田さんのコメントは読み上げソフトを利用して紹介されました。須田さんは「テストは避けられないものですが、チーム内での意思疎通が重要」だと強調。自分が最適なアプローチだと思っていても、ほかの人が最適だと思っているアプローチは別かもしれません。そんなときに意思の疎通をするために、普段から読書会で意見を言い合い、お互いの考えを知ることが大切だということです。

ビジネス書部門:チームを動かすIT英語実践マニュアル(ラファエル・ヴィアナ、アルク)

チームを動かすIT英語実践マニュアル

 皆さんは外国人エンジニアと働いたことはあるでしょうか。英語でのコミュニケーションが難しいと感じたことは? そんな問いかけから始まったプレゼンで、ヴィアナさんは本書を「英語でコミュニケーションするための本」と端的に紹介しました。

 執筆のきっかけは、ヴィアナさんがあるベトナム人エンジニアと出会ったことにあります。彼の面接を担当したヴィアナさんは、彼の英語がわかりづらく、スキルは充分でもコミュニケーションに難があると感じました。ですが、面接中、彼は図やコードで積極的に意思疎通を図りました。それに感動したヴィアナさんは採用を決定。ですが、それでも仕事中に彼の英語が伝わりにくく、翻訳を頼まれることも。

 そこで、仕事に必要な英語をマニュアルにまとめることにしたのです。ベトナム人の彼はそのマニュアルで英語を勉強し、グローバルITチームを率い、クライアントに技術ソリューションを提案できるまでになりました。チームのメンバーも、ヴィアナさんのマニュアルで英語を勉強していたそうです。

ヴィアナさん

 プロジェクトに影響を与える要素は様々ですが、コミュニケーションスキルほど重要なものはありません。英語で効果的なコミュニケーションを実践するなら、ぜひ本書を活用したいところです。

ビジネス書部門:何歳からでも結果が出る 本当の勉強法(望月俊孝、すばる舎)

何歳からでも結果が出る 本当の勉強法

 望月さんは現在、勉強法や目標達成をテーマとした研修の講師をしています。本書で伝えたいことは、完璧主義をやめて完成主義になろうということです。

 勉強してそれを仕事などに活かそうとするとき、どうしても完璧主義になりがちです。完璧にできそうにないからやらない、と。しかし、これからAI時代になると、多くの人がAIに仕事を代替されてしまうという予測がある中、勉強しないでいるのはあまりにも無謀です。

 さらに、2030年に求められるスキルとして「戦略的学習力」が重要になるというリサーチもあります。何をどう学ぶかを自分で選択できる人がAI時代に活躍できるだけでなく、どんな社会状況になっても大丈夫だということです。

望月さん

 だからこそ、30%や50%でもいいから完成させる完成主義になることで、多くの失敗を経験し、そこから修正することが本当の勉強法として有効だといいます。望月さんは痛い思いをすれば1回で学習できること、だからできるだけ早く間違える体験をして改善することを本書のポイントとして強調しました。

ビジネス書部門:プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本 交渉・タスクマネジメント・計画立案から見積り・契約・要件定義・設計・テスト・保守改善まで(橋本将功、翔泳社)

プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本 交渉・タスクマネジメント・計画立案から見積り・契約・要件定義・設計・テスト・保守改善まで

 本書は橋本さんがこれまで培ってきたプロジェクトマネジメントのノウハウを1冊に詰め込んだ本です。必要なスキルの見取り図と、プロジェクトの各フェーズで必要なスキルが解説されています。

 こんな網羅的な本を執筆しようと思ったのは、橋本さんが社会人になったばかりの頃の苦境と、現代の若い人の状況があまり変わっていなかったからだといいます。当時はプロジェクトのためにオフィスで雑魚寝する時代で、何もかもを人が働くことでカバーしていました。橋本さんはそんな状態を変えようとプロジェクトマネジメントを勉強してきたそうです。

 それから四半世紀が経ち、ツールやシステムが整備されて環境がよくなってきたきにもかかわらず、様々なプロジェクトで死屍累々、倒れる人や去っていく人があとを絶ちません。助けようにもプロジェクトは全体性や文脈への依存性が高く、外から手を出しにくいのが実情。そこで、誰もが体系的にプロジェクトマネジメントの方法論を学べる本を書こうと思ったとのこと。

橋本さん

 橋本さんは、プロジェクトに関わる人に少しでも成長してほしいと語ります。成功は人に蓄積し、それが社会に波及して社会がよくなっていく。そんな思いが込められた渾身の1冊が本書です。

2024年の大賞と特別賞

 以上、6冊のプレゼンが終わり、来場者による最終投票が始まりました。その間に、2023年の技術書部門で大賞を受賞した仙塲大也さん(『良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門』)と、2020年の技術書部門で翻訳者として特別賞を受賞した吉羽龍太郎さん(『エンジニアリングマネージャーのしごと』)による特別賞が発表されました。

 仙塲さんは『1冊ですべて身につくJavaScript入門講座』を、吉羽さんは『「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック』を特別賞に選出。いずれも迷いながらなんとか決めたという特別賞となりました。

 そして、各部門の大賞が発表されました。技術書部門は『1冊ですべて身につくJavaScript入門講座』、ビジネス書部門は『チームを動かすIT英語実践マニュアル』が選ばれました。どちらの本も、内容はさることながら、魅力的なプレゼンで執筆の背景が語られたことが受賞の後押しになったのかもしれません。

 今回のプレゼン大会は、久しぶりにオフライン会場での開催となった「Developers Summit 2024」(デブサミ)内で行われました。デブサミには多くのエンジニアが来場し、たいへんな盛り上がりに。ITエンジニア本大賞への関心も高く、会場は立ち見も出る状態でした。

 エンジニアは一生学び続けなければならないとよく言われますが、それを体現したかのような場で、本にまだまだ注目が集まっていることは出版社としては胸が熱くなります。ITエンジニア本大賞 2024はいったん幕を閉じますが、ぜひ次回も楽しみにしていただければと思います。

ITエンジニア本大賞 2024 特設サイトへ

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/19069 2024/02/21 07:00

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