LLMがもたらす圧倒的なアドバンテージとは
薬局体験のオンライン化を目指すPharmaXは、YOJO事業と薬局DX事業の2つの事業を展開している。YOJOは、処方箋が不要な漢方薬を販売するECサービスだが、LINEのチャットで薬剤師に相談しながら購入できる点が特徴だ。
薬局DX事業は、医師の処方箋が必要な医薬品について、薬の調剤、配送、服薬指導まで、調剤薬局の体験をオンライン化したサービスだ。両者に共通するのは、リモート勤務の薬剤師に、オンラインでいつでも相談でき、家で薬を受け取ることができることだ。つまり、かかりつけ薬局の体験をデジタルで提供するのが、PharmaXの事業だ。
PharmaXの強みは、オンライン薬局を既存事業者と組んで提供するのではなく、自社の単独事業として運営していることだと、上野氏は言う。そのため、ソフトウェア開発に留まらず、オンラインに最適な薬局オペレーション全体を構築できる。一方、オンラインかかりつけ薬局の性質上、ユーザーが増え事業が拡大するほど、雇用する薬剤師が増え、コストが上昇してしまう恐れがある。
そこでLLMによる自動化で薬剤師の業務をサポートすれば、薬剤師を増やすことなく事業を拡大できるので、既存の薬局に対して圧倒的なアドバンテージが得られる。自社事業なので、LLMなどの最新技術を惜しみなく投入できるのも、PharmaXの強みだ。上野氏は「我々は、効率的で患者体験の良い、これまでにないオンライン薬局を作ろうとしている」と、事業への意気込みを述べた。
1つ目の事例として上野氏が紹介したのは、薬局DX事業におけるLLMの活用だ。オンライン薬局では、患者が医師の診察を受けると、共有ストレージに処方箋のPDFが格納される。薬剤師は、処方箋に基づいて医薬品を調剤する。その際、薬剤師が処方箋の内容に誤りを見つけると、医師に誤りを指摘して、処方内容を変更して貰う必要がある。この職務を疑義照会という。
疑義照会は10~20件に1回ほどの頻度で発生するが、そのうちの大半は、法律に定められた処方量とのズレなど、ケアレスミスだ。そこでPharmaXは、このような軽微なミスであれば、LLMを活用して、疑義照会の作成を一部自動化できるのではないかと考えた。