ForguncyでDXを推進する日本ゼオン、カルビーによるトークセッション
続いて日本ゼオン株式会社 デジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスマネジメントグループ細井悠貴氏、カルビー株式会社 情報システム本部情報システム部部長の稲手信吾氏を迎えて、「それぞれのDX。DXとForguncy。」をテーマにトークセッションが行われた。メシウス株式会社 Enterprise Solutions事業部 企画開発部 Forguncyプロダクトマネージャーの佐々木謙汰氏がパーソナリティを務めた。
日本ゼオンは合成ゴムや高機能樹脂の製造開発をメインに事業展開をする化学メーカー。カルビーはポテトチップスに代表されるスナック菓子やシリアル食品の製造販売を手掛ける食品メーカーである。日本ゼオン、カルビー共にForguncyを活用し、業務改善に留まらないその先を見据えた活動を行っている。
佐々木氏からの最初の質問は、「DX推進というテーマでどのようなことを行っているのか」。細井氏によると、日本ゼオンでのDX推進は2020年からだと言う。まずはデータ基盤の構築、その後にビジネスモデルの変革をしていくという方針を打ち出した。だが当時の日本ゼオンでは「基幹システムなど、一部にしかデータ活用ができるデータベースがない状況だった」と細井氏は明かす。そんな状況を打破すべく、2021年3月に細井氏が日本ゼオンに入社。初めての仕事は、研究員が使う実験データのデータベース化だったと当時を振り返る。
この背景としては、化学業界で機械学習を活用して材料開発を高速化させるマテリアルズ・インフォマティクスの取り組みが広がっていたことが挙げられる。日本ゼオンにおいてもシステムの開発に取り組むことになった。だが日本ゼオンでは、ほとんどのデータがExcelで管理されており、フォーマットは研究員ごとにバラバラだった。そのため、機械学習で必要となる教師データとして使えなかったのだ。そこで細井氏は、まずデータベースを構築することにしたと言う。
データベースの構築は比較的スムーズにいったものの、すぐに次のハードルが訪れた。データベースへの入力インタフェースが使いにくいと、使われなくなってしまうからだ。そのハードルを解消するために導入したのがForguncyである。
「2023年度だけでデータベースが50個以上できるなど、どんどんデータが産みだされる形が整った。これをビジネス変革に生かしていけるよう、DXを推進している」(細井氏)
一方のカルビーは2019年の中期経営計画の中で、DXが明文化されたことをきっかけに、組織横断の委員会が発足した。「まずは試作品を作って試食してみようということで、営業、生産、物流、購買、マーケティング、情報システムなどの部署から人財が集まり、DX推進委員会が立ち上がった」(稲手氏)
2024年4月よりS&OP(Sales & Operations Planning)推進部、DX推進部、情報システム本部の3つの部署で推進する体制を構築。S&OP推進部はトップダウンでDX推進、一方のDX推進部はボトムアップでDXを推進する。「それらのDXの基盤の構築や運用を支えているのが情報システム本部です」(稲手氏)
カルビーでのDXの取り組み事例として挙げられるのは、馬鈴薯(ばれいしょ)調達部門での圃場(ほじょう)管理DX、製造部門での設備からのデータ取得や検査の自動化など「つながる工場」の取り組み、物流部門でのAIによる定番需要予測の取り組み、マーケティング部門でのルビープログラムの取り組みなど、カルビーの原料調達から製造・販売までのプロセス全体を表す「カルビー10プロセス」の各領域での取り組みだ。さらに2023年度からは、各業務領域をまたがって全社での最適化を目指す、S&OPの取り組みが進行中であることが紹介された。
これら各業務領域における取り組みに加えて、全従業員を対象に情報システム本部が取り組んでいるのが「身近なDX」だ。内製を含むITツール活用により、定型的な作業を効率化し、従業員がDXなど新しいことに取り組む時間を創ることを目的とした取り組みである。このツールの一つとして非常に有力なのがForguncyだと稲手氏は言う。「特に製造部門でかなり活用が広まっており、これまでITにあまり触れることのなかった人を含む40人近いメンバーが、Forguncyでアプリ開発に取り組んでいる」(稲手氏)
DXを推進するには、デジタル化と現場に知見のある伴走者が必要
だが、稲手氏はこのような先進的な取り組みができているのは、まだ一部だと言う。「多くの従業員にとって、DXはまだ自分ごとと捉えられていないと認識している。Forguncyを紹介しても、その場で興味を示していただけるが、その後の現場での活用、浸透に至らない。時間を創るための取り組みである『身近なDX』に取り組む時間を創れない。そこがまだ課題」と語る。
一方の細井氏は、「当社のマイルストーンでは2025年を目処にデータ基盤の構築を進めているが、Forguncyのおかげで達成に近づくことができていると感じる。現場の人がForguncyの魅力に気づき、その後も自主的に活用できる環境が、教育の整備、メシウスとパートナーのサポートなどによりできつつある。今後その方法論を広げて、ビジネスの変革までいければ理想的だと思う」と語る。
この細井氏の発言に佐々木氏が、「日本ゼオンでは、Forguncyの活用に最初から現場の人たちは協力的だったのか」と問いかけると、細井氏は「当社の場合も、本業が忙しくForguncyに触れる時間がないというコメントを多数頂戴した」と返答。
では、どうやって現場を変えたのかを尋ねると「私が現場に伴走する形で、一緒にアプリを作っていった。予定を一緒に取っていくことでForguncyに触れてもらえる時間を意識的に増やした」と細井氏。その後、社内にForguncyを活用するためのタスクチームが発足し、そこが中心になることで安定して進められるようになったという。
「伴走することが大事」という細井氏の発言に、「伴走は非常に効果がある」と稲手氏もあいづちを打つ。カルビーでは製造部門でボトムアップのDXが進んでいるが、それを可能にしたのはDX推進部にいる工場出身のメンバーである。稲手氏は、同社でForguncyの取り組みが製造部門で広がっているのは、彼らが国内の各工場に赴き、工場のメンバーの横について伴走したからだという。
「伴走してうまくいくためには、現場の『DXを進めたい』というモチベーションの高さも必要だろう」という佐々木氏の問いに対し、細井氏は「ケースバイケースだが、多くの場合はそれに当てはまると思う。例えば当社の場合、マテリアルズ・インフォマティクスに取り組みたいという現場の意識は高かったが、障壁になったのは現場がDBやアプリ開発の知識に乏しかったこと。それをクリアできた一つの要因が、Forguncyだった」と振り返る。
稲手氏も「DXの推進は社員も会社が求めていることだと理解はしているし、特に工場は人手不足という深刻な課題もあったので、電子化や自動化を進めようというモチベーションが高かったのだと思う。また、当社は国内に12工場あるが、ある工場で先行して取り組んだ事例が共有されると、うちでも導入したい、と全国の工場に広まった」と答えた。
佐々木氏からの質問は終わり、細井氏から稲手氏に「Forguncyを選定した理由」について質問が投げかけられた。それに対し稲手氏は、「Excel業務をシステム化するための機能に優れていたため」と回答。また稲手氏からは「現場の人たちがForguncyをうまく活用できるようになるための教育方法について教えてほしい」という問いかけがあった。
それに対し細井氏は、「まず、業務の見直しをすることを促す。そこから伴走し、一緒に業務に合うテーブル構造を設計し、それができればDBを構築し、DBができればForguncyという風に伴走者が段階を踏んで教えていく。こうしたやり方を通して伴走できる人を増やすことで、現場でのDX推進が軌道に乗ると思う」と答えた。