10周年を記念し、開催されたForguncy meetup
メシウス(旧社名はグレープシティ。2023年11月に社名変更)は1980年5月に設立された、仙台市の郊外に拠点を置くソフトウェア開発企業である。同社はアプリケーション開発支援ツールやITシステムの活用促進ソリューション(エンタープライズソリューション)、学校法人向け業務システム、社会福祉施設向けの業務支援システムのほか、映像ディレクション、デザイン、ブランディングなどの広報活動のトータルプランニング事業も手掛けている。
今回、5年ぶりとなるForguncy meetupのキーノートを務めたのは、メシウス株式会社 Enterprise Solutions事業部 事業部長の市川利弥氏。メシウスは創業以来35年にわたって、ソフトウェア開発支援ツールを提供してきた。その累計出荷本数は120万以上。そうした実績の中から生まれたのが、エンタープライズソリューション「Forguncy」だという。
Forguncyは、「Excelの業務にまつわる課題を、Excelの使い勝手そのままにWebアプリ化して解決する」をコンセプトに2014年に開発された。だが、Forguncyを導入するお客さまが増えていくと、「Excelの業務を超えて活用されるシーンも増えてきた」と市川氏は語る。
Forguncy 4からは、ノーコードで本格的な業務システムを構築するというコンセプトにもとづいて、外部データベースの活用拡大、サーバーサイドコマンドやレポートデザイナーの機能追加、コマンドでの連携機能の強化などが図られた。「現在のForguncyは基幹システムや既存の業務システムを補完する役割を果たすようになっています」(市川氏)
Forguncyでは、1.使いやすいアプリ開発機能、2.他システムとのデータ連携の強化、3.活用範囲を広げられる製品基盤、4.アプリ開発時や運用時の管理機能の強化、というテーマを掲げて機能拡張を図ってきた。
今年10月リリースの新バージョン「Forguncy 10」は、「仕事と情報、人と人とがつながる」をコンセプトに、より作りやすく、より管理しやすいを目指しバージョンアップ。「特に我々が重視しているのが、共創開発という概念」と市川氏は力強く語る。ITの専門知識を持つ担当者と、現場の専門知識を持つ担当者の両者がそれぞれの強みを生かしながら、協力し合い、実用的で使いやすい業務システムの開発をしていくという考え方である。
「Forguncy 10」では、共創開発を促進できる機能やシステム管理機能の強化が図られている。最後に市川氏は「皆さまからいただいたご意見、アイデアを今後のForguncyの発展、サービス品質向上に生かし、お客さまのビジネスの成功に貢献していきたい」と語り、キーノートを締めた。
ForguncyでDXを推進する日本ゼオン、カルビーによるトークセッション
続いて日本ゼオン株式会社 デジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスマネジメントグループ細井悠貴氏、カルビー株式会社 情報システム本部情報システム部部長の稲手信吾氏を迎えて、「それぞれのDX。DXとForguncy。」をテーマにトークセッションが行われた。メシウス株式会社 Enterprise Solutions事業部 企画開発部 Forguncyプロダクトマネージャーの佐々木謙汰氏がパーソナリティを務めた。
日本ゼオンは合成ゴムや高機能樹脂の製造開発をメインに事業展開をする化学メーカー。カルビーはポテトチップスに代表されるスナック菓子やシリアル食品の製造販売を手掛ける食品メーカーである。日本ゼオン、カルビー共にForguncyを活用し、業務改善に留まらないその先を見据えた活動を行っている。
佐々木氏からの最初の質問は、「DX推進というテーマでどのようなことを行っているのか」。細井氏によると、日本ゼオンでのDX推進は2020年からだと言う。まずはデータ基盤の構築、その後にビジネスモデルの変革をしていくという方針を打ち出した。だが当時の日本ゼオンでは「基幹システムなど、一部にしかデータ活用ができるデータベースがない状況だった」と細井氏は明かす。そんな状況を打破すべく、2021年3月に細井氏が日本ゼオンに入社。初めての仕事は、研究員が使う実験データのデータベース化だったと当時を振り返る。
この背景としては、化学業界で機械学習を活用して材料開発を高速化させるマテリアルズ・インフォマティクスの取り組みが広がっていたことが挙げられる。日本ゼオンにおいてもシステムの開発に取り組むことになった。だが日本ゼオンでは、ほとんどのデータがExcelで管理されており、フォーマットは研究員ごとにバラバラだった。そのため、機械学習で必要となる教師データとして使えなかったのだ。そこで細井氏は、まずデータベースを構築することにしたと言う。
データベースの構築は比較的スムーズにいったものの、すぐに次のハードルが訪れた。データベースへの入力インタフェースが使いにくいと、使われなくなってしまうからだ。そのハードルを解消するために導入したのがForguncyである。
「2023年度だけでデータベースが50個以上できるなど、どんどんデータが産みだされる形が整った。これをビジネス変革に生かしていけるよう、DXを推進している」(細井氏)
一方のカルビーは2019年の中期経営計画の中で、DXが明文化されたことをきっかけに、組織横断の委員会が発足した。「まずは試作品を作って試食してみようということで、営業、生産、物流、購買、マーケティング、情報システムなどの部署から人財が集まり、DX推進委員会が立ち上がった」(稲手氏)
2024年4月よりS&OP(Sales & Operations Planning)推進部、DX推進部、情報システム本部の3つの部署で推進する体制を構築。S&OP推進部はトップダウンでDX推進、一方のDX推進部はボトムアップでDXを推進する。「それらのDXの基盤の構築や運用を支えているのが情報システム本部です」(稲手氏)
カルビーでのDXの取り組み事例として挙げられるのは、馬鈴薯(ばれいしょ)調達部門での圃場(ほじょう)管理DX、製造部門での設備からのデータ取得や検査の自動化など「つながる工場」の取り組み、物流部門でのAIによる定番需要予測の取り組み、マーケティング部門でのルビープログラムの取り組みなど、カルビーの原料調達から製造・販売までのプロセス全体を表す「カルビー10プロセス」の各領域での取り組みだ。さらに2023年度からは、各業務領域をまたがって全社での最適化を目指す、S&OPの取り組みが進行中であることが紹介された。
これら各業務領域における取り組みに加えて、全従業員を対象に情報システム本部が取り組んでいるのが「身近なDX」だ。内製を含むITツール活用により、定型的な作業を効率化し、従業員がDXなど新しいことに取り組む時間を創ることを目的とした取り組みである。このツールの一つとして非常に有力なのがForguncyだと稲手氏は言う。「特に製造部門でかなり活用が広まっており、これまでITにあまり触れることのなかった人を含む40人近いメンバーが、Forguncyでアプリ開発に取り組んでいる」(稲手氏)
DXを推進するには、デジタル化と現場に知見のある伴走者が必要
だが、稲手氏はこのような先進的な取り組みができているのは、まだ一部だと言う。「多くの従業員にとって、DXはまだ自分ごとと捉えられていないと認識している。Forguncyを紹介しても、その場で興味を示していただけるが、その後の現場での活用、浸透に至らない。時間を創るための取り組みである『身近なDX』に取り組む時間を創れない。そこがまだ課題」と語る。
一方の細井氏は、「当社のマイルストーンでは2025年を目処にデータ基盤の構築を進めているが、Forguncyのおかげで達成に近づくことができていると感じる。現場の人がForguncyの魅力に気づき、その後も自主的に活用できる環境が、教育の整備、メシウスとパートナーのサポートなどによりできつつある。今後その方法論を広げて、ビジネスの変革までいければ理想的だと思う」と語る。
この細井氏の発言に佐々木氏が、「日本ゼオンでは、Forguncyの活用に最初から現場の人たちは協力的だったのか」と問いかけると、細井氏は「当社の場合も、本業が忙しくForguncyに触れる時間がないというコメントを多数頂戴した」と返答。
では、どうやって現場を変えたのかを尋ねると「私が現場に伴走する形で、一緒にアプリを作っていった。予定を一緒に取っていくことでForguncyに触れてもらえる時間を意識的に増やした」と細井氏。その後、社内にForguncyを活用するためのタスクチームが発足し、そこが中心になることで安定して進められるようになったという。
「伴走することが大事」という細井氏の発言に、「伴走は非常に効果がある」と稲手氏もあいづちを打つ。カルビーでは製造部門でボトムアップのDXが進んでいるが、それを可能にしたのはDX推進部にいる工場出身のメンバーである。稲手氏は、同社でForguncyの取り組みが製造部門で広がっているのは、彼らが国内の各工場に赴き、工場のメンバーの横について伴走したからだという。
「伴走してうまくいくためには、現場の『DXを進めたい』というモチベーションの高さも必要だろう」という佐々木氏の問いに対し、細井氏は「ケースバイケースだが、多くの場合はそれに当てはまると思う。例えば当社の場合、マテリアルズ・インフォマティクスに取り組みたいという現場の意識は高かったが、障壁になったのは現場がDBやアプリ開発の知識に乏しかったこと。それをクリアできた一つの要因が、Forguncyだった」と振り返る。
稲手氏も「DXの推進は社員も会社が求めていることだと理解はしているし、特に工場は人手不足という深刻な課題もあったので、電子化や自動化を進めようというモチベーションが高かったのだと思う。また、当社は国内に12工場あるが、ある工場で先行して取り組んだ事例が共有されると、うちでも導入したい、と全国の工場に広まった」と答えた。
佐々木氏からの質問は終わり、細井氏から稲手氏に「Forguncyを選定した理由」について質問が投げかけられた。それに対し稲手氏は、「Excel業務をシステム化するための機能に優れていたため」と回答。また稲手氏からは「現場の人たちがForguncyをうまく活用できるようになるための教育方法について教えてほしい」という問いかけがあった。
それに対し細井氏は、「まず、業務の見直しをすることを促す。そこから伴走し、一緒に業務に合うテーブル構造を設計し、それができればDBを構築し、DBができればForguncyという風に伴走者が段階を踏んで教えていく。こうしたやり方を通して伴走できる人を増やすことで、現場でのDX推進が軌道に乗ると思う」と答えた。
日亜化学工業によるForguncy活用事例紹介
後半のセッションでは、日亜化学工業株式会社 システム開発本部 第一部第二課の遠藤純氏が登壇し、「Forguncyの活動事例と導入によるチーム力アップの奇跡、そして未来のビジョン」というタイトルでセッションを行った。
日亜化学工業は徳島県阿南市に本社を構える、LEDやレーザーダイオードなどの光半導体事業、正極材料、磁性材料などの化学品事業を展開する化学メーカーである。遠藤氏は所属するシステム開発本部第一部第二課で、ローコードシステムでの開発と製品番号体系の運用・管理を担当しているチームのリーダーを務めており、その業務中でForguncyを活用している。
まず遠藤氏がForguncyを活用した事例として紹介したのが、「Plin(Product model number Information-Link:プリン)」というシステムの構築。Plinは基幹システム、部門ごとに構築されたシステム、部分最適されたシステムにより分断されている製品関連情報を、1つのWebアプリケーションで参照できるようにしたシステムである。
「同システムを導入する前は、情報取得に複数のシステムを参照するほか、マクロを使用する必要があり、非常に手間がかかっていた」(遠藤氏)
そのほかにも、当時チームにはシステム開発を行えるのが遠藤氏しかおらず、運用が難しかったことや、マスタ管理業務についても優先度が低く、システム開発ができないという実情があった。
この課題を解決するために遠藤氏が採用したのが、ローコード開発ツールの導入だった。「将来的に開発者を増やしていくこと、自分たちのチームでも開発を推進できるようにしていくことを視野に置き、ツールの選定をした」(遠藤氏)
さまざまなツールを検討し、選択したのがForguncyである。既存DBが使用可能であり、環境構築が容易であることが決め手だった。
PlinはForguncyを活用した第1号のシステムとしてリリース。Plinが導入されたことで、大幅に使用性が改善された。1つのアプリで製品関連情報の参照が可能になり、現場では高い評価を得ている。開発者目線においても、Ver.1.0.0は約40時間と非常に短い工数でリリースできたという。表示項目追加は即日対応できるなど、保守性の良いアプリを開発できた。現在、Plinを中心とする製品ライフサイクルマネジメントのシステムについても、Forguncyでリプレースを進めているそうだ。
もう一つの活用事例は、職域接種サポートアプリ。「1回目の接種は本当に時間がなかった」と遠藤氏は振り返るように、金曜日に打ち合わせをして、2営業日後の翌火曜日にはプロトタイプを提供するというスケジュール。だがそれも「Forguncyのおかげで火曜日の午後には提出できた」と遠藤氏は言う。
1回目の接種サポートアプリは、接種者リスト、予診票改修記録、接種券張り付け記録ができるというもの。2回目以降の接種に関しても、時間があまりとれなかったので、機能をある程度絞り早期にα版を立ち上げて、運用を開始したという。2回目3回目の接種サポートアプリでは、受け付け、接種完了記録、未受付リスト、接種状況照会、接種管理というように、何人が接種して何人が完了したかという状態の見える化を行った。
職域接種サポートアプリの導入の最大の効果は、トータルで2万7167回分の職域接種という未経験の作業を無事完了できたこと。そのほかにも、バーコードスキャンのみの入力に統一したので、ヒューマンエラーを最小に抑えて受付時間を大幅に削減できた。「感染拡大予防にも貢献できたことで、プロジェクトチームからはお褒めの言葉をいただいた」(遠藤氏)
開発者1人から16人のチームへと成長、スキル格差課題に取り組む
このようにすでに複数のForguncyの活用事例が登場している日亜化学工業。2018年にForguncy 4を導入した際には、遠藤氏一人しかForguncyの開発者はいなかったが、2019年には2人、2020年から2022年にかけて教育カリキュラムを整備したことで8人まで増加した。現在はForguncyドリルを活用し、16人まで増えている。
遠藤氏が率いるマスタ管理チームの業務も、Forguncyによって「かなり変わった」という。これまでは依頼者からデータ抽出やツールの作成をお願いされても、他の業務もあるのでなかなか進まなかった。そこで他のメンバーにもForguncyの学習を促したところ、最初はSQLやシステム開発の知識がないから不安だと思っていたメンバーも、他のチームでプログラム経験の無い人たちがForguncyを使っている話を耳にする中で、不安よりも期待が大きくなり、学習に取り組むようになった。
学習後の今は、「Excelのような感覚で開発できるから、想像よりも修得しやすかった」「SQLを覚えるきっかけになってよかった」「新しいコマンドを覚えるたびに、やりがいを感じる」など、ポジティブな意見が増えている。現在はステップアップし、性能を上げるためにはどうすればよいかなど、「エンジニアチームに成長したと実感している」と遠藤氏は話す。
とはいえ、課題もある。まずは、スキル格差があること。中規模のシステム開発ができる、高度な技術を習得・使用したアプリ開発ができるメンバーがいる一方で、約半数のメンバーは登録画面が作れるところで止まっている状態だからだ。そこで遠藤氏はスキル格差を埋めるべく、スキルレスで使えるサーバコマンドやサンプルアプリ、ノウハウを共有するためのナレッジサイトの構築、標準テンプレート開発標準化などのアイテムを用意していく予定だ。これらを使って「開発者の効率的な技術の向上、適用業務範囲の拡大を図っていきたい」と意気込みを語り、セッションを締めた。
開発者が教える、「Forguncy 10」の魅力──5つの"推し機能"を紹介
最後に登壇したのは、メシウス株式会社 Enterprise Solutions事業部 製品企画部 プロダクトエンジニアの大島治彦氏。「Forguncy 開発担当が推す V10で注目すべき新機能5選とForguncyのこれから」というタイトルでセッションを行った。
大島氏とForguncyの関わりは非常に長く、Forguncyがコードネームで呼ばれていたときからだという。本セッションでは、2024年10月30日に発売されるForguncyの新バージョン「Forguncy 10」について、大島氏が推す5つの機能が紹介された。
第1の推し機能は、リストビューの状態保存機能。以前よりリストビューをカスタマイズすることはできたが、そのビューの状態を保存することはできなかった。「今回のバージョンではリストビュー設定のその他の動作タブの中に『別の状態を保存する』というオプションが追加された。それをチェックオンにするだけで自分専用のビューを保存することができる」と大島氏は話す。
第2の推し機能は、ログインユーザー型セルのカスタマイズ機能。これまではゲストユーザーなど1つのIDを複数人で使う場合、誰か一人がパスワードを変更してしまうと、他のユーザーがログインできなくなるという問題があった。このような問題を解決するのが、ログインユーザー型セルのカスタマイズ機能である。
第3の推し機能は、PDFのプレビュー機能。「これまではブラウザのダウンロード機能によって、添付ファイルをダウンロードできるようになっていた。それでは不必要にファイルが複製されてしまい、データ管理上不適切とも言える。そこでForguncy 10ではブラウザではPDFのプレビューのみとした。各端末にファイルをダウンロードされることもない」(大島氏)
第4の推し機能は、CSV出力で引用符を指定列に設定できるという機能。これまでもCSV出力する際は、全カラムに対してダブルコーテーション(”)を設定するか否かという2択しかなかった。だが「Forguncy 10」では、引用符で囲むフィールドを個別に指定するというオプションが追加された。必要なカラムに対して引用符を設定することができるようになっている。
第5の推し機能は、多言語化と言語切り替えの機能。多言語化を有効にする設定が追加されており、例えば日本語と英語という多言語化する場合は、多言語化をチェックオンにし、リソースキーに対して、日本語と英語のテキストを設定することで実現する。「Forguncyがすでに持っている辞書だけではなく、お客さま自身でも辞書を作ることができる」(大島氏)
言語切り替えも簡単で、表示言語を切り替えるコマンドが追加されており、それを設定するだけ。
「今回は5つの機能を紹介したが、Forguncy 10にはそのほかにもたくさんの機能が搭載されている。これからもForguncyは安定したシステム運用、組織体制での開発の実現を目指し、進化していきたい」(大島氏)
このようにユーザーにとって非常に有意義な時間となった今回のForguncy meetup。DXや業務改善への足がかりとしてExcel業務で課題を抱えているのであれば、ぜひForguncyを検討してみてはどうか。
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