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プラットフォームづくりを成功に導く!開発者のための「Platform Engineering」入門

チーム全員の生産性を上げる! メルカリ deeeetさんに聞く、Platform Engineeringの醍醐味

第8回 メルカリ中島大一さんインタビュー(後編)

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 これまで本連載ではPlatform Engineeringについてさまざまな観点から解説してきました。前半では理論編として、既に提唱されているソフトウェア開発の重要な考え方(SREやTeam Topologiesなど)との関係を整理していくアプローチを中心に理解を深め、後半には実践編としてInternal Developer Portalのハンズオンや、プラットフォームをプロダクトとして構想し成長させる進め方について解説してきました。今回は、前回に引き続きPlatform Engineeringを初期から実践する株式会社メルカリ 中島大一(@deeeet)さんへのインタビューを通じて、Platform Engineeringに関わる醍醐味や、プラットフォームの転換点といった話をお届けしたいと思います。

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メルカリ 中島大一さんインタビュー 前編はこちら

「Platform Engineering Kaigi 2024」における講演レポートはこちら

インタビュー参加者

  • メルカリ:中島大一(インタビュイー)
  • Platform Engineering Meetup:四七秀貴(インタビュアー)・草間一人(インタビュアー、オブザーバ)
  • CodeZine:近藤佑子(オブザーバ)
メルカリ 中島大一氏(左上)、Platform Engineering Meetup 四七秀貴(右上)、Platform Engineering Meetup 草間一人(左下)、CodeZine編集部 近藤佑子(右下)
メルカリ 中島大一氏(左上)、Platform Engineering Meetup 四七秀貴(右上)、Platform Engineering Meetup 草間一人(左下)、CodeZine編集部 近藤佑子(右下)

メルカリにおける「Platform as a Product」の体現

──メルカリは、まさに プロダクトとしても組織としてもPlatform Engineeringを実践している状況にあると思います。今回の連載の中でプラットフォームをプロダクトとして捉える「Platform as a Product」の概念について紹介しました。Platform as a Productにはいくつかのフェーズがあるのですが、メルカリは今どのフェーズにいるのでしょうか?

Platform as a Productの5つのフェーズ(出典:プラットフォームをプロダクトとしてどう構想し、成長させていけばよいか? 「Platform as a Product」5つのフェーズ)
Platform as a Productの5つのフェーズ(出典:プラットフォームづくりを成功に導く!開発者のための「Platform Engineering」入門 第6回

中島:プラットフォームを全体で見た時と局所的に見た時で結構違うなと思いました。まず、全体で見ると「成熟期」のように思います。その理由は、もうグループとしては一つのプラットフォームになっていて、他に新しく作る必要がないように、なるべくそのプラットフォームで吸収できるようにマイグレーションしてきています。新規サービスの立ち上げの時もなるべくそのプラットフォームを使ってもらえるような状況になっています。一方で局所的にさまざまなツールを見ると、まだ「仮説期」だったり、「検証期」と「拡大期」の間ぐらいだったりするような感覚があります。

──プラットフォームを進化させるには、全体としては大きく成熟しながらも、個々のツールとしてはスパイラルのようにさまざまなフェーズを行き来していくのかもしれません。また、今後どこかの段階でアーキテクチャに大きなインパクトをもたらす要因が出てきて、プラットフォームごと壊さなければならないケースが出てくるかもしれませんね。

中島:そうですね。そうしなければならないと思います。僕らが7年前にPlatform Engineeringを始めた時にはマイクロサービスが当時のベストプラクティスだったので、それに合わせて基盤を作りましたが、今となったら、「本当にマイクロサービスって正解なのか?」という議論はあると思います。また、LLMが登場したこともあり、開発のプロセスや考え方は今後大きく変わると思います。常に新しいものをキャッチアップして取り組んでいくことをやり続けないと、使われない基盤になってしまい、別のプラットフォームがゼロから作られてそちらにマイグレーションしなければならない状況が起こると思います。そう考えると、すでにある基盤の中で進化を続けるのがすごく大事だなと思います。

──成熟期にある状況でもさらなる進化に向けてチャレンジする姿は、日本のプラットフォームエンジニアにとってとても勇気づけられることと思います。ちなみにこの7年間を振り返って、何が一番大変だったでしょうか。

中島:この質問はどう答えようかすごく難しいですね(笑)。正直に言うと、プラットフォームの立ち上げは楽しかったです。いろんな締め切りや開発に追われながらも仲間たちと今度どのようなプラットフォームを作っていくべきかってのを日々議論できていて大変という気持ちはなかったですね。おそらくこれから始める人も、立ち上げは大変なことも多いと思いますが楽しさも多いと思います。

 一方で、自分が大変だと感じたのはプラットフォームが大きくなった後ですね。すでに動いているので、いろいろなところからどんどん要望が来るし、かつ動いているプラットフォームもどんどん壊れていくからそれを直さないといけない。セキュリティ的な問題も出てくる。しかし、プラットフォームとしては新しいプラクティスに合わせて基盤をアップデートしていきたい。自分たちとしてもやりたいことがある。それを全部バランス取って、優先度を決めて一つひとつ進めなければならないフェーズはとても大変です。これにはフレームワークや正解はなくて、今でもトライアル&エラーをしながら進めています。

──中島さんの講演の中で「プラットフォームのためのプラットフォーム」というお話があり、フラクタル的な発想が凄く興味深かったのですが、まさに今みたいな拡大期だからこそ出てきた課題や発想なのでしょうか?

中島:はい、拡大期だからこそ出てきたものだと思います。プラットフォームチームがさらに大きくなり、チームの中でもその認知負荷の問題を分割して、それぞれが独立して動けるようにと考えた時に、プラットフォームのためのプラットフォームを作ってチームの編成を変えようとしました。それはまさにプラットフォームの組織が大きくなったからこそ出てきた課題で、チームを分けた後も、チームごとにどう方向性を示していくのかも難しい大変な問題だったと思います。

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パーティーみんなを強くする魔法? Platform Engineeringの面白さとは

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この記事の著者

四七 秀貴(シナ ヒデキ)

 株式会社JPデジタルに所属。NTT研究所での通信基盤ソフトウェアのR&Dや事業会社DX推進部門での業務システム開発経験を経て、現在、日本郵政グループのDX推進に従事。仕事以外ではこれまでの基盤開発や社内技術コミュニティ運営の経験からPlatform Enginnering Meetupの運...

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